北・核ミサイル実験は危険 米・前国務次官語る
Japan In-depth 編集部 (Mika)
2011年にオバマ政権の国務次官に就任し、2008年には大統領選挙でヒラリー・クリントンの顧問役も務めた、アメリカ元国務次官のウェンディ・シャーマンが来日し、2月17日、日本記者クラブで記者会見を開いた。
冒頭のスピーチでは、日米関係の更なる強化と安倍政権の今日までの成果を評価し、世界のGDPの30%を占める日米両国のTPP参加に今後の期待を寄せた。
また、アジア太平洋地域でアメリカにとって最も強固な同盟国である日韓のセンシティブな慰安婦問題について、「安倍首相と岸田外務大臣の努力により、ようやく韓国との協定を成し遂げたことを感嘆する」と述べた。
後半の質疑応答では、北朝鮮ミサイル問題やイランとの核交渉などに質問が集中した。
イランとの交渉についてシャーマン氏は、「経済制裁をかけられたからこそ最終的にイランが交渉についた。しかし、核プログラムは着々と続けられていたのが実情だ。制裁がインセンティブとなって相手を交渉のテーブルにつかせることは出来たが、制裁だけでは不十分だったということだ。」と述べた。
また、オバマ大統領は、イランとの交渉は前提としてなるべく外交を優先手段とし、万が一すべての策が失敗した最終手段として、「軍事的な措置を取ることが出来るんだということを十分知らしめた上でやってきた」と合意に至るまでのアメリカ側の交渉姿勢を説明した。
一方、北朝鮮の脅威については、アメリカは北朝鮮の挑発には常に冷静に対応し、今後も状況に応じて行動する姿勢であるとシャーマン氏は強調すると共に、日米韓が強調していくことが重要だとの認識を示した。
又、今回の打ち上げで、北朝鮮がアメリカ大陸にまで到達する大陸間弾道ミサイルの開発に成功したとみるか、との質問に対しては、「現在分析中であるが、成功するかしないかはあまり関係ない。(実験を)やることによって北朝鮮の知識やノウハウが増えるわけで、この事態だけでも危険だ。今後アメリカは日本と多層防御(layered defense)について話を続ける。また、ミサイル防衛についても韓国と交渉は続く。」と述べた。
ちょうど16日、安倍首相はハリス米太平洋軍司令官と首相官邸にて北朝鮮問題や東シナ海及び南シナ海情勢について会談している。安倍首相は、「北朝鮮問題に対処する上で日米韓の安全保障協力を一層進めることが重要である旨述べた」と話し、これに対し、ハリス司令官は、「平和安全法制及び、防衛協力指針(新ガイドライン)の策定により強化された日米同盟の下で両国の緊密な連携が行われたことを評価している」と述べた。
オバマ政権の外交姿勢が、中国の南沙諸島への進出や、北朝鮮のミサイル開発を許した、との見方は強い。米韓両国は、THAAD(Terminal High Altitude Area Defense missile : 終末高高度防衛ミサイル)配備の交渉を始めるが、それだけで北朝鮮は核ミサイル開発を止めないと思われる。そうした中、北朝鮮に大きな影響力を持つ中国を、対北朝鮮制裁に向けどう動かすかが鍵となるが、シャーマン氏は日米韓が、中国と粛々と対話を続けていく、と述べるにとどまった。
現在アメリカは大統領選の真っただ中であり、対中、対北朝鮮外交は次期政権にゆだねられる。それまでの間、日本政府は単に対北朝鮮経済制裁を強めるだけでなく、日米韓の関係強化を前提としながら、東アジアの安全保障にどう関わっていくのか、議論を深めていく必要があろう。