共産党の公約分析 東京都長期ビジョンを読み解く!その52
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
【まとめ】
・共産党「らしさ」前面に。若者の最低賃金時給1,500円等。
・都政を超えて国政まで語る“情熱”を有権者はどう評価するか?
・必要性が疑問な事業リストも。
■共産党「らしさ」全開
今回は共産党の公約分析。「2017都議選の訴えと重点公約」というページに記載があるが、その後、各層ごと(若者、障がい者など)に政策を用意し、さらに「国民健康保険料値下げの緊急政策」などが追加されている。
特に、若者の願いにこたえる4つの「東京プロジェクト」として、
授業料負担の軽減
学生向け給付制奨学金創設
都立の首都大学東京の入学金や授業料等の引き下げ・減免制度や奨学金制度等の新設・拡充
最低賃金時給1,500円
などを提案している。さすがである。
また、「豊洲新市場の主な3つの施設の建設工事は、スーパーゼネコン3社を中心とする3つの企業グループが、それぞれ競争なしの「一者入札」で、落札率平均99.87%という高値で落札しています。」という問題意識、とても高い。
■情熱・熱さが有権者に伝わるか?
情熱というのか、熱さというのか・・・・正義感溢れる主張が並ぶ。
「都議選の対決軸—日本共産党の躍進で都民要求実現と都政改革を前に進めるか、自民党・公明党によるくらし・福祉に冷たい都政を許すのか」という気迫に満ちた主張を打ち出している。
しかし、「対決」という言葉や「冷たい」という形容詞など、対立を嫌う若者が自民党支持になってしまうのではないか?改善の必要があるのでは?と共産党のためを思うと感じてしまう。とはいえ、共産党らしいので難しいところ。
それでは中身を見てみよう。
〇核兵器禁止条約の締結
〇オスプレイの東京への配備をやめさせ、横田基地の全面返還を求めます
非常に賛同する主張である。しかし、主張を入れるのはいいが、東京都のことを言ってもらいたい。都議会を共産党が多数を占め、政権与党になってこうしたことが実現できるのか?国政と都政を混同していて当惑する。
さらに「安倍首相が狙う9条改憲は絶対に許しません」などを主張している。
都政の役割、影響力の範囲を無視したお門違いの「自説」を主張すればするほど、冷静な人はひいてしまうのではないだろうか。安倍政権云々を書かれても・・・・である。
■必要性が疑問な事業リスト
中小企業・事業者向けビラには「都予算の0.1%でこんなことが実現できます」として、少ない予算でできる事業名が並んでいる。このアイデアは本当に素晴らしい。
しかし、中身を見ると・・・・
〇小規模企業振興プランの策定(500万円)
〇小規模製造業への借り工場家賃助成制度の創設(4.8億円)
〇住宅リフォーム助成制度の創設(15億円)
〇東京都公衆浴場振興計画の策定(2000万円)
とある。「予算の使い方を変えて」行う事業なのだろうか。プラン・計画なぞ、職員が策定すれば予算はかからないし、達成度を進行管理しない計画などそもそもいらない。
各種助成制度はあるが、助成の論理的理由・根拠が明らかでないので、一種のバラまきにも見えなくもない。正直、必要性が疑問な事業リストに思えるがどうだろうか。
共産党は科学的・客観的な分析・企画力や考察力を持っているはず、それが活かされないのはとても残念だ。共産党に期待する。
【注意】上記あくまで私の意見ですのでご参考に。繰り返しますが、特定団体を応援する目的で記載していませんので悪しからず。
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。
