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.経済,ビジネス  投稿日:2015/12/28

[遠藤功治]【ZMP上場前夜、自動運転元年 その3】~特集「2016年を占う!」自動車業界~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

−ジュネーブ条約と道路交通法改正の動き

自動運転の実現に当たって、大きな問題の一つが国内外数々の法規制の緩和であることは確か。ただ達成のためのプロセスは遅く、霞が関の抵抗勢力は強大、所詮はお役所仕事でなかなか変化の兆しは無い・・・と思ったら、意外にもあちらこちらで法整備変更の動きが出ています。

先の官民対話で、安倍政権が“白タク”の限定地区での容認を明確にしたこと、神奈川県選出の小泉進次郎衆院議員が、ZMPとDeNAが共同で進めるロボタクシ―に乗って横浜球場に現われ、道交法改正を約束するなど、最近規制改正への動きは急です。ここで最大のものは国際法のジュネーブ条約(そしてその後、改訂されたウィーン条約)、そして国内法では道路交通法の改正でしょう。つまり、時速10Km以上の速度で移動する自動車には、ドライバーが必要であるということ。つまり全く無人の自動運転車は、ジュネーブ条約に加盟している日本などでは、現実的に不可能である、ということ。道交法も全く同じで、自動車にはドライバーが必要と明記してあります。

ただ、ここに改正の動きが出てきている訳です。G7交通大臣会議がそれ。2015年10月、初めてのG7交通大臣会議がドイツのフランクフルトで開催されました。急速に、国・地域によってバラバラに進行している自動運転やITSなどを話し合う、初の国際会議です。ここで討論された内容に、先のジュネーブ条約の変更に関係するものがありました。即ち、移動する自動車の中に必要とされる“ドライバー”の定義です。

現在までは、ドライバーといえば当たり前の話で人間を指していましたが、将来はこのドライバーの定義を、“運転技術を持った人間、またはドライビングマシーン”に変更する、というもの。仮にこれが認められ、そしてそのドライビングマシーンが人間並み、ないしはそれ以上の運転技術を有すると認められれば、車の中にドライバーは必要無くなることになります。ジュネーブ条約の変更が認められれば、道交法の変更もOKとの判断になるかもしれません。ちなみにこのG7交通大臣会議、第2回目は2016年夏、軽井沢で開催の予定です。

−2020年、Robo Taxi始動、価格破壊の可能性も

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ZMPはDeNAと共同で、2015年5月にロボットタクシー株式会社を設立しました。近い将来に完全無人のタクシーを走らせるというもの。ZMPによれば、2017年から公道での実証実験を開始、2019年までにサービス内容など具体的な事業内容をまとめ、2020年から東京オリンピックに合わせ、約3,000台の完全無人タクシー―を東京中心に走らせる、ということです。

東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせ、戦略特区として、東京都内の首都高速にタクシー専用レーンを設定、オリンピック関連施設が集まる、台場・勝どき・有明・外苑・新宿などと主要な公共施設、例えば羽田空港や東京駅などを結ぶ、と言う計画で、一部一般道路にも専用レーンを設定する可能性も残っている模様です。この専用レーンは、2020年の段階では、完全無人タクシ―と従来通りの有人タクシーの、双方が利用可能となる模様です。

ZMPは現在、トヨタのプリウス(第2世代車)とエスティマをベースとした、完全自動運転車の公道実験を実施しています。愛知県は豊田市を中心にした地域、神奈川県では藤沢市を中心とした地域などで、無人運転車の試験を行い、多くのデータを収集、AIのdeep learningによる地図や障害物認識の精度向上などを通して、完全無人運転車の実績作りを進める計画です。

Google同様、ZMPは自動運転車の車自体の製造にはタッチしない方向です。車自体は現在のタクシー同様、自動車会社から調達、そこに当社開発のソフトや協力会社から供給される自動関連の機器を取りつけ、タクシー会社に販売するというもの。またそのタクシー会社自体を傘下に持つことで、アプリの開発・販売へ進む予定。既存の自動車に機器を取りつけるのは、街中の板金・修理工場などを利用する予定で、これ自体はそれほど難しい工程ではないでしょう。

例えば、トヨタからエスティマを約500万円で購入。従来車のため、ハンドルもアクセルペダルも仕入れ時は付いていますが、仕入れ後に全て取り外しても良いでしょう。そこに自動運転用ソフトやステレオカメラ、ミリ波レーダー、各種センサー類などを取りつけます。機器類合計で約500万円のコスト、つまりこの自動運転用エスティマは約1,000万円の価格となります。やや高い印象がありますが、実際はどうでしょうか。

タクシーの運用コストですが、従来のタクシーでは、その約70%が人件費です。勿論、500万円の自動運転機器のコストがかかりますが、5年償却と考えれば、1年間のコストは100万円です。東京都のタクシードライバーの平均年収を約400万円ほどと考えると、人件費400万円が全て消え、年間償却費100万円の機器に置き換わる、つまり、車輛本体価格以外のコストは4分の1に激減するということになります。

理論的には東京都のタクシー初乗り料金は、300円程度まで下がることが可能、まさに価格破壊をもたらすことになります。勿論、タクシー料金は原則認可制であり、かつ無人タクシー―の料金がここまで下がれば、既存のタクシー業界に激震が走ること必死、猛烈な反対運動が巻き起こるかもしれません。その一方で、タクシー運転手の平均年齢が65歳を超え、交通事故の頻度も高く、若者も就職したがらないという面を考えるに、将来の人口減少と交通事故減少の切り札になる可能性もあると考えます。

【ZMP上場前夜、自動運転元年 その4】~特集「2016年を占う!」自動車業界~ に続く。本シリーズ全4回。
【ZMP上場前夜、自動運転元年 その1】~特集「2016年を占う!」自動車業界~
【ZMP上場前夜、自動運転元年 その2】~特集「2016年を占う!」自動車業界~
も合わせてお読みください)

※トップ画像:©ZMP、ARJ
※文中画像:©ZMP、ARJ


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