[七尾藍佳]【速報:副操縦士が機長締め出し、故意に急降下】~ジャーマンウィングス機墜落事故~
七尾藍佳( ジャーナリスト・国際メディアコンサルタント)
「七尾藍佳の“The Perspectives”」
フランス南東部アルプス山中に24日墜落した独・格安航空会社“ジャーマンウィングス”の旅客機事故を巡り、ルフトハンザ航空のカールソン・スポールCEOは26日記者会見で、機長が副操縦士にコクピットから締め出された可能性を示唆した。また、仏検察当局のブリス・ロバン検察官も26日記者会見し、機長がコックピットの外に出た後、副操縦士が機長を締め出し、故意に機体を降下させたとの見方を明らかにした。
以下、それぞれの会見の核心部分である。
<ルフトハンザドイツ航空 Carsten Spohr CEO 記者会見 (日本時間26日22:30)で判明した事実>(BBC中継より)
『コクピットは内側から暗証番号で操作する電気錠でロック可能。外からは開けられない。』
「ルフトハンザのパイロット選考過程、訓練ならびに日常的な検査のすべての過程において、今回の墜落の原因となるような要素があったことは一切無いと断言する。ただ、ドイツ政府、ルフトハンザグループ内の担当部署、専門家と今後協議し、パイロット候補者の選定、訓練のプロセスを変更する可能性はある」
「アンドレアス・ルビッツ副操縦士は28歳で、“100%”操縦に適した状態だった。彼は2008年に訓練開始。訓練はいったん中断されたがその後再開された。副操縦士はすべてのフライト実技・医療検査、試験に合格した。操縦士の訓練は途中で中断された理由だが、それが身体に関する医学的な理由か、心療内科的な理由かはプライバシーに関わることでわからないし、捜査に関係することなので言えない。ただ必要な情報はすべてフランス捜査当局に渡している」
「副操縦士が機長をコクピットに入れなかった。操縦室のドアには暗証番号のボタンがあり、内側から電気施錠することが可能だが、この暗証番号を機長は知っているはずで開けられたはずだが、内側から物理的に施錠された場合は外から開けられなくなる。だが実際にそうだったかは不明。キャビンアテンダントにはこのドアの暗証番号を操作することはできない」
「訓練終了後も一年に一度健康診断を行うが、精神科医による詳細な検査は行っておらず、当局の規制からも求められていない。ただ必要があれば心理カウンセラーや精神科医によるケアは提供している」
「ルフトハンザグループでは、パイロットへのストレスが低減した状態、たとえば今回のように機体が安定した高度に達してからコクピットを出ることは許されている」
「なぜ副操縦士が機体を墜落させたかの理由はまったくわからない」
アメリカ合衆国の航空規制では、コクピット内には常に二人の人間がいなければいけないと決められているが、欧州ではその規則は無く、各キャリアに任されている。ルフトハンザでは、今回機長がコクピットを出たことは規定上問題の無い行為だった。
<フランス検察当局ブリス・ロバン検察官によるボイスレコーダーの中身に関する記者会見で判明した事実>(26日夜)
『副操縦士は急に無口になり、呼吸のペースは最後まで普通。マニュアルで機体を降下させた。』
「28歳の副操縦士アンドレアス・ルビッツは、機長がトイレに席を立つまでは、機長と通常の会話を行っており、異常な点は見られなかった。ただ会話が着陸プロセスに関する箇所にいたると、急に会話のトーンが変わり、ルビッツは無口になり、会話のトーンが単調になった」
「その後機長がトイレにコクピットを出た瞬間から、墜落までの間、副操縦士は言葉を一切発していない。呼吸は継続しているが、その呼吸のペースは最後まで普通だった」
「機長がトイレに立ってドアが閉められたと同時に、副操縦士はマニュアルで降下の操作を行った。管制塔が呼びかけたが答えなかった。この間も一切言葉は発されなかった。墜落の直前になってはじめて、乗客の悲鳴がボイスレコーダーから確認された」
「副操縦士は故意に機体を降下させ、破壊させた」
「(記者から「自殺なのか?」と問われ)150名もの人命が失われていることを考えると私はこれを自殺とは呼べない」
これらの会見から、幾つかの疑問が浮上した。まず、コクピットにテロリストが立てこもったり、パイロットが急病で死亡する、もしくは心身喪失状態になった時、コクピット内に強行突入できる仕組みはないのか?ということだ。
内部から施錠されると外から誰も入れないというシステムは安全上不完全ではないか?
次に、ハイジャック対策として配備されているとされるスカイ・マーシャルと呼ばれる武装警察官システムは機能しているのか?という疑問だ。9.11から時間が経ち、そうした制度をもはや採用していない航空会社が多いのだろうか。これらの疑問は今後明らかにされていくであろう。
※CNNによると、フランス政府はアメリカFBIに正式に捜査協力を要請。