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.国際  投稿日:2015/1/1

[イ・スミン]【オーナーリスクを甘く見た大韓航空】~財閥の中には変化の兆しも~


李受玟(イ・スミン)(韓国大手経済誌記者)

執筆記事プロフィール

 

「最初大韓航空の関係者は飛行機がリターンしたことがこんなに大きくなるとは思えなかったらしいですよ。もしその事件が起こった後、オーナーに直言する人さえいれば、チョ・ヒョナ大韓航空元副社長が自ら謝罪を行う時期も早まったので、検察に出頭する最悪の状況にはならなかったかもしれないと思います。」

大手企業A社の広報担当(PR)の役員であるチェ・ジンス(偽名)さんは韓国をはじめ多くの国々に「ナッツリターン」という、この事件の皮肉な呼び名を知らしめたチョ元副社長の行為について、このように指摘した。チェさんだけでなく多数の韓国人は大韓航空が経験している混乱は財閥(ジェバル・jaebeol)という特殊な企業の構造が持つ、「オーナーリスク」から発したことだと理解している。

 

「オーナーリスク」、つまりの財閥の会長や大株主など少数の持分で企業を支配している個人が、誤った判断を下したり、不法行為をしたりして企業全体に損害を与えることを指す。企業のイメージの失墜、売り上げの減少などが「オーナーリスク」の結果といえる。特に財閥と呼ばれる企業グループが産業界を支配している韓国にとってはこのオーナーリスクはただの企業経営のレベルではなく、国家経済を左右する問題もなる。
特に今回の「ナッツリターン」に対応する大韓航空の姿は典型的な「オーナーリスク」の公式に従ったと言っても過言ではない。過ちを犯したオーナーをかばうことにばかりに熱中したため、世論の動きを全く追いかけられなかった。それはこの事件が企業の外部に知られた時点から変わることはなかった。

発端は12月5日、ブラインド処理されたスマートフォンのアプリに掲載された短い文だ。チョ・ヒョナ元副社長の紀行を目撃した職員が作成したものと推定される書き込みだった。3日後、一部のマスコミはその文を根拠として「ナッツリターン」事件を報道した。あっという間にインターネットに関連記事が溢れたが、その時までの世論は「チョ元副社長が直接に謝れ」だけだった。

しかし大韓航空は公式の謝罪文を通じて、当時チョ副社長は定められたマニュアル通りにし、間違ったものはキャビン担当の乗務員という主張を展開し、オーナー家の庇護に乗り出した。

心のこもった謝罪を期待した人々は大韓航空が嘘をしていると考えた。すぐ国の名前を付けた航空会社を自分勝手に振り回しているオーナー家に対する不満が出始めた。翌日父親のチョ・ヤンホ大韓航空会長が国民に対して謝罪をして娘の辞任を発表したが、遅きに失した。

さらに、チョ元副社長を保護するため大韓航空の関係者たちが犯したことが明らかになってきた。まず、国土交通部の真相調査で嘘をつきなさいと現場にいたパク・チャンジン氏(機内サービスの担当者)を脅迫したこと。そして政府の担当者に圧力をかけ、事件の証拠を隠滅しようとしたことも発覚した。今検察は大韓航空と国土交通部の黒い関係を捜査をしている。もちろん事件の中心に立っている「ナッツ姫」は航空保安法違反などの疑いで起訴され、30日ソウル拘置所に収容された。

 

一方、韓国の財閥企業は今回の事件を機に「オーナーリスク」の点検に乗り出した。Bグループはオーナーの息子たちにメディア対応法を教えながら オーナー家の肯定的なイメージを醸成するための長期プロジェクトを始めた。オーナー家の一員が検察に出頭したり取調べを受けたりする時、社員たちを動員してフォトライン(注1)を作ってきた慣行を原点から再び考えるというところもある。

Cグループの関係者は「これまでオーナーを保護するためにやってきたことだが、これを批判する世論が激しくなっただけに、現場行動指針を考えている。」と述べた。これはオーナー一家を最優先にした過去の雰囲気とはまったく違う話だ。つまり「ナッツリータン」からチョ元副社長の拘束までの世論の流れが、財閥らに 相当な負担であったことを意味する。「オーナーリスク」という財閥の重い“足かせ”も「ナッツリータン」を機に変わろうとしている。

(1)フォトライン 関係者の写真を取られないようにマスコミから守るために人を動員し、並ばせること。

 

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