[Football EDGE 編集部]【第3節】香港在住ビジネスマンが始める、サッカー事業の軌跡(アーカイブ)
(文・写真 池田宣雄)
近年、アジアでサッカービジネスに関わる日本人が増えてきた。香港在住15年を数える、池田宣雄氏もそのひとりだ。32歳のときに香港で起業し、コーポレートコンサルタントを営むかたわら、サッカーに関する様々な業務のコーディネーターとしても活動している。金融の街としても知られる香港より、スポーツ×ビジネスの観点から綴るエッセイをお届けする。
◆在留邦人が暮らす土地のスタジアムで、身近にいる日本人選手を応援できる環境
2011年の暮れから、時間の許す限りスタジアムに足を運んでいる。手元に残る入場券の切れ端が、ちょうど20枚になった。香港1部2部のリーグ戦とカップ戦、先日は深圳側に越境して、中国2部のリーグ戦も観に行った。
スタジアムで試合観戦、と言うよりは、プロサッカーの現況視察、と言った方が適切かもしれない。もちろん純粋な気持ちで観戦もしているが、香港や深圳のプロサッカー興行の現場を巡って、できるだけ正確に状況分析しているからだ。
連載コラムの第1節で「香港サッカーの現場はツッコミどころ満載だ!」と書いたが、20試合を視察した現在の心象は、幾分肯定的な方向に振れている。スタジアムに通いたくなる動機を見い出す事ができたからだ。
その最たるは、香港や深圳のプロサッカーチームでプレーしている日本人選手たちの存在だろう。現時点で4人(高田寿典=TSWペガサス、山本朝陽=標準レンジャーズ、中村祐人=シチズンFC、そして深圳紅鑽FCの楽山孝志)がチームの主力選手として活躍している。(編集部注:原稿執筆の2011年時点)
彼らは各々の所属チームと契約して、我々在留邦人ともそう変わらない日常生活を送っている。一般的にプロサッカー選手の契約は半年から2年程であり、よほどチームと選手が良好な関係を築かない限り、次の移籍先を求めてチームを去って行くものだ。
もちろん、他のチームから声が掛からなければ、プロサッカー選手としてのキャリアに終止符を打たなければならないし、縁あって所属先が見つかったとしても、チーム指導陣の信頼を得られず、試合に起用されなければ放出されるので、また次の移籍先を探さなければならない。
この4人の選手たちが、いつまでも香港や深圳のピッチに立っている訳ではなく、既に来季の所属先を求めて模索しているかもしれない。だからこそ、同じ時期に同じ土地で活躍している日本人選手たちに、大きな声援を送りたいと思う。
因みに、現在アジア・オセアニアのプロサッカーチームに所属する日本人選手は、タイとシンガポールを中心に100人前後いる模様だ。選手のリストを覗いてみると、元日本代表や、若年代での代表歴のある選手から、日本では目立った活躍をしなかった選手まで、実に多彩な顔ぶれだ。
アジア・オセアニアに点在する各々のチームに、より多くの日本人選手が所属して、ピッチで躍動する姿を想像してほしい。在留邦人たちが暮らす土地のスタジアムで、身近にいる日本人選手を応援できる環境があっても良いと思う。これは立派なレジャーではないだろうか?
日本で活躍の場を失った指導者や選手たちが、アジア・オセアニアで、少しでもキャリアを継続できれば良いと思うし、各地に在留する邦人たちにとっても、我が街のローカルチームを応援する動機にもなるはずだ。
これから、香港および周辺都市において、日本サッカーの進出と展開を、関係各処の皆さんと共に、額に汗して勤しんで行く覚悟を決めた。志の高い方々との協業が不可欠だと思う。(第4回へ続く)
提供元:<Football EDGE>