習近平主席は日本を不当に悪魔化している
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
9月3日の北京での「抗日戦争勝利記念」の軍事パレードを閲兵する中国の習近平国家主席こそ歴史をねじ曲げて、自国の将来の野心に利用し、日本を不当に悪魔化している――こんな厳しい批判がイギリスの大手雑誌「エコノミスト」の巻頭論文に載ったことは日本の私たちも知っておくべきである。天安門での大パレードの解釈の一つとして有益だろう。
エコノミスト誌8月21日号は表紙に習主席がライフルとペンとが一緒になった銃を持って立つ写真とともに、「習の歴史の教訓」「中国はいかに将来を支配するために過去を修正するか」という記事の見出しを載せた。そして巻頭論文で「中国共産党は現在の野心を正当化するために歴史を悪用している」という見出しの主張と解説を掲載した。
この巻頭論文の要点は以下のようだった。
・中国共産党は今回、初めて対日戦争勝利を単なる儀式だけでなく軍事力の誇示で祝うが、その行動は周辺諸国に中国のいまの力を宣伝する威圧効果を必然的に生む。同共産党は現在の野望を正当化するために過去の歴史を改ざんしているのだ。
・中国は過去の犠牲の大きさのために自国が今後のアジアの秩序で最大の発言力があると考え、日本は今また他国への侵略を始めかねない危険な存在だと宣伝する。
・だが中国の主張する歴史は、日本と戦争をしたのは共産党ではなく国民党であり、現在の日本が帝国主義の日本とは根本から異なるという点で大きく間違っている。いまの日本は平和主義に徹し、高齢化が進み、核兵器を忌避する民主主義の国なのだ。
・中国が日本を悪魔化することは不公正であるだけでなく危険である。中国共産党が自国内の反日感情をあおり過ぎると、国民の反米感情までを高めて、アジアでのアメリカとの対決を求めるようになりかねないからだ。
・習近平主席は歴史から本当の教訓を学び、歴史を改ざんして自国の有利な方法でのみ利用することを止めて、アジア地域の安定を多国間の協議で進めることが望ましいのだ。
以上の主張は9月3日に天安門の高い檀上に立って、一大軍事パレードを閲兵する習近平国家主席に向けられた言葉なのである。日本側としてもこの「抗日戦争勝利記念」の行事がそもそも日本に対する不当な悪魔化から始まっていることを改めて銘記しておくべきだろう。
*トップ画像:エコノミスト誌8月21日号表紙・The Economist-Official Siteより