[Japan In-depth編集部]【“人と動物との共生”を目指して】~市民・行政・政治の連携の重要性~
Japan In-depth 編集部(Satomi)
2012年に動物愛護法が改正されてから3年が経ったが、ペットに対する飼育放棄や野良猫や野良犬に関する問題は解決を見ていない。毎年10万頭以上の犬猫の殺処分の問題も依然として存在している。また、東日本大震災時以降、ペットの“同行避難”が多くの自治体でガイドラインとなっていたにもかかわらず、今回の台風18号被害において避難所におけるペット受け入れ拒否が問題となるなど、動物と人間の共生は様々な問題を提起している。
ペットの殺処分には、行政も取り組んでいるが、住民のボランティア活動に頼っている部分も大きく、依然として解決には程遠いのが現実だ。背景には、動物に対する無関心や、市民に情報が行き渡っていないことがある。
こうした中、少しでも多くの人に動物愛護の問題を知ってもらおうと、12日、埼玉県朝霞市で人と動物との共生を目指し、チャリティー・イベントが開催された。
音楽を通じて動物への想いや感謝を伝えたいというシンガーソングライターのshinoさんやさくまひできさん、ピアニストの山地真美さんらがライブを行った他、参議院議員である山田太郎氏や埼玉県各市の市議会議員、県の職員らも参加、動物愛護に関する問題について市民と意見交換した。
保護猫のための猫カフェを運営する梅田達也さんは、飼い主のいない猫を増やさず地域で管理する「地域猫活動」の重要性を強調した。特に、「TNR活動(T:トラップ 捕獲器で野良猫を捕獲、N:ニューター 不妊・去勢手術をすること、R:リターン 元の生活場所に戻すこと)」に1人でも多くの住民が関わることで、猫の殺処分を劇的に減らすことができると訴えた。また、生体販売業者から安易にペットを購入することが、結果としてペットの殺処分に繋がると述べた。
山田議員は、イノシシ、シカなど鳥獣が数十万頭単位で殺処分されている実態を紹介、ペットだけでなく広く動物と人間の共生について考えるよう訴えた。また、生体販売業者がペットを大量生産し、病気になったりして売り物にならない動物を大量廃棄している実態を赤裸々に紹介した。
また、市議会議員らによるパネルディスカッションでは「防災とペット」や「行政とボランティアの連携」などの問題が議論された。市民からは、一部のボランティアだけに頼っている「地域猫活動」の現状について懸念が示され、行政の取り組みが不十分であるとの指摘が出た。また、生き物を大切にする教育を子供たちにすべきではないか、などの意見も出た。こうした問題についての啓発に向け、自治体と政治家、市民の連携の重要性が参加者の間に共有された。
犬と猫、およそ2000万頭がペットとして飼われている日本。「動物と人間との共生」の問題は複雑多岐にわたっており、簡単に解決はしない。そうした中、私たちが出来ることは何か、考えさせられる一日となった。
*写真:ライブ・トークイベント「犬や猫の殺処分ゼロと、人と動物との共生を目指してライブ&トーク We’re all friends!」出席のアーティストと埼玉県の市議会議員、県職員ら。