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スポーツ,ビジネス  投稿日:2015/6/24

[Football EDGE 編集部]【「サッカーは手堅く売れるジャンル。やり方はある」】~東邦出版一書籍編集長・中林良輔氏・インタビュー・後半~


Football EDGE 編集部

インタビュー:ー書籍編集長・中林良輔(東邦出版)

 執筆記事

『サッカー本といえば東邦出版』というイメージを定着させたのが、同社の書籍編集部、編集長の中林良輔氏。自身もサッカー少年で、いまでもボールを蹴るサッカー人でもある。サッカー本についてのインタビュ-後編では、サッカー本の編集者になる方法など、出版業界をめざす人へのアドバイスを中心に語ってもらった。(聞き手・鈴木智之/FootballEDGE編集長)
 

 

鈴木:4月に出版された「ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう」(東邦出版/マルティ・パラルナウ著/羽中田昌、羽中田まゆみ訳)ですが、売上が好調とのことで。

中林:ありがとうございます。

鈴木:この本はスペイン人のジャーナリストが、1年間バイエルン・ミュンヘンに密着して書き上げたルポルタージュですよね。現状、サッカー本業界において、ひとりの書き手が長期間密着して取材をし、それを本にまとめるという形式は成り立つと思いますか?

中林:おそらく、1年間の密着をお願いして、その経費を出版社が全部出すというのは、なかなか難しいですよね。ライターさんのフィールドワークとして取材をしてもらいつつ、本としてまとめる方法になると思います。

鈴木:そこには経費的な面と、その企画自体が成立するのかという難しさもありますよね。たとえば「ペップ」の場合、監督就任1年目でリーグ優勝を成し遂げたから物語として成立している感じがしますが、これがもし下位に沈んでいたとしたら…。

中林:「この人だったら間違いない」という人を追っていかないと、「結果が出なかったから需要がない」で終わってしまいかねないですからね。いま、日本でこの形の企画ができるとすると、岡田武史さんぐらいじゃないですかね。どなたかライターさんが、岡田さんに密着するから本を出したいと言ってくれるのであれば、ぜひやりたいですね。

鈴木:岡田さんはFC今治で新たなチャレンジを始めましたよね。

中林:岡田さんがこれから何をしようとしているのか、リアルタイムで何をしているのか。多くの人が興味を持っていると思います。

鈴木:いまは『選手もの』のほうが売れるのですか?

中林:内田篤人選手など、サッカー選手の枠を越えた人気を持っている人は、別格の売上です。ただ、そうはいってもサッカー本の読者は見る目が厳しいので、内容による部分はありますね。

鈴木:書店のサッカーコーナーに行くと、東邦出版さんの本をよく見かけるのですが、棚の確保など、何か努力をしていることはありますか?

中林:書店での展開に関して言うと、そもそもサッカー本を出版している数が多いのと、これまでの実績から、全然売れないという失敗はほぼないので、長年やっている信頼はあるのかなと思います。それと、書店の店員さんを含めて、サッカーが好きな人が増えてきているのは、この10年ですごく感じますね。書店さんとのコミュニケーションは大事にしたいです。

鈴木:書店の店員さんがサッカーが好きで「この人の記事はよく読んでいます」という著者の本だと、少し目立つところに置いてくれたり?

中林:それもあります(笑)

鈴木:いま、書籍や雑誌の編集者から、Web媒体に移る人が増えてきていますよね。書籍一筋でやってこられた中林さんは、現状をどう考えていますか。

中林:個人的に、この媒体だからこうというこだわりはそれほどないんですね。いまは『書籍を作りたい、出版したい』と思ってくれている著者の方から、いろいろお話をいただくので、そこに対する責任感で仕事をしている部分もあります。個人的には、どの媒体で発信してもいいのかなという気はします。極端な例ですが、サッカー書籍の優秀な編集者がたくさん出てきて、自分の居場所がなくなったなと思ったら、違う媒体やメディアに移動するかもしれませんし。

鈴木:アウトプットの形が違うだけで、やっている仕事はそれほど変わらないと。

中林:そうですね。電子書籍と紙の違いも、それほどこだわってはいないです。著者の方が『電子書籍でも出したい』といえばやりますし、内容的に向いている本は、こちらから働きかけて電子化したり。そのあたりは結構やっています。

鈴木:電子書籍は、読みたいときにすぐ読めるからいいですよね。Webで紹介されたのを見て、衝動買いができるという。

中林:ライターさんに『これを読んでおいたほうがいいよ』と薦められたもの、たとえばマンガの場合は電子で買っていますね。置き場所も取らないですし。

鈴木:いま若手の編集者で、サッカー本をやりたいんですという人はいますか?

中林:サッカーが好きで編集者をめざす人って、まずは雑誌業界に行くんですね。方法としては、どこかの出版社に入って、しっかり結果を出して、自分がやりたいサッカーの本を作るやり方もあります。売れる見込みがあれば、雑誌を自分で立ち上げてもいいわけですし。それは専門誌にこだわらずに、どんどんやってもらいたいなと思っています。

鈴木:中林さんの肩書は「サッカー書籍編集者」ですよね。

中林:ほかに「サッカー書籍編集者」と名乗っている人に会ったことはないので、ライバルがほしいなと思うこともありますし(笑)、もっと広がってほしいなと思います。

鈴木:たしかに、サッカーの編集者はいますが、サッカー書籍専門の編集者は中林さん以外に知りません。

中林:サッカー書籍専門で、それを本業としている人にはお会いしたことはないですね。うち(東邦出版)に入りたいと言ってくれる若い人で、サッカーが好きな方も多いのですが、サッカーの本を出すことを考えたら、うちである必要はないわけで、うちに来たら僕より良い企画を出さないと通りません(笑)。そう考えたら、ほかの出版社でいちからサッカーの企画を立ち上げたほうがおもしろいんじゃないかなと思います。実用書も含めてサッカーは手堅く売れるジャンルではあるので、やりようはあると思うんですよね。

鈴木:ありがとうございました。今後もおもしろい本を楽しみにしています。

中林:ありがとうございました。

 

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