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.国際  投稿日:2024/10/16

イスラエルの対イラン報復攻撃、米大統領選挙前にも


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2024#42

2024年10月14-20日

【まとめ】

・イスラエルの対イラン報復攻撃への緊張感が高まっている

・攻撃対象に懸念、石油価格高騰のおそれも

・米反対により、核施設への攻撃の可能性は低い

 

日本のメディアでは10月27日の総選挙の行方ばかりに関心が集まっている。それ自体当然だろうし、文句を言うつもりもない。筆者の注目は、先週お伝えした通り、いつ行われてもおかしくないイスラエルによる対イラン大規模直接報復攻撃タイミング対象と規模の方である。米大統領選挙への悪影響だって大いに気になる。

でも、その前に、まずは東アジア情勢について一言。韓国を第一の「敵国」とした北朝鮮は昨日、南に通ずる道路を爆破したそうだ。中国は台湾を取り囲むような形で軍事演習を実施したという。でも、これって両国の「強さ」ではなく、むしろ「弱さ」を示している、というのが筆者の見方。勿論、希望的観測、とのご批判は覚悟の上である。

そもそも、1950年以来、北朝鮮にとって韓国は常に「敵国」だったのであり、いくら文在寅政権の南北対話が失敗したとはいえ、今更「敵国」と言われても誰も驚かない。これ見よがしの道路爆破は、北朝鮮国内への韓国文化の「浸透」が如何に脅威であるか、を如実に示しているのだろう。北の「困ったちゃん」は今も健在なのである。

中国の台湾周辺軍事演習も同様だ。台湾の海上封鎖を狙ったもので、規模こそ拡大したのだろうが、基本的には2022年8月のNペローシ米下院議長(当時)訪台時に行われた演習と同類だ。でも、本当に台湾を取る気があるなら、ハマースと同様、今中国は台湾侵攻なんか「やる気がない」と台湾側に思わせるべきだと思うのだが…

こんな軍事演習をやっても、台湾当局は勿論、日米も懸念を深めて、抑止力拡大のペースを早めるだけだろうに…報道によれば、人民解放軍は戦略ロケット部隊も、潜水艦部隊も、あまり機能していないそうだ。されば、ここは中国の動きを冷静に分析すべきではないか、と思っている。さて、話を本題の中東情勢に戻そう。

イスラエルのネタニヤフ首相は、対イラン報復攻撃を11月の米大統領選挙まで待つつもりなどない。180発もの弾道ミサイルを領土内に直接撃ち込まれたのだから、報復攻撃の大義名分は十分だ。最大の問題は攻撃対象だろうが、米側が強く反対していることもあり、流石のイスラエルも、今回は核施設を狙わないだろう。

では、代わりに原油施設を狙うのかというと、これも米側は難色を示しているようだ。そりゃそうだろう、下手をすれば湾岸地域にまで戦火が拡大し、原油価格は再び急騰する。しかも、イラン側だって、そこまでやられれば、黙ってはいられない。最悪の場合、湾岸地域のアラブ産油国の原油施設を攻撃するかもしれないからだ。

更には、ホルムズ海峡封鎖だってあり得る、などと懸念する向きも一部にはあろう。こうした論点が気になったので、先週はJapanTimesに、今週は産経新聞に、それぞれコラムを書いた。前者は英文で「今のテヘランは1930年代の東京に酷似」、後者は和文で「イスラエルは如何に報復するか」と題して書いている。乞うご一読。

続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。今回は試験的に経済イベントを増やしてみた。

欧米の外交・経済専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

10月14日 月曜日

中国、9月の貿易収支を発表 インド、9月のCPIを発表

10月15日 火曜日

WTO総会始まる

10月17日 木曜日

欧州中銀とトルコ、金利決定

NATO事務総長、就任初のNATO国防大臣会合を主催

欧州委員会、EU首脳会合を開催、ウクライナや中東問題を議論

10月18日 金曜日

中国、第三四半期のGDPを発表

英国王夫妻、オーストラリアを公式訪問

イタリア、G7国防大臣会合を主催(ナポリ)

10月19日 土曜日

米ロックの殿堂、今年度の発表

10月20日 日曜日

モルドヴァ、大統領選挙とEU加盟国民投票

最後はいつものガザ・中東情勢だが、冒頭述べた通り、今後も全てはイスラエルの対イラン報復攻撃の結果次第なので、今回もお休みする。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

トップ写真:イスラエルによる空爆で破壊された住宅に国旗を掲げるレバノンの男性 出典:GettyImages/ Scott Peterso




この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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