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.国際  投稿日:2019/1/26

韓国文政権に激震 与党議員疑惑


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・「文大統領夫人同級生」孫惠園議員が離党。投機疑惑で捜査。

・与党議員の疑惑と大統領府の不祥事相次ぎ、文政権は大揺れ。

・窮地の文政権の突破口は金正恩訪韓と反日のみ。

 

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韓国与党「共に民主党」の孫惠園議員(ソン・ヘウォン、ソウル麻浦区乙が選挙区)が1月20日に記者会見を行って離党を表明した。孫議員が離党を表明せざるを得なくなったのは、韓国全羅南道木浦(モッポ)旧市街を「韓国のサントリーニ(エーゲ海ギリシャ領の島)のようにしたい」という意気込みで始まったとされる「木浦文化財通り」(いわゆる孫惠園タウン)にまつわる投機疑惑のためだ。彼女の離党は親友の文在寅大統領夫人・金正淑(キム・ジョンスク)氏に類が及ぶのを防ぐためだとも言われている。

▲写真 与党「共に民主党」を離党した孫惠園(自由日報より)

この「木浦文化財通り」地区は、孫議員の熱心なロビ―活動によって2018年8月に登録文化財として告示された。政府予算500億ウォンを投じて「螺鈿(らでん)漆器博物館」を中心に文化拠点を作るという構想だ。SBSテレビがこのプロジェクトに関連して孫議員に不動産投機疑惑があると報道したのが騒動の始まりとなった。

孫議員が「文化通り」に復活させるとして「地上げ」していた所は木浦の旧市街地1.5キロメートル区間に集中しているのだが、皮肉にもそこは文政権が一掃しなければならないと叫ぶ「日本植民地時代の遺産」である元日本人街である。

▲写真 旧木浦日本領事館 出典:Amlou2518

 

■ 「孫惠園タウン」投機疑惑に検察が捜査開始

孫議員はこの会見で、自身へのメディア報道をフェイクニュースであるかのように非難して、あたかも被害者のように振る舞ったが、驚くべきは、離党表明を行う孫議員の横に洪永杓(ホン・ヨンピョ)「共に民主党」院内代表が「秘書」のように付き添ったことである。政府与党の院内代表が一年生議員の個人的離党会見に倍席するなどとは韓国の政治史だけでなく世界の民主主義国家では決して見られない異常な光景だと言える。このこと一つを見ても孫議員が文大統領の「威光」といかに深くつながっていたかが分かる。

▲写真 洪永杓(ホン・ヨンピョ)「共に民主党」院内代表 出典:国会研究所

23日にも孫議員は、木浦の老朽化した博物館予定建物(ゲストハウス「チャンソン荘」)ですべての疑惑に答えると大見得を切って1時間30分の記者会見を行ったが、単なる独演会で終わり、むしろ疑惑を深めた。

孫議員の最大の問題点は露骨な「利益相反」行為だ。彼女は文化財庁に影響力を行使できる国会文化体育観光委員会の与党幹事でありながら、「木浦文化財通り」が公示される直前から、自身の夫の財団及び補佐官、親戚などの名義で建物と土地25件を買いあさった。家2軒を買っても重課税されるというご時世の韓国で、国会議員が、それも直接利害関係をもつ委員会所属の国会議員が、家族・親戚と知人名義で不動産を25カ所も購入したことを、妥当な行為とみなせるはずはない。

韓国検察は22日、孫議員が政治圧力をかけて「木浦文化財通り」指定を行ったのか、また、指定建物の購入前に関連情報を手に入れていたのかを中心に捜査を開始した。

 

■ 事あるごとに「金正淑氏と同級生」を口走る孫議員

クロスポイントの代表でもある孫惠園氏は、2006年頃から螺鈿漆器の収集を始めた。収集家として知られているだけでなく、それを政財界に売り込む有能な「営業ウーマン」としても有名だ。「韓国工芸の法古創新(温故知新)」のテーマで、孫惠園氏が芸術監督を務めた展示会が2013年4月8日から6日間ミラノの「トリエンナーレデザイン展示館」で開かれたこともある。

彼女はまた「商品命名家」としても知られている。さまざまな商品のブランド名を手がけ「共に民主党」という名前も彼女が命名したとのことだ。また文大統領名が刻まれた贈答用腕時計をはじめ、文大統領夫人・金正淑氏のハンドバッグなど小物類に至るまで彼女がデザインした螺鈿作品が使われている。

彼女は2016年の国会議員選挙で「共に民主党」から立候補して当選すると、1年生議員であるにもかかわらず、なぜか国会の文化体育観光委員会幹事に大抜擢された。巷では文大統領夫人の後押しがあったのではないかと言われている。そしてこの幹事の権限をかざして螺鈿漆器の展示を韓国国立中央博物館に強く迫った。当然拒否されたのだが、今度はその担当幹部職員を政治力で解職させる「暴挙」まで行ったという。

彼女は自分の力を誇示する時には必ず「私は文大統領夫人の金正淑氏とは淑明女子高等学校(江南区 道谷洞)の同級生だ」と喧伝していたという。その度合いがあまりにも頻繁なので、周囲の人たちは韓国でヒットした映画「タチャ(いかさま師の意、2015年)」が頭に浮かぶという。この映画で女いかさま師の一人が、口を開くと韓国某名門女子大卒だと言いふらしながらいかさまを続けていたからだ。

▲写真 文在寅大統領と金正淑夫人(2018年12月4日)出典:韓国大統領府facebook

 

■ 「職権乱用」が目に余る政府・与党

こうした権威を笠に着た与党議員の行為は、孫議員だけではない。徐瑛教(ソ・ヨンギョ)議員にも司法介入の疑惑が持ち上がっている。現職判事を議員室に呼んで刑の軽減を請託したという疑惑だ。2014年9月、帰宅した女性の前でズボンを下ろして醜行に及ぼうとした知人の息子を「罰金刑にしてほしい」と請託したという。この件でも与党指導部は揺れている。

▲写真 徐瑛教(ソ・ヨンギョ)議員 出典:国会研究所

青瓦台(大統領府)も大揺れだ。民間人への違法な情報収集とウ・ユングン駐ロシア大使の不正を内部告発した特別監察チームのキム・テウ行政官を解任し、圧力を加え続けているとして大問題となっている。この件が発端となって主体思想派の秘書室長・任鐘晳(イム・ジョンソク)は、釜山(プサン)派の民情首席秘書官・曹国(チョ・グク)派に押され、UAE(アラブ首長国連邦)担当補佐官に追いやられるという内紛まで起きている。

国内外で窮地に陥っている文在寅大統領は、その突破口をトランプの対北朝鮮制裁解除に伴う金正恩のソウル訪問と反日キャンペーン以外には見いだせない状況となっている。

トップ写真:韓国・文在寅大統領(2019年1月24日)出典:韓国大統領府ホームページ

 

【訂正】2019年1月28日

本記事(初掲載日2019年1月26日)の本文中、「孫惠園議員が辞任」とあったのは「孫惠園議員が離党」の間違いでした。お詫びして訂正いたします。本文では既に訂正してあります。

誤:「文大統領夫人同級生」孫惠園議員が辞任。投機疑惑で捜査。

正:「文大統領夫人同級生」孫惠園議員が離党。投機疑惑で捜査。


この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)、「金正恩ー恐怖と不条理の統治構造ー」(新潮社)など。

朴斗鎮

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