[古森義久]【日中関係、希薄な方がうまくいく】~習近平主席の傲慢な態度が示唆するもの~
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授) 「古森義久の内外透視」
11月10日の日中首脳会談は日本側に中国との中期、長期のつきあい方の根本を改めて考えさせたといえよう。2年半ぶりの両国首脳の話し合いはそれがないよりは、あるほうがよいとはいえるだろう。また日本側に尖閣諸島などについての大幅譲歩を会談の前提条件として求めた中国側が一応、その条件を引っ込めた形となったことは、日本のささやかな外交勝利といえるのかもしれない。
しかし会談の時間はわずか25分、しかも習近平国家主席の安倍晋三首相へのいかにもわざとらしく冷淡で傲慢な態度は、中国の対日姿勢の本質を象徴していた。習主席のその大仰な尊大さはコメディのように滑稽であり、日本国民の多くに、中国とは一体、何様なのか、と思わせたことだろう。
そんな折の11月14日、東京・日比谷の帝国ホテルで気鋭の中国問題専門家の石平氏へのPHP研究所の「山本七平賞」の授賞式が催された。私も石平氏とは共著「自滅する中国 反撃する日本」という本を出したこともあり、招かれて出席した。
石氏の受賞作は奇しくも「なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか」(PHP新書)という本だった。その内容は日中の歴史を2000年もさかのぼったうえで、「中国となるべく距離を置き、関係が希薄であったときのほうが日本は繁栄し、日中外交にも揉めごとが起きない」という斬新な分析と結論だった。従来の日本側の「『日中友好』を進めれば日本経済も、日中関係も安泰だ」という「常識」を完全に覆していた。
受賞の挨拶をした石氏は「皮肉なことに今回の習近平氏の安倍首相に対する態度が日本国民の多くに私の書の主旨の正しさを提起したのではないでしょうか」と冗談まじりに語った。それを受ける形で選考委員の中西輝政京都大学名誉教授が「今回の習氏の態度は7世紀の中国の隋の皇帝が日本からの使節に不遜だとして怒りをぶつけたのと似ている」と述べて、会場に複雑な笑いや拍手を生んだ。
隣同士だからとにかく、こちらがへりくだっても、仲良くしなければならない。日本側の対中姿勢というのは長年、こんな思考に支えられてきたといえるだろう。その思考がやっと根本からの変革を迎えたのかもしれない。そんな予兆を感じさせる授賞式だった。
【あわせて読みたい】
[古森義久]【中国、対日威嚇外交の挫折】〜日本側の強硬姿勢で日中首脳会談実現へ〜
[古森義久]【日本を非難する人権弾圧国家、中国】~日本の国連外交はどうしたのか?~
[宮家邦彦]【日中首脳会談の次は日韓?】~論理的に動くか、朴大統領~
[神津多可思]【くたびれた中国・新興国経済】~日本は世界経済をけん引出来るのか?