都知事選候補者政策評価 鳥越俊太郎候補 東京都長期ビジョンを読み解く!【特別編】
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
今回から候補者それぞれの政策を客観的に診断していきたい。候補者の皆さんは都民へのわかりやすさを重視していて、専門家から見ると低レベルに感じるが、短期間のため調査や調整などの準備に限界があった中、頑張られたのだと思われる。
政策評価の専門家としての政策の観点から主要候補者の政策を見ていきたいと思う。なので「良い」「悪い」のような価値判断はいたしません。(ただし、異論反論オブジェクション是非大歓迎。それこそが民主主義社会には大事ですから)。「なんか偉そう」と感じるかもしれませんし、気分を害するかもしれませんが、その点はご容赦いただきたい。
1 鳥越氏の政策(HP)
2 特徴
「あなたに都政を取り戻す」。舛添氏の私物化を考えると素晴らしいキャッチフレーズだ。心優しいフレーズの政策が並んでいるのが特徴。「都民の不安を解消します」として、医療・介護子育て、貧困などリベラルな政策が並んでいる。「子育て・介護に優先的に予算を配分します」と優先順位を明確にしている。
3 疑問点
(1)「ムダをなくしつつも」
東京五輪について、現在のHPに更新される前は「五輪経費の徹底したコスト縮減を行います」だったのですが・・・なんらかの形が働いたのかもしれません。東京五輪のコストはどの候補者も言っております。ムダはどれくらい?そして、どのようにしてなくすのでしょうか?
根拠がないと判断できませんし、公約が果たされたのかが後々検証できません。現在の既得権益の構造にどのようにメスを入れるのでしょうか?そもそもどこにムダやコスト削減余地があるのでしょうか?
「徹底した」見直しのための積算を今くらいから始めないと、既得権益が多数いる世界に対しての徹底した「コスト削減」は難しいと思います。
(2)「東京の可能性や魅力を世界にアピールできる体制をつくります」
東京は世界的都市と言えますし、以下のような指摘もすでに多数あります。
【参考】CNN「東京が世界一魅力的な都市である50の理由」
行政の役割として、これ以上にお金をかけてやることでしょうか。アピールされる側の立場に立ってみてください。これだけ東京の可能性や魅力があふれている中、どう反応するでしょうか?しかも、行政主導のアピール・・・食傷気味、お腹いっぱいという言葉がお腹から出てきそうです。
ちなみに今から作らなくてももうすでにあるのですが・・・(知らないのかな?)。
【参考】東京ブランドキャンペーン
(3)「住宅耐震化率83.8%から100%」
東京都耐震改修促進計画において、「住宅については、平成 27 年度までに耐震化率を 90%以上、平成 32 年度までに 95%以上とすることを目標とする」(P13)と記載してあります。
耐震化のコストは結構かかります。耐震改修工事は以下が示すには100万円〜150万円。各自治体には補助金があるそうでコストが削減する一方で、リフォーム工事などでコストが増大してしまいます。
また100%というのは、個人の自由を束縛しますね。「そんなお金はない。うちは古くてもいい」という方の意見はどうなるのでしょうか。そういった方をどう説得するのでしょうか?まさか全額補助?そうするとお金はまたかかりますね。
(5)「正社員化を促進する企業を支援します」
「促進」とはどういった条件が揃えばいいのでしょうか?支援するやり方と程度は?と疑問が湧いてきます。すでに「東京都正規雇用転換促進助成金」というものがあるのですが、それとの違いは?
(6)「非核都市宣言を提案します」
宣言した効果はどういったものがあるのでしょうか?国政に歯向かえるのでしょうかね?(東京は独立するのでしょうか?)。ちなみに「非核宣言自治体」には東京都の17自治体が既に入っているのですが・・・。
4 評価
評価結果とその理由は以下です。☆は3段階評価です。
上記あくまで私の意見です。前回書いたように候補者を選択する基準は沢山ありますので、その中から政策評価の視点でピックアップしたということです。ご注意ください。
繰り返しますが、特定個人を応援する目的で記載していません。判断する材料を提供することが目的です。その判断は読者に任せます。
メディアの方は是非質問として使ってください。
*トップ写真:©西村健
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。