女性の健康はヘルスリテラシーから
Japan In-depth編集部(駒ヶ嶺明日美)
【まとめ】
・ヘルスリテラシーが高い人のほうが、仕事のパフォーマンスが高い。
・ヘルスリテラシーの増進が女性の健康を高めることにつながる。
・女性の健康を包括的にサポートする国立のセンターの設立が急務。
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女性の妊娠・出産と仕事の両立が問題になっている昨今。働く女性の健康増進にも注目が集まっている。3月22日、日本医療政策機構(黒川清代表理事)は、「働く女性の健康増進のためのプロジェクト」と連携して行った調査のメディアブリーフィングを都内で開催した。
調査結果の発表は今回で2回目。2016年には「婦人科系疾患を抱える働く女性の年間の医療費支出と生産性損失が合計6.37兆円にのぼる」ことを明らかにし、大きな反響を呼んだ。今回は、「女性に関するヘルスリテラシーの高さが、仕事や妊娠、健康行動と関連する」ことが明らかになった。
主な調査結果は以下の5点。
①月経周期に伴う心身の変化や更年期障害について、約半数の人が仕事のパフォーマンスに影響を与えると感じている。一方ヘルスリテラシーが高い人の方が、仕事のパフォーマンスに与えるダメージが少ない。
②働く女性の過半数が望んだ時期に妊娠できず、望んだ時期に妊娠するために必要なことの上位には「職場の雰囲気」や「有給休暇制度の柔軟性」の他、学校教育へのニーズも挙げられた。また、ヘルスリテラシーの高い人のほうが、約1.9倍望んだ時期に妊娠している。
③月経に関する異常、PMS(月経前症候群)、更年期症状・障害がある場合、全てにおいて「何もしていない」人が最多。婦人科・産婦人科を受診した人でも、いずれの場合も症状が出てから4ヶ月以上経ってからという人が半数以上。一方、ヘルスリテラシーの高い人のほうが、約1.9~2.8倍、医療機関の受診や服薬等の対処をしている。
④女性に多い病気のしくみや予防・検診・治療方法、医療機関へ行くべき症状を学ぶニーズが高い。女性の健康で気になることがあるときの情報収集に最も活用されるのはインターネットだが、一部は学校の授業や教科書が特に活用されている。
⑤約70%が定期的に婦人科・産婦人科を受診していない。より受診するために希望することの上位は「インターネットから医療機関の予約ができる」「女性医師の診察」等の医療機関への希望と、費用負担軽減の希望が多く挙げられた。一方、受診するきっかけとなった情報源の一位は「会社の健康診断時の勧め」。
結果を受けて、調査チームは「女性特有の健康リスクへの対応を促進するために必要な知識の提供」「ヘルスリテラシーに焦点を当てた企業の健康対策の促進」「婦人科・産婦人科へのアクセス向上」「望んだ人が妊娠や不妊治療に取り組める環境づくり」のために国、教育機関、企業が推進すべき対策を提示しており、今後の具体的な施策につなげていきたい考えだ。
写真)大須賀穣氏(東京大学大学院医学系研究科 産婦人科学講座 教授) ©Japan In-depth編集部
調査チームの一員である大須賀稔氏(東京大学大学院 医学系研究科 産婦人科学講座 教授)は、「女性は一生を通してホルモン変動を経験する。これに対し、自分自身で健康に気をつけ、適切に対処(検診・受診など)するために、ヘルスリテラシーの向上は不可欠。そのために、どのようなサポート体制を作っていくかが問われているが、女性の健康を包括的にサポートする国の機関が存在しない。これを設立することが急務だと考える。」と述べた。
トップ画像)大須賀氏と今村優子氏(日本医療政策機構 シニアアソシエイト)(写真右) ©Japan In-depth編集部