[宮家邦彦]外交・安保カレンダー(2014年1月27日-2月2日)
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
今週は米国東部時間の28日にオバマ大統領がいわゆる「一般教書」演説を行う。この「一般教書」なる語、何時誰が使い始めたかは知らないが、実に分かりにくい訳語だ。英語ではState of the Union Address、直訳すれば要するに「国勢演説」であり、強いて言えば、日本の「施政方針演説」に近いのだろう。
但し、米国の一般教書演説は毎年1月の第4火曜日に米議会の上下両院議員に対し一回のみ行われるのに対し、通常国会冒頭の施政方針演説は同一内容を衆参両院で別々に二回行う。当然、同一内容だから、読み違いすら許されない。ちなみに、臨時国会などでの演説は所信表明演説であり、施政方針演説とは区別されている。
このように一般教書演説は米国大統領が連邦議会に対して行う最重要演説のひとつだが、このところオバマ政権と議会との関係は冷え切っている。内容的にはオバマケアと呼ばれる医療保険制度改革法や移民制度など、内政上の論点が中心となるだろうが、外交面ではTPPなどに言及があるかもしれない。
米国といえば、先週中国で人権活動家に下された懲役4年の実刑判決に対し、国務省は「深く失望している」との声明を発表したそうだ。何故、安倍首相の靖国神社参拝は単なる「失望」で、今回の実刑判決が「深い失望」なのだろうか。オバマ政権第二期の価値判断の基準を示しているようで、ちょっと気になる。
ジュネーブで開かれていたシリア和平会議は、予想通り、結果が出そうもない。国連では中東というとブラヒミ特使が必ず出てくる。筆者がイラクに在勤していた2003-4年にも、ブラヒミ特使によるイラク諸勢力間の仲介努力が行われており、筆者もよく話を聞きに行ったものだ。
しかし、申し訳ないが、「ブラヒミ仲介」はあまり芳しくない。人柄は抜群に良いのだが、イラクといい、アフガニスタンといい、実はあまり成果が上がっていないのだ。あのブラヒミがやっても駄目なら仕方ないのか、それとも元々誰が仲介しても、米露等主要プレーヤー間の合意がない以上、成果を期待すること自体間違っているのか。
そうこうしている内に、案の定、ブラヒミ特使が辞任したというニュースがジュネーブから飛び込んできた。ああ、やはり今回も成果なしだったようだ。だが、ブラヒミ特使の限界は、国連の限界でもある。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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