[水野ゆうき]地方議会選挙と『AKB48総選挙』の意外な共通点〜「○○さんは絶対大丈夫だから、今回は他に投票する」という本質的ではないロジックで有力候補も落選する。
水野友貴(千葉県我孫子市議会議員 )
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都知事選が近づいてきた。大都市の選挙は時の風に左右されることが多い。一方、我々地方議員の選挙はいわゆる「どぶ板選挙」である。地域に密着し、どれだけ多くの市民と触れ合い、人脈を作り上げることができるかということに終始する。
選挙には魔物が住んでいる。これはAKB48の総選挙と似通っている部分がある。あるAKB48のメンバーがスピーチで話した内容が印象深かった。
「○○ちゃんは絶対大丈夫だから今回は他の子に投票するよ、と言われ、とても不安だった」
といった主旨だった。これは、我々地方選挙の世界でも全く同じなのである。国政や首長選挙は一人を選ぶため、こういったことは起きない。一方で何十人も当選する地方選では「AKB総選挙」と同じ現象が起きるのだ。実際に前回の市議選では、私にも同様のことが発生し、それに悩まされた。
私の住む我孫子市では男性候補者が圧倒的に多い。そのため、私が立候補時に持っていた「20代・女性」という表面的なスペックだけを見て、
- 「水野さんは大丈夫だから自分に入れてくれ」
- 「水野さんは余裕みたいだから今回は○○候補に投票します」
といった声を随分と聞いた。もちろん、「20代・女性」というだけで当選できるほど地方選挙は甘いものではない。かねてから取材等で答えている通り、無所属で新人、挙句の果てには小学校と中学校を海外で過ごしている私は固定票というものがない。そのため、家族の4票だけかもしれないという大きな不安を抱えているにも関わらず、こういった声に市民が反応してしまう。実はこの手法で固いといわれていた候補者が落選してしまうこともあるのだ。
地方では議員の票数というものが大きく反映すると言われている。我孫子市でいえばボーダーは1200票であるが、5000票でトップ当選した候補者の影響力はやはり大きい。私は初当選以降、とにかく市政のために、健全で新しい議会を作り上げるために日々睡眠時間を減らしながら働いているわけだが、この活動が必ずしも選挙の際に数字に出るとは限らない。
普段、何もしていなくても選挙の時だけ効率良く(調子良く?)挨拶回りをしているような候補者に、上記の手法で大敗してしまうかもしれないのだ。これが選挙の恐ろしさである。だからこそ、有権者にはその人の活動を見て投票行動に移してもらいたい。
候補者の実績や活動への評価や、思想・信条への共感として投票するのではなく、「汗を流していない」「活動をしていない」、当選だけを目的としている人に、あなたは自分の貴重な1票を投票しますか? それが本当に自分の住んでいる市のために、自分のためになりますか? 今一度、重要な自分の持っている1票のことを考えてもらいたい。
来年、我孫子市では市長選、県議選、市議選がある。有権者がしっかりと候補者の活動や内容を見極めて投票することが市政の発展に繋がるということを、自分のこととして捉えてもらいたい。
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