日本糾弾の米・学者を真っ向から否定~慰安婦問題で若手学者が~
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
アメリカのコネチカット大学のアレクシス・ダデン教授といえば、慰安婦問題で長年、日本を糾弾してきた歴史学者である。ダデン女史はアメリカ側教科書の慰安婦問題の誤記に対する日本側の学者たちの抗議をも「不当な検閲」として非難してきた。ところが同じアメリカ人歴史学者の若手がダデン教授を「日本側をただののしっているだけだ」と厳しく批判した。日本の英字新聞ジャパン・タイムズ12月18日付は「アメリカの教科書の擁護者は狭量だ」と題するウィスコンシン大学博士課程の日本歴史学者ジェーソン・モーガン氏からの投稿を掲載した。まだ30代の若手の同氏は慰安婦問題での日本糾弾の急先鋒ダデン氏がジャパン・タイムズに寄せたコメントを批判していた。
同紙の12月11日の記事は「50人の日本の歴史学者が慰安婦問題でマグロウヒル社とアメリカ側学者を攻撃する」という見出しで、日本の山下英次大阪市立大学名誉教授や小堀桂一郎東大名誉教授ら合計50人の学者が同社発行の教科書の慰安婦問題記述の誤記を「明白な間違い」と抗議したことを報じていた。
この教科書には「慰安婦は日本軍が強制連行した」とか「20万人の性的奴隷」「慰安婦は天皇の日本軍への贈り物」「日本軍は終戦直後、慰安婦多数を殺した」という記述があった。いずれも事実とは反する記述だった。日本の外務省がまずマグロウヒル社に抗議すると、ダデン教授らはアメリカ人学者に呼びかけ、20人の連名で外務省の抗議を「日本政府によるアメリカの教科書の不当な検閲」とか「言論弾圧」と逆に非難する声明を発表した。
日本側の山下名誉教授らは50人でこのダデン教授らの声明に抗議し、その根拠の明示を求めるとともに、マグロウヒル社の教科書の記述を改めて事実ではないとして批判した。
ジャパン・タイムズはこの日本側の動きを12月11日付で記事にしたのだった。その記事はダデン教授が日本側の批判を「50人のギャングの主張」としてその内容には触れずに否定し、慰安婦を現代のナイジェリアのイスラム系テロ組織「ボコ・ハラム」の女性略奪に重ねて現在の日本側を糾弾するコメントを載せた。
モーガン氏はこのダデン教授のコメントを「日本側の実績のある学者たちへのののしりであり、アマチュアの政治活動」だと非難して、学者としての良心に欠けると主張した。
日本の慰安婦問題をめぐってはアメリカ側の歴史学者はダデン教授をはじめ大多数が「日本軍が組織的に20万の女性を強制連行した」という朝日新聞と同様の主張を続けていた。
だが最近ではこの主張にも歩調の乱れが出て、モーガン氏のように多数派の従来の見解を正面から否定する若手学者も出てきたわけだ。