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.国際  投稿日:2015/12/30

[古森義久]【日米同盟はさらに堅固になる】~特集「2016年を占う!」日米関係~


古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

日本の対外関係で最重要なのはやはりアメリカとの関係だろう。では日米関係は2016年にはどうなるのか。その予測は簡単に述べれば、日米関係の基盤となる安全保障面での絆、つまり日米同盟はさらに堅固になるということとなる。

私がふだん駐在するアメリカの首都ワシントンからみると、米側が日本を重視し、とくに日米同盟の効用に期待し、依存する度合いがこのところ高くなったことが明白である。

なぜそうなのか、少なくとも3つの理由がある。

第一は米中関係の悪化である。

オバマ政権は発足以来、中国への関与政策を続け、友好の手を差し伸べてきたが、この1年ほど、中国への批判や警戒をあらわにする強固な対中政策へと転換してきた。中国がアメリカ主導の国際秩序に入ることを事実上、拒み、国際規範を無視しての強硬な言動を取るからだった。南シナ海での海洋領有権の一方的な拡大やアメリカに対する激しいサイバー攻撃がその例証である。その結果、融和姿勢のオバマ政権もついに中国の軍事動向などへの反発を強くし、対決の構えをとるようになった。中国との軍事がらみの対立といえば、アジアでの主要同盟国の日本との安保の絆が重要となる。

第二はオバマ政権の外交全体での失態である。

オバマ政権は中東では後退に後退を重ねた。イスラム過激派テロ組織の「イスラム国」(IS)の暴力の跳梁もそのアメリカの弱腰がたぶんに原因となった。不安定な中東で長年、アメリカと近かったエジプトの親米政権の崩壊を座視し、同盟国に等しいイスラエルやサウジアラビアとの関係もすっかり冷却させてしまった。ヨーロッパではロシアのウクライナ侵略を放置した。中国への関与政策も挫折し、北朝鮮の核兵器開発も止められない。オバマ外交をこう見てくると、日米同盟の堅持はオバマ政権に残されたごく少数のプラス領域であることがわかる。せめて日米関係ぐらいは成功と呼べる状態に保ちたいと願うのが自然だろう。

第三はアメリカの大統領選挙での共和党候補たちの日米同盟重視の主張である。

共和党候補は合計13人が乱立し、ドナルド・トランプ候補の暴言が波紋を広げているが、その一方、どの候補もオバマ政権の対中政策を非難し、日本との同盟の絆の重要性を強調している。とくに共和党主流に近い上院議員のマルコ・ルビオ候補は尖閣諸島の領有権は日本に帰属すると明言し、中国の攻勢を非難して、日本との同盟の強化を説く。ジェブ・ブッシュ候補も同様にアメリカのアジア政策全体のなかでは日米同盟が最重要だとして、日本との関係の再強化を主張する。

オバマ政権も、民主党のヒラリー・クリントン候補も、共和党側のこうした日米同盟重視の声に影響されて、同じように日本との関係の堅固な保持を改めて唱えざるをえない状態に追い込まれているといえるのだ。

アメリカ側の以上の理由に加えて、日本側では平和安保法制関連法が成立し、集団的自衛権の一部行使が可能になったことも日米同盟の強化には有益となる。アメリカ側では長年、日本がアメリカに防衛されながら、自国の領土や領海の一歩外でも、日本のために行動する米軍の有事の支援ができないという日米同盟の片務性には超党派の不満が表明されてきたからだ。

こうした動きをみてくると、2016年には日米同盟を堅固にし、強化するさまざまな措置が日米両国からお互いに提起され、推進されていく見通しがきわめて強いのである。


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