[安倍宏行]都知事選が低投票率となった5つの要因〜「自分に政治は関係ない」と諦めても、何も変わらない。私達の足元から政治を変えて行く流れが重要
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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46.14%。都知事選史上3番目に低い投票率となった。前回の62.6%と比べ、16.46ポイントも低い数字だ。東京都の有権者数はおよそ1068万人、投票した人が493万人、棄権した人は575万人ということになる。2人に1人も投票していないのだ。この原因を大雪のせいにする見方もあるが私にはそうは思えない。投票日当日は朝から東京は晴れだった。確かに足元は悪かったが、午後にはほとんど雪は解け、アイスバーンも無い道が多かった。
盛り上がらなかった理由を幾つか上げてみよう。
- 3年間に3回目の選挙、折角選んでも直ぐ辞めてしまう政治家への失望感・不信感から、選挙疲れといおうか、愛想が尽きたといおうか、そもそも選挙に行く気がしなかった。
- 魅力的な候補者がいなかった。高齢者ばかりで、35歳の家入一真候補以外、目新しい候補者も、女性の候補者もいなかった。
- 当初から舛添候補が優勢と伝えられ、それなら自分が行かなくてもいいだろう、と思う人が多かった。
- 細川候補の謳った「脱原発」キャンペーンは都民には響かなかった。かつ、宇都宮候補と反舛添票を分け合ってしまった。
- 家入候補の若者への呼び掛けも思ったほど浸透しなかった。
といったところだろうか。
特に【4.細川候補の謳った「脱原発」キャンペーンは都民には響かなかった。かつ、宇都宮候補と反舛添票を分け合ってしまった】について、筆者は、ニコ生【Japan indepth チャンネル】と、原宿地域FMのsoraxniwa ドロップアウト!等を選挙期間中に放送し、視聴者やゲストに意見を求めたところ、意外にも「脱原発」争点化にクールな人が多いな、という印象をかなり早い段階から受けていた。
1月29日(水)放送したニコ生で行ったアンケート結果では、「脱原発」は都知事選の争点にすべきではないとする人が、ほぼ4割もいた。もちろん、争点だとする人も4割いたので拮抗してはいたが、その後の1週間でそうした空気が広がった気がする。意外と都民は冷静なのだ。
では、何が東京都の課題なのか、と聞くと、
- 防災防犯
- 子育てなどの少子化対策
- 福祉(高齢者対策)
- 景気対策(中小企業活性化など)
などに高い数字が集まった。特に防災については関心が高かった。首都直下に対する耐震化、災害発生後の帰宅難民対策、生活インフラ麻痺時の生活維持対策を早急に進める必要があろう。同時に、オリンピックを2020年に控え、都心のバリアフリー化、通勤通学にロスの無い、最適な交通システムの構築が急務である。
渋滞はエネルギーや労働時間をロスするという観点からも、人々にストレスを与えるという観点からも、大きな社会的損失である。新都知事は、「東京を世界一の街にする」と言い切ったのだから、まずは都民に利便性の高く、安心・安全な街づくりに邁進してもらいたい。
そして、家入氏には、今回起したムーブメントを一過性のものに終わらせてほしくない。8万票超は立派な数字だと思う。多くの人から都民の生活に密着した政策をネットで集めた。それらの政策をどう都政に生かしていくか、新たな仕組みを考え、実行に移してもらいたい。その為には多くの人の参加が必要だ。政治は関係ない、とニヒリズムを決めたところで、何も変わらない。いやむしろ若者にとっては不利な政策がまかり通る可能性だってある。
自分たちの頭で考えた政策をどう13兆円の予算を持つ東京都という巨大行政機構に実施させるのか。それはネットの力もさることながら、一人一人の若者の(もしくはそれを応援し後押しする人々の)小さな一歩から始まる。来年は統一地方選だってある。私達の足元から政治を変えて行く流れはもう止まらない、と感じている。
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