ゴーンと司法
.国際  投稿日:2015/12/24

[古森義久]【中国の反日政策、更に激化】~特集「2016年を占う!」日中関係~


 古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

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2016年の日本は自国の国家安全保障を中国によって脅かされることが顕著な年になると思う。

2015年をふり返ると、日本は中国から敵視される度合いが一段と高くなったことがわかる。9月3日の北京での「抗日戦争勝利70周年記念」の式典が象徴したように、中国共産党指導部は第二次世界大戦での日本と現代の日本とを重ね合わせて標的とする反日の姿勢を鮮明にした。中国は欧米諸国と連帯してファシズムの日本を打倒したという宣伝である。

その背後にはいまの日本を世界の悪者にしておこうという戦略意図がにじんでいた。過去の「歴史」を利用して、現在の日本を貶めて、アメリカとの同盟の絆を弱め、国際的にも孤立させようというわけだ。

国際的な舞台での中国の日本敵視の態度は9月の国連総会での習近平国家主席の演説でも明白だった。主要国の首脳の国連演説はグローバルな課題を高い次元で語るのが定石なのだが、今回の習主席の演説は「第二次大戦でのファシズム勢力」を中国がアメリカなどとともに打破したことを強調していた。明らかに過去の日本をファシズム勢力とみなして対日戦争を喧伝し、現在の日本への敵視にすり合わせていくという非常に異様な演説だった。

イギリスやアメリカなど世界の主要国家に駐在する中国大使たちも声をそろえて日本を糾弾した。地元メディアを使っての日本非難が多かった。2015年の中頃の話である。明らかに中国当局の最高中枢から発せられた反日の指令だった。イギリス駐在の中国大使は英紙への投稿で安倍晋三首相を映画『ハリー・ポッタ―』の悪魔役ヴォルデモートになぞらえたほどだった。国連駐在の中国代表たちも日本が「再度の侵略」や「核兵器や長距離ミサイルの開発」の危険を国連総会などで糾弾した。

そうしたとげとげしい対日意図を実証するように中国共産党最高部は2014年に「抗日」記念の3日を国家的行事に指定していた。7月7日の盧溝橋事件による日中戦争の開始、9月3日の日本の降伏文書調印による中国側の勝利、そして12月13日の日本軍による南京攻略の際の「虐殺」追悼という3つの抗日記念である。戦後70年も過ぎたこの段階で日本の過去の「侵略」や「残虐」を国家の最高レベルの記念行事として毎年、実行していくというのだ。この姿勢が反日でなくて、なんなのだろう。

中国の日本に対する敵意は尖閣諸島への軍事がらみの攻勢でも明白となった。2015年の年間を通じて、中国の武装公艦の日本領海侵入は毎月平均9回、中国軍機の尖閣領空への異様接近は毎日平均1回強という威嚇のエスカレートだった。

しかも中国当局はアメリカ国内では中国系政治組織の「世界抗日戦争史実維護連合会」を使って、慰安婦や南京事件で現在の日本を叩こうとしている。アメリカ各地に慰安婦の碑や像を建て、州議会、市議会で日本非難の決議を採択させようとする。韓国系と連携してだが、真の主役は中国系なのだ。過去の日本を現在の日本に重ね合わせ、邪悪なイメージをアメリカ一般国民に向けて拡散しようというわけだ。その狙いは日米同盟の突き崩しである。

アメリカ側の識者たちは中国のこの種の日米同盟浸食工作を「サラミ作戦」と呼ぶ。サラミを薄く切るように、少しずつ日米両国間の信頼や信用を削っていく作戦だというわけだ。中国が東アジアの覇権を目指すうえで、日本のいまのあり方も、日米同盟の存在も邪魔なのである。そのために中国が日本を国際社会の悪者であるかのように描く戦略をイギリスの雑誌『エコノミスト』は「中国による日本の悪魔化」と表現した。

中国のこうした日本に対する敵視や威嚇の姿勢は2015年に本音としてあらわとなった。ちょうどこの時期、米中関係が悪化した。だから2016年は中国はますます日本の存在をアジアでのアメリカの最大の支えともみて、自国の長期的な拡張の障害として、骨抜きにしようとする工作を推進するだろう。その意味では2016年は中国の反日政策の「真実の時」を迎える年だろうと思う次第である。

 


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