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スポーツ  投稿日:2015/5/6

[Football EDGE 編集部]【第4節】香港在住ビジネスマンが始める、サッカー事業の軌跡(アーカイブ)


Football EDGE 編集部

(文・写真 池田宣雄)

 執筆記事

近年、アジアでサッカービジネスに関わる日本人が増えてきた。香港在住15年を数える、池田宣雄氏もそのひとりだ。32歳のときに香港で起業し、コーポレートコンサルタントを営むかたわら、サッカーに関する様々な業務のコーディネーターとしても活動している。金融の街としても知られる香港より、スポーツ×ビジネスの観点から綴るエッセイをお届けする。

◆香港リーグはアジアでは珍しい秋春制を採用

香港のプロサッカーリーグは、アジア諸国の中ではマイノリティに属する「秋春制」でシーズンが開催されている。旧英国領時代の20世紀初頭に、現在の香港サッカー協会が創立されて以降、宗主国であり且つサッカーの母国でもある英国のシーズンをそのままに、現在でも毅然と開催日程を守り続けている。

1993年に日本でJリーグが始まり、日本を含めたアジア諸国では、アジアの文化的な暦でもある「春秋制」シーズンが軒並み採用された。日本を皮切りに、韓国や中国そして東南アジア諸国の新しいプロリーグでも「春秋制」が採用される様になって行ったのだ。

また、アジアサッカー連盟主催の国際大会(アジアチャンピオンズリーグやAFCカップなど)も、加盟各国のシーズンに準じた形となり、春に始まり秋に決勝を迎える日程で開催されるようになった。

故に、香港リーグの開催シーズンは、本来であれば本場欧州各国と同様の日程であるにも関わらず、アジアの周辺諸国でのシーズンとは異なる時期の開催となった為、周辺諸国との様々な交流が、とても盛んだとは言えない状況が続いている。

もちろん、香港サッカー協会内部でも、アジアでは多勢に無勢な開催シーズンを、このまま維持するべきなのか? アジア諸国のシーズンに変更するべきなのか? の議論は重ねてきているはずだが、現在までに「秋春制」から「春秋制」への移行には至っていない。(編集部注:原稿執筆時、2012年時点)

◆英国の影響を色濃く受ける香港プロリーグ

20世紀初頭の香港サッカー協会の創立には、宗主国であった英国の4つのサッカー協会と、既に香港に駐留していた英国の組織・企業・団体や個人からの多大な協力があったらしい。そして現在でも香港サッカー協会の運営には、創立当時からの英国の影響力が色濃く残っているのだ。

何を言わんとしているか? お気づきの方もいると思うが、香港サッカー協会は、アジアのスタンダードや風潮に擦り寄る様な真似は、極力しない姿勢を堅持している。香港リーグは「秋春制」を継続して、旧宗主国や欧州各国との交流の芽を摘みたくないのだ。

先日報道があった様に、日本サッカー協会とJリーグでも、現行の「春秋制」から「秋春制」への移行について、あらためて審議が再開される事になっている。これには様々な理由があるのだが「秋春制」への移行は無条件に成されるべき事であり、いくつかの反対意見があったとしても、日本サッカーの更なる発展の為には、避けて通る事ではない。

日本のJリーグが「秋春制」を導入すれば、韓国や中国のリーグも間違いなく追随するだろう。そしてアジア連盟各国にも連鎖するであろうし、連盟主催の国際大会の開催日程も改まる日を迎えるに違いない。

香港サッカー協会の上層部の面々は、おそらくそう遠くない将来の、アジア諸国における「秋春制」化を予想しているのであろう。ここ20余年に渡って彼らは沈黙を守っているが、どちらの開催シーズンがサッカー界のスタンダードなのか? 敢えて何もせず、「秋春制」化のその日を首を長くして待っていると思われる。

筆者自身も、アジア諸国全体の「秋春制」化を待ち望んでいる。現在の香港リーグの開催シーズンが、いずれはアジアのマイノリティではなくなる日が来ると思う。

提供元:<Football EDGE>10849790_1522512774673452_699522702208334408_n


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