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スポーツ  投稿日:2017/1/31

読後感:「Life Shift」と「ピダハン」


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

 

ライフシフト読了です。

lifeshift

要点をまとめてみます。

・人間の寿命は伸び続けていて、現38歳の私のような世代の寿命は90歳を越える可能性が高い。ましてやうちの息子の寿命は100歳を越える可能性もある。

人生70年時代には人生を3ステージ制(学校期間、就労期間、引退期間)でよかったが、100年時代には成り立たない可能性が高い。その場合、5ステージ制(年齢にこだわらず学び直したり、転職したりする)などで、人生で何度か切り替えを経験する必要がある。

・人生の資産を、有形資産(お金など)、無形資産(技能など)、変化資産(多様な人脈など)でわけ、それらを適時に配分し直していくことが重要。特に無形資産をいかにして築くか。

・変化が激しいので、スキルが陳腐化するのが早い。同じスキルで2,30年生きるのは難しい。適度に自分の状況を客観視し、学び直したり、より自分にあった状況を作り直すべき。

・マネジメント層、経営層はおそらく今後も変わらずハードな環境になる。自分なりに、自分のライフスタイルと何を高めたいかを考えながら、選ぶべき。将来は自ら望んでマネジメント層から降りるという選択もでてくる。

・長生きするんでよう考えなはれ。

 

読後感ですが、だいたいみんな想定していることなので目新しいことはそんなにありませんが、全体を一つ一つ丁寧に説明してあるのでとてもわかりやすいです。特に日本は象徴的な国で、少子高齢化を迎えますし、世界中の人と働けるようにしておかないとなかなか厳しいなと弊社の行く末に関しても考えさせられました。

個人的に刺さったのは、知的な刺激を求める人は、同じような人を求める傾向にあり、そういうホットスポットが地球上にいくつかできるだろうという点です。今オフィスが東京にあるのですが、東京の一角がそんな風に世界の面白い人の集積場みたいになるといいなと思いました。人間を理解するならあそこだよねという風に。

長生きはいいことだ。と思えるような社会づくりをしていきたいです。

 

ピダハン】

3年ぐらい前かな、読んだ本です。

pidahan

もう内容はずいぶん忘れてしまったのですが、とある言語学者がアマゾンの奥地にすむピダハンとい部族の言語を理解しようとするところから物語は始まります。なんとこの部族は右や左に対応する言語がありません。また、経験していないことも語りません。実際には精霊のことなどについて語るわけですが、それはあくまで経験したこととして語るわけです。数の概念もありませんし、神様もいません。

この本を読むと、言語と文化が切り離せないということを実感します。ピダハンには心配にあたる言語がありません。じゃあ心配した時はどうするんだと思われるかもしれませんが、この本によれば本当に心配しないのだそうです。当然疫病や、様々な危険と隣り合わせなわけなので、危なくないわけではないのですが、考えてもしょうがないことを考えないという点で、心配がないのだそうです。

よくある、文明は人を不幸せにしたのではないかという話ではなく、考えたことを言語にしているように見えて、実は言語によって考えを規定されているというアイデアをこの本を読んでいると感じます。言える範囲でしか考えられないのではないでしょうか。

さて、アマゾンのそのほかの部族もそうらしいのですが、ピダハンにも赤ちゃん言葉がありません。それは人は対等だからという価値観に根付いているそうです。一生懸命対象物を頭で浮かべあれこれと私たちは考えるわけですが、その根本にある身体や、言語体系がいかに思考に影響を与えているかを時々は考えてみてもいいのかもしれません。


この記事を書いた人
為末大スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役

1978年5月3日、広島県生まれ。『侍ハードラー』の異名で知られ、未だに破られていない男子400mハードルの日本 記録保持者2005年ヘルシンキ世界選手権で初めて日本人が世界大会トラック種目 で2度メダルを獲得するという快挙を達成。オリンピックはシドニー、アテネ、北京の3 大会に出場。2010年、アスリートの社会的自立を支援する「一般社団法人アスリート・ソサエティ」 を設立。現在、代表理事を務めている。さらに、2011年、地元広島で自身のランニン グクラブ「CHASKI(チャスキ)」を立ち上げ、子どもたちに運動と学習能力をアップす る陸上教室も開催している。また、東日本大震災発生直後、自身の公式サイトを通じ て「TEAM JAPAN」を立ち上げ、競技の枠を超えた多くのアスリートに参加を呼びか けるなど、幅広く活動している。 今後は「スポーツを通じて社会に貢献したい」と次なる目標に向かってスタートを切る。

為末大

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