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.政治  投稿日:2016/3/10

政府与党のメディア対応に疑問 弁護士落合洋司氏

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                                                                                                                                 Japan In-depth 編集部 (Aya)

弁護士の落合洋司氏を迎え、連日国会で議論されている「報道の自由」について聞いた。特に直接的な干渉があったのは2014年11月。衆議院選挙直前に自民党からキー局へ注意を促す文書が出された。出演者の発言回数・時間、ゲストの選定、テーマについての意見、テレビ局に対し、街頭インタビューや資料映像の意見について公平中立な報道を要求する内容だった。

安倍編集長は、「ここに書いてあることは、放送法の趣旨に則ったことで、いわずもがな。よほど党側も神経質になっていたのだろうが、ここまですることはない。」と感想を述べた。落合氏は、「法的には、これが問題だとは言えないが、何故あえてこの時期に、政権党である自民党がわざわざ紙にして投げたのか。ここは問題になってくる。」と述べ、報道に対する圧力と取られても仕方がない、との見方を示した。

又、NHKのクローズアップ現代のやらせ疑惑や、テレビ朝日の報道ステーションのコメンテーター古賀氏降板問題を巡って、自民党の情報通信戦略調査会に、テレビ局幹部が任意で呼び出されたこともあった。これに対し、落合氏は「参考にしたいということで関係者を呼んで調べるのは特別なことではない。法的な拘束力も特段ない。」と述べる一方、「監督官庁である総務省がきちんと必要な権威を行使するということが、第一義的にある。なぜわざわざ政権党が呼ぶのかという疑問は発生する。」と指摘した。安倍編集長も、「政治側も、自分たちの矜持を持って対応しないと、メディア側から圧力と言われる。」とコメントした。

今年4月の番組改編での各局のキャスターの降板に対し、政府の介入を指摘する論調もある。テレビ朝日「報道ステーション」の古館伊知郎キャスター、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスター、TBS「News23」の岸井成格キャスターなど、夜のニュースの顔と言われる人たちが降板する。落合氏は、「圧力がかかったからキャスター降板になったとは思っていない。」と述べ、「圧力と言うより、(テレビ局が)世の中の流れを見ながら、経済的なことも考えながら交代させるのだろう。圧力がかかったと決めつけるのはどうなのか。」と批判した。

岸井キャスターは、2015年11月の「放送法遵守を求める視聴者の会」による意見広告でも名指しで批判された。安倍編集長は、これについて「キャスターがそこまで中立性を欠いて発言していいのかという問題提起になったと思う。」と述べ、キャスターが自分の意見をことさらに述べるのは日本のニュース番組独特のものだと述べた。

テレビ朝日系列の人気報道番組だった、久米宏氏のニュースステーションでは、彼が直接意見を口にしなくても、雰囲気をかもしだすことによって政権を批判したり、視聴者の意見を誘導したりする部分があったと安倍編集長は指摘。「本当のニュースアンカーは、公平公正な立場で、そういうことはコメンテーターや記者に降ってバランスをとる。日本の場合はニュースアンカーが自分の意見を言いすぎるという印象を持っている。」と話した。落合氏は、「そのあたりは色々なスタイルがある。」とした上で、「バランスは重要。(ただ)意見を言わないと視聴者は物足りないかもしれない。」と話した。

高市総務大臣は、2月8日の予算委員会の中で、「放送法の規定を遵守しない場合は行政指導を行う場合もある。」「改善されない場合は、何の対応もしないと約束するわけにはいかない。」等の発言をした。これについて野党などは、メディアへの圧力だと批判した。

放送法は、「政治的に公平であること」を求めているが、これは法的義務なのか。それとも倫理規範なのか。落合氏は、「学説では倫理規範。こういう風にあるべきだと倫理を定めたものにすぎないという考えが有力。」と述べた上で、「私自身の考えだけでは、単なる倫理ではなく、規範性は否定できない。その点においては総務省の見解に汲みしている。」と述べた。その理由には、公共の電波で不公平なことが行われていて、何もできないのはおかしい、ということがある。規範性はあると考えるのが自然だという考えを示した。

放送法の中で1条に表現の自由の確保が明記されている。上記の点とコンフリクトがないように解釈しなければならないが、表現の自由は最大限確保されるが、電波法によると、総務大臣は停波の権利を持っている。「総務省の解釈としては、電波法に照らして、停波を命じることのできる余地がある。これは最近になって言い始めたことではなく、以前から言われていたこと。」と落合氏は解説した。

一方で、停波は民間側から訴えられるリスクもあるので、ハードルが高い。停波に至るまでの間に放送法に明らかに違反している、繰り返し行政指導しても直らない、ということがあって初めて停波ができる。「停波が起こる可能性は著しく低い。」と落合氏は述べ、停波の可能性について批判する声には、「そのようなことを言うこと自体が、表現の自由に対しての圧力。健全な批判をしていかなくてはいけないと思う。」と述べた。

民主党の山尾志桜里議員が、安倍首相と高市大臣に対し、「表現の自由の優越的地位とは何か」「何故精神的自由は経済的自由に優先するのか」という質問を投げかけ、安倍首相が答えに窮するという場面があった。表現の自由の優越的地位に関して、「我々が憲法を学ぶ上では重要かつ必須なところ。」と落合氏は述べ、表現の自由が否定されると民主主義が回復困難になってしまうメカニズムを説明した。

安倍編集長は、「高市さんが言ってくれたことによって、みんなが報道の自由や表現の自由に関心をもってくれたという意味で悪くなかった。」と述べ、国民のメディアに対する関心がさらに高まることに期待を示した。落合氏は、「政権党なり権力がそういうことに圧力をかけていくことに警戒感を持たなければいけないが、問題をそこにばかり持っていくというのはバランスを欠いている。」と指摘し、国民や野党に冷静な判断を呼び掛けた。

 (この記事は、ニコ生【Japan Indepthチャンネル 2016年2月24日放送 を要約したものです)

 


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