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.国際  投稿日:2015/8/16

[植木安弘]【ミラノ万博、新たに分野別アプローチ】~9分野で、食と食糧の未来を考える~


植木安弘 (上智大学総合グローバル学部教授)

「植木安弘のグローバルイシュー考察」

プロフィール執筆記事

ミラノ万博の来場者数が中間地点で予想の約半分にあたる1000万人にほぼ達した。5月1日に開幕以来連日多くの客で賑わっているが、万博事務局は客の約半分が地元イタリアからで、あとの半分が外国からと見ている。10月31日に閉幕するまでには2000万人の入場者を見込んでいる。

ミラノ万博のテーマは「地球の食糧を満たす:生命へのエネルギー」で、イタリアらしく食に焦点を当てたものだ。ただ、この万博を単に食の祭典に終わらせず、未来の人類の存続のための中心的な鍵としてこのテーマを見ており、栄養供給や食糧そのものの持続性に加えて、それを支える自然や環境を維持するためにはどうしたら良いかを考える一つの大きな機会を提供している。

今回の万博はこれまでと違って、総合的なテーマに加え、クラスターという分野別のアプローチを採用している。これは今回の万博の新たな試みで、生物・地中海、乾燥地帯、島々、海と食糧、米、コーヒー、ココアとチョコレート、香辛料、穀物と塊茎、フルーツと野菜の9つ分野毎に参加国と展示をより包括的に紹介、並びに問題提起していこうとするものである。

総じて70のパビリオンが建築されているが、そのうち国家単位のパビリオンは54で、その他にはEUのような地域機関や、セーブ・ザ・チルドレンやカリタスといった世界的NGOや市民社会グル―プ、さらにイタリアの企業や国際的な民間企業もパビリオンを提供している。合同で出典しているところも多いため、参加総数は140を超える。

注目されるのは国連の関与で、この万博ではこれまで伝統的に建設されてきた国連パビリオンは無く、万博のテーマ全体に関わる関与の仕方をしている。食と食糧という国連全体に関わるテーマであるのと同時に、ローマには国連の三つの食糧関連専門機関の本部があるため、この方式が採用された。

特に、中心テーマを題材にして造られた「パビリオン・ゼロ」は国連と万博事務局が協力して出来たもので、食と食糧に関する歴史的知識の記録を表す資料館のイメージから始まり、大地の力強さを示す大木、大型プロジェクション・マッピング技術を駆使したスクリーンによる世界各地の食糧生産、食の源泉となる動植物、食の廃棄に関する問題提起、食の技術革新などを総合的に紹介している。それぞれの地点に国連からの問題提起とメッセージがパネル展示されており、さらに会場のいたる所にもテーマに応じた国連によるパネル展示が施されている。「パビリオン・ゼロ」は国連館ではないかと感じる人も多いそうだ。

米国のパビリオンに入ると、オバマ大統領による世界に向けたビデオ・メッセージが入場者を迎える。2050年には90億人に達すると予想される人口増加に向けて如何に対応するか、これが我々の喫緊の課題である。

【ミラノ万博、日本館の魅力と問題点】~狭いエンタメ会場、外から見えず~ に続く。このシリーズ全2回)

※トップ画像(キャプチャ):出典 EXPO MILANO 2015 HP

タグ植木安弘

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