サミットで露呈トランプの無知
大原ケイ(英語版権エージェント)
「アメリカ本音通信」
【まとめ】
・G20サミット終わり、トランプ氏の無礼、無知があらためて露呈。
・注目浴びるがための訪朝。成果なく、今や関心は再選のみ。
・トランプ外交は同盟国おろそかにし、独裁国家リーダーと仲良くする事。
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G20大阪サミットが終わり、ドナルド・トランプ大統領が無礼で無知な人物だということがいっそうはっきりわかっただろう。ホスト国になんの敬意も払わず、それどころか事前に連絡すらせずに北朝鮮に足を踏み入れるという、日本の外交努力を踏みにじる真似をしたのだから。
▲写真 金正恩委員長と握手するトランプ大統領。現職米大統領として初めてDMZ(南北軍事境界線)を越え、訪朝した。2019年6月30日 出典:flickr ; The White House
「朝鮮半島の非核化」が具体的に何を指すのか、どういう手順で達成されるのか、中身がスカスカのシンガポール首脳会談から1年、なんの進展もないまま、今度はふらっと近くまで来たから寄ってみた、みたいなノリで北朝鮮の地に足を踏み入れたトランプ。とりあえず歴代の米大統領がやらなかったことをやることで注目されるのが気持ちいいだけだ。普段の週末ならフロリダの別荘地でゴルフをしているはずなのに、日本くんだりまで来て何もしないで帰るのも惜しいと考えたのだろう。
ついでにお気に入りの娘にも外交官役を担ってもらおうと、イヴァンカ・クシュナーを連れてきて、安倍首相との間に座らせたり、彼女がフランスのマクロン大統領やイギリスのメイ首相とたどたどしく会話する様子がインターネットで炎上し#unwantedivankaというハッシュタグで、揶揄されている。
▲写真 G20大阪サミットでの女性活躍に関する特別イベント。娘のイヴァンカ大統領補佐官を挟んで握手する日米首脳(2019年6月28日)出典:flickr ; The White House
世界の歴史や政治について無知なのは父親も同じで、サミット後の記者会見で「Western liberarismの危機だと思うか?」と質問され、西洋のリベラル的な民主主義制度の衰えを感じるか?と問われているのに、アメリカ西海岸のサンフランシスコでリベラルな民主党が強いのはよろしくないと答えるなど、バカっぷりをさらけ出した。
折しもアメリカ国内では野党民主党の大統領候補の予選で初のディベートが行われ、前副大統領のジョー・バイデンと、カリフォルニアのカマラ・ハリス上院議員が、公民権運動時代の「busing(憲法に違反し、人種隔離政策をやめない州政府に対して、連邦政府が強制的に児童をバスで移動させた)」の是非を巡って熱い議論になったことをどう思うか、と聞かれて「あの時代は通学といえば皆スクールバスに乗った。他に選択はなかった」とトンチンカンなことを答えている。
G20サミットでの態度からも分かる通り、トランプの外交政策は、NATO(北大西洋条約機構)の同盟国をおろそかにし、サウジアラビアやロシアや北朝鮮など、独裁政治でリーダーがいつまでもその座に居座る国と仲良くしたい、というものだ。日本がいくらトランプに媚びても、安倍政権は単に長く続いているだけで「強くない」と思われている以上、何をしても無駄だ。
▲写真 G20大阪サミットに際し、行われた米ロ首脳会談(2019年6月28日)出典:flickr ; The White House
中国も韓国も3度目となった米朝首脳会談を好意的に評価しているようだが、トランプはこれから1年半、大統領再選に没頭するしかないので、もう新鮮味のない4度目の会談はない。だか
ら今度は「来たけりゃホワイトハウスに来い」といっているのだ。どうせプロパガンダ局に成り下がったフォックスTVを見て、再選のためのラリーに行く毎日なのだから。そして北朝鮮もミサイルのひとつも減らすことはないだろう。
トランプの関心はもはやそこにはない。今は7月4日の独立記念日をいかに大統領である自分を讃える祭りにするかで心を砕いているのだから。
トップ写真:G20大阪サミットに出席するトランプ米大統領(2019年6月27日)出典:flickr ; The White House
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この記事を書いた人
大原ケイ英語版権エージェント
日本の著書を欧米に売り込むべく孤軍奮闘する英語版権エージェント。ニューヨーク大学の学生だった時はタブロイド新聞の見出しを書くコピーライターを目指していた。