オバマ広島来訪はまだ未知数
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2016年4月11日-17日)
10日からG7外相会合が広島市で開かれている。11日、ケリー米国務長官は記者会見で、「オバマ大統領にも広島に来ることが重要だと伝えたい」と述べたそうだ。しかし、現職の米大統領が伊勢志摩サミットに合わせて被爆地広島を訪問するか否かはまだ未知数だと思う。少なくとも過剰な期待は禁物だ。
ケリー長官は米国の現職国務長官として初めて平和記念公園を訪れたことを「感激している。誇りに思う」とも述べたそうだ。一方、オバマ広島訪問については「全ての人が広島に来るべきだと思う。だがオバマ氏がいつ訪問できるかは分からない」と述べるに止まった。
今のところ結構な話ではあるが、全く問題がない訳ではない。米国内で微妙となり得るこの種の政治決断は、本当はリベラル派ではなく、保守派の重鎮が下した方が米国内は纏まりやすいからだ。いずれにせよ、ケリー長官が米国の保守派を如何に説得できるかがカギとなるだろう。
〇欧州・ロシア
12-13日に伊外相がテヘランを訪問する。このところ、欧州諸国のテヘラン詣でが頻繁になっているが、米国ではトランプ旋風とサンダース善戦もあり、対イラン核合意の懸念や問題点など誰も言わなくなった。正にイランの思う壺とは思うが、米国に他に選択肢は少ない。
〇東アジア・大洋州
10日から12日まで中国黒竜江省の共産党書記が韓国を訪問する。韓国が北朝鮮崩壊と半島統一を念頭に、中国の東北地域(旧満州)との関係深化を狙っていることは間違いなかろうが、そこは中国側も似たようなもの。
中国は北朝鮮の突然の崩壊など望んでいないだろうが、経済的に苦しい東北三省は韓国との経済関係強化に自らの未来を見ているのだろうか。これも狐と狸の化かし合いかもしれないが・・・。
その韓国では13日に総選挙がある。政権与党は内紛で劣勢ともいわれるが、野党もあまり纏まっていないらしい。韓国の内政が安定すること、これこそが日本の国益なのだが、現実はどうもうまくいかないようだ。
〇中東・アフリカ
インドのエネルギー大臣がイラン訪問後、11日からUAEを訪問する。インドのエネルギー戦略の中にイランはしっかりと組み込まれているようだ。16-17日にはインド外相がテヘランを訪問し合同委員会を開く。更に、そのインドには10日から米国防長官が訪問する。
〇アメリカ両大陸
米大統領選は一進一退だが、民主党のヒラリー優位は変わらずとも、彼女の苦戦は続きそうだ。これに対し、共和党の星雲状態は全く先が読めない。19日のNY予備選でトランプが過半数票を取れば95人の代議員を総取りでき、代議員数過半数が見えてくる。逆に50%未満なら、党大会でのトランプの指名は再び遠のき、団子レースは続くだろう。どちらにしても、共和党に良いニュースはない。
〇インド亜大陸
18日にモスクワでインド、中国、ロシアの三カ国外相会議が開かれる。インドは相変わらず強かである。今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表
1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。
2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。
2006年立命館大学客員教授。
2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。
2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)
言語:英語、中国語、アラビア語。
特技:サックス、ベースギター。
趣味:バンド活動。
各種メディアで評論活動。