[宮家邦彦]【中国にグローバルパワーの資格なし】~株乱高下への政府介入の稚拙さ~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月13日-19日)」
今週は不確実性の高い事象が盛り沢山だ。まずはイラン核交渉から。最近再び楽観論が浮上しているが、本当にそうなのか。ハーメネイ最高指導者は実質的最高権限を持っているのか。一方、IAEA査察の受け入れを革命防衛隊は甘受するのか。どうも胡散臭い。万一合意が成立しても、悪魔は詳細に宿る可能性が高いだろう。次の不確実性はギリシャだ。ギリシャは最善でも、ユーロ圏に留まりながらEU内の二級国家として生きていくしかないが、EU側は今ギリシャに残留か離脱かを迫っている。仮に残留しても、ギリシャ国民は経済的に耐えられないが、こうした矛盾はギリシャがユーロ圏にいる限り続くだろう。やはり欧州は徐々に衰退していくのだろうか。
最後の不確実性は中国経済だ。上海総合指数の乱高下自体は驚くに当たらない。驚くのは中国政府の介入の拙劣さだ。都合が悪くなると、「法治」をかなぐり捨て、いつでも「人治」となる国が、自由と透明性を基本とする国際経済システムの一部に本当になれるのか。やはり、中国にグローバルパワーとなる資格はない、ということだ。
○欧州・ロシア
13日にユーロ圏の、14日にはEU全加盟国の財務相が、それぞれ会合を開く。ちなみに、ギリシャは14日に対日116億円返済期限が、17日には7100万ユーロ国債の利子返済期限がそれぞれ来るのだが、やはりこのまま、ずるずると行くのだろうか。
〇東アジア・大洋州
13-17日に南アフリカの副大統領が、14-27日にはフィジー首相が、それぞれ訪中する。16日には南北朝鮮がケソン工業団地での給与問題を話し合う。17日には、早いもので、ウクライナ上空で撃墜されたマレーシア航空機事件から一周年となる。
〇中東・アフリカ
イラン核問題がどちらに転んでも、中東湾岸の核ドミノが始まることだけは間違いないだろう。15日にレバノンではまた大統領選出プロセスが再開される。17日にはラマダン月が明ける。だが、それ以外、中東は何も変わりそうにない。
〇アメリカ両大陸
13日に共和党保守派期待の若手で政策実行力のあるウォーカー・ウィスコンシン州知事が大統領選出馬を表明する。ブッシュを脅かすか見ものだ。16-17日にはブラジルでメルコスール(1995年に発足した南米南部共同市場)首脳会議が開かれる。
〇インド亜大陸
13日にワシントンで米印原子力協力10周年行事があり、バイデン副大統領が演説する。15日にはインドで民間レベルの米印防衛協力会議が開かれる。米印関係は着実に進展しているようだ。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。