[Japan In-depthチャンネルニコ生公式放送リポート]【子供の6人に1人が貧困の国、日本】~周囲の気づきと連携が必要~
2015年1月28日放送
Japan In-depth 編集部(Aya)
週刊朝日コラボ企画は二大テーマでお送りした。まず一つ目は、ニュースで目にしない日はないISILによる邦人人質事件。この番組でお馴染みの週刊朝日 古田真梨子記者は、後藤健二氏が誘拐される直前までメールでやり取りをしていたという。昨年10月上旬、北海道大学の学生がイスラム国に参加し日本でニュースになった。それに関してイスラム国に詳しい後藤氏に取材を申し込むため古田記者はメールを送り、10月23日に後藤氏から返信があったという。そして、11月5日、都内で会う約束をした。しかしその後、後藤氏との連絡は途絶え、今年1月にISILによる映像で、湯川氏と後藤氏が人質に取られていたことが明らかになった。古田氏は「後藤さんを知るジャーナリストの話によると、慎重な人だったという。数日で湯川さんを連れて帰ろうとしていたということは、何か確定的な情報を持っていたのでは」と話した。今回のメインテーマは「子供の貧困」。なんと日本では子供の6人に1人が貧困だと言われている。そもそも子供の貧困とは一体どのようなものなのか?その対策とは?子供の貧困や児童虐待を取材してきたジャーナリストの杉山春氏に伺った。
ここでいう貧困状態とは絶対的に飢えている状態ではなく、相対的なもので、周囲の人と比べて同じような教育が受けられない、同じような生活ができないことなどを指す。これは子供の将来にも大きな影響を与える重要な要素だ。日本の子供の相対的貧困率は諸外国に比べても高い水準で、16.7%にのぼる。これは日本全体の相対的貧困率16%よりも高い。つまり、日本では全年齢層の中でも特に子供が貧困状態に陥っているということだ。子供を持つ若い世代の生活は苦しくなっており、一人親の家庭では54.5%が貧困に陥っている。
杉山氏は自らの取材経験から、「家族の在り方が変わってきている」と話す。たとえば、2000年に愛知県武豊町で、3歳の女の子が段ボールの中で餓死しているのが発見された。この事件は、家庭内で子育てがなされていて、父親も家に帰ってきていたが、ネグレクトが起きてしまい子供が亡くなった。
それに対して、2010年に大阪で3歳の女の子と1歳半の男の子が置き去りにされた事件。こちらは、離婚後、母親が風俗店で働き始め、家に帰ってこなくなったという。「つまり2000年ではまだ家族があり、社会の力があったのに対して、2010年には家族自体が崩壊している」と杉山氏は指摘した。
しかし、このような事件が起きているのにも関わらず、私たちには子供の貧困の実感はなかなか湧かない。古田氏も「30人のクラスに5人いるということに驚きを感じる」と話した。貧困が外から見えにくくなっている理由について杉山氏は、調布市で13歳の子が43歳の母親に首を絞められて殺された事件を例に説明した。
この家庭では収入は15万円ほどで家賃を払えない状態だったが、それが周囲にはわかっていなかった。取り調べで母親は「母子家庭だから、と言われないようにきちんとした服を買い与えていた」と話していたという。前述した大阪の事件でも、母親はお洒落をしていて、子供はネグレクトされていたという。杉山氏は「見せたいように見せられる時代。服はちゃんとしているけど、実は1日1食ということもある。」と述べ、「貧困が見える方がケアしやすい。見えない方が重い」と貧困を隠す時代が到来しているとの認識を示した。
周囲の教師や友人がそれに気づいてあげられないのだろうか。杉山氏は「子供は貧困を隠すために孤立化する」と実情を語った。痛ましい事件を減らすためには、周囲に見守ってくれる大人がいるかどうかというのがポイントになってくる。昨年、法律で、スクールソーシャルワーカーが全国で1,000人から10,000人に増やされることが決まった。「子供の状態を社会が知るために、学校に福祉が入るのは大事」と杉山氏は述べた。
また、地域のコミュニティが減ってきていることも、貧困が表面化しにくくなっていることの原因の一つだと言える。かつては隣の家庭のことはよく知っていて、何かおかしな様子があったら声をかけるという時代だったが、今は他人の子に声をかけづらい。声を掛けると逆に不審がられてしまうこともある。杉山氏は「毎日かけていれば事案にならない。常に関心を寄せることが大切。」と解決策について話した。貧困をなくすためには、繋がりを作って、子供たちの困難を見えやすくするところから始めなければならない。
日本では年間20万人が人工妊娠中絶を行っている一方、不妊に悩んでいる夫婦も沢山いる。望まない妊娠をしてしまった場合、堕ろす、或いは産んだものの十分な経済力がなく貧困になってしまうという道だけではなく、他の人に育ててもらうという選択肢もあると安倍編集長は語った。
子供の貧困を減らすための解決策について、大学で教育学を学んでいた古田氏は「教育学部で貧困について学んでいない」と指摘し、教師が貧困について学ぶべきだと述べた。杉山氏もこれに同意したが、「何もかも先生に任せては大変」とも述べた。文科省と厚労省が縦割りになっていることも課題の一つであり、これは社会、親、教育など様々な要素が絡み合った問題である。そのことを認識し、沢山の機関が連携すれば、解決の糸口が見つかるだろう。