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.国際  投稿日:2016/3/22

混迷の中東情勢 米国務長官露訪問


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2016年3月21日-27日)」

今週のコラムは沖縄の那覇空港内で書いている。19日から3日間、沖縄本島中部のブセナで開かれたG1(ジーワン)サミットという興味深い会合に参加したのだ。サミットといっても、G7のような国際会議ではなく、参加者はあくまで日本人が中心。

日本国内の「政治・経済・ビジネス・科学技術・文化など様々な分野の第一線で活躍する同世代異業種の仲間が、互いに学び、立場を超えて議論し、・・・リーダーとして参加者自身も周囲も成長していくこと」を趣旨とする非公式の集まりだ。

今回G1サミットの様々な会合に参加し、(失礼ながら)日本の若手政治家、経営者も捨てたものではないと実感した。悲しいかな、筆者自身は参加者の中では「長老組」の一人になり果てていたのだが・・・。

これらエネルギー溢れる日本の若い(といっても4-50代中心だが)世代の時代が来るのはいつのことだろうか。参加した米国人の友人が、「日本は年寄りが頑張っているので、日本の若者も大変だなぁ」と述べていたのが印象に残った。

一方、筆者が沖縄でこのような知的贅沢を堪能している間も、世界は大きく動いている。筆者が一番気になるのはやはり中東情勢だ。最近あの地域では良いニュースを聞いたことがないのだから。

〇中東・アフリカ

先週末イスタンブールの繁華街でまた自爆攻撃が発生した。トルコ内相は自爆攻撃実行犯が過激派組織「イスラム国」(IS)のメンバーであるトルコ人男性だと発表。トルコ国内でこの種のテロは今年既に4度目。イスラエル政府は死亡者の内3人が同国民であることを確認し、トルコ当局は残る1人がイラン人だと発表しているそうだ。

何と奇妙な組み合わせか。トルコでのISテロの犠牲者がユダヤ系とペルシャ系とは。果たして偶然なのか。今のトルコ情勢は(トルコ帝国再興の)「生みの苦しみ」か、それとも(オスマン朝の)「最終崩壊の始まり」なのか、後世の歴史家はどう書くのだろう。

○アメリカ両大陸

今週、大統領選関連コメントは小休止。21日からオバマ大統領がキューバを訪問する。一体この訪問のどこが歴史的偉業なのか、理解に苦しむ。ハバナに行く時間があるぐらいなら、シリアを何とかしてほしいと思う。

トルコの混乱も「シリアの内戦」と「イラクの混乱」を抜きには語れない。そのシリア内戦を事実上黙認したのは、他ならぬオバマ政権ではなかったのか。22日に米国務長官はシリア問題でモスクワを訪問するというが、一体どうなることやら。 

○欧州・ロシア

欧州はイースター(今年は3月27日)が近づき、仕事どころではない。ちなみにこのイースター、日本では一般に「復活祭」と呼ばれるが、日付は毎年変わる。イースターは「春分の日の後の最初の満月から数えて最初の日曜日」と決まっているからだ。

グレゴリオ暦を採用する西方教会では2016年は3月27日、ユリウス暦の東方教会では2016年は5月1日となる。だからだろうか、この聖なる週にケリー長官がロシアに行く。これ自体に違和感を感じる。やはり、今の米露関係はロシアのペースのようだ。

〇東アジア・大洋州

このところ中国で国有企業などで賃金未払いに抗議するデモが相次いでいる。最近も陝西省で国有石炭企業従業員200人が給料数か月分の支払いを求めデモを行ったのに対し、警察が参加者を殴るなど力で弾圧しているという。

相変わらずだが、最近は映像や写真が「ウェイボー」に投稿される。ネット上で政府批判が拡大するか否かはちょっと気になる。それにしても、国有石炭企業の経営はそれほど酷いのか。こんな状態で業界再編や構造改革など本当にできるのだろうか。

〇インド亜大陸

特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。


この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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