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.経済,ビジネス  投稿日:2015/6/11

[遠藤功治]【連結営利の6割がインド市場】~大手自動車会社の決算と今後の課題 スズキ 2~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

(この記事は【今年3月期、6年ぶりの減益】~大手自動車会社の決算と今後の課題 スズキ 1~ の続きです。)

スズキの収益柱は、国内軽自動車市場とインド市場です。ダイハツが昨年度25%の大幅な営業減益となったのに対し、スズキが4%減益と比較的小幅な落ちで済んでいるのは、ひとえにインドでの収益が好調であったからに他なりません。

スズキのインド子会社、マルチスズキの躍進が続いています。2015年3月期のスズキの国内生産台数は、6%増の105万台、一方海外生産台数は7%増の199万台。世界生産台数は304万台と過去最高を更新しましたが、海外生産台数のうち、インドは130万台で海外生産の約65%を占め、国内生産台数を既に25万台も上回っています。つまり、生産台数だけで比較するなら、スズキの全世界での生産台数のうち、インドが43%、日本が34%で、この2カ国だけで77%を占めることになります。

昨年度のマルチスズキの営業利益は約738億円で、前々期比約30%増益、過去最高益を更新しました。インドは2014年前半まで、景気減速とガソリン価格の上昇などにより自動車市場が低迷していたのですが、6月にモディ首相が誕生してから販売は一転回復、マルチの出荷台数は129万台と前期比約12%増加し、これも過去最高を更新しました。

昨年度のスズキの連結営業利益約1,800億円に対し、マルチスズキは738億円、よってマルチの利益貢献度は約40%、ではありません。マルチが販売している車は当然、スズキが過去に日本国内で開発した車です。結果、マルチは日本のスズキ本社に対し、多額のロイヤリティーを払っています。その額推定で約400億円。よって、この400億円とマルチ自体の営業利益738億円を合算すると1,100億円強、スズキの連結営業利益の約60%がインド関係ということになります。スズキの業績が、インド一本足打法とも揶揄される要因です。

インドの自動車市場は昨年度321万台で2.5%増加、全体に占めるシェアはマルチが36%(乗用車のみなら45%程度)で2位以下を大きく引き離しトップです。マルチの今年度も好調に推移すると見られ、販売は130万台程度と、10%強の伸びを予想しています。

マルチは2017年をメドに、現在のデリー近郊にある2つの工場に加え、インド西部のグジャラート州に生産能力25万台の新工場を建設中です。これでマルチの生産能力は150万台に達し、インド市場での不動の地位を維持できる模様です。インドの自動車市場、2020年までには、日本を抜き中国・米国に次ぐ第3位へ、2035年までには中国を抜いて世界一の市場になるとの予想もあります。ここでの首位を維持できれば、スズキにとっては大きなアセットになります。インドを拠点にアフリカへの進出も可能になるでしょう。

スズキの問題を敢えて挙げれば、国内軽自動車市場とインド市場以外の収益状況が、必ずしも宜しくないことでしょう。インド以外でのスズキの海外生産は、インドネシア・タイ・中国・ハンガリー・パキスタンなどですが、大半の地域で損益は実質的にトントンか赤字です。現地市場の弱さや投入商品の失敗など要因は多々ありますが、スズキにとって、国内・インドに次ぐ、第3の地域的な柱を作ることは急務です。

もう一つの懸念は二輪車事業です。本来なら、ホンダ・ヤマハと並び、浜松発祥の二輪車メーカーとして、二輪車が収益の柱になって当然なのですが、ここ数年間は低空飛行、昨年度は7億円弱の営業赤字に転落しました。インドネシアやインドなどの大市場でシェアが伸びず、現地に合った商品開発も遅れ気味で、収益的には当面苦戦が続く模様です。

【目の上のタンコブ、VWとの係争】~大手自動車会社の決算と今後の課題 スズキ 3~ に続く。このシリーズ全3回。記事内のリンクは http://japan-indepth.jp でお読みください)

タグ遠藤功治

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