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.経済  投稿日:2024/5/4

地上8メートルの“銀ブラ”「Ginza Sky Walk 2024」開催


Japan In-depth編集部

菅谷瑞希

【まとめ】

・首都高日本橋区間の地下化で利用が停止される東京高速道路(KK線)を空中回廊「Tokyo Sky Corridor」へ再生。

・それに先立ち、2024年5月4日~6日にかけて「GINZA SKY WALK 2024」が開催され、約1万5000人が訪れた。

・インフラ再開発は海外で成功例があり、新たな観光名所となれるか、運営主体と地元の力が問われることとなりそうだ。

 

ゴールデンウィーク後半の5月4日(15:00-18:00)、東京都中央区の有楽町から京橋、銀座、新橋を結ぶ「東京高速道路(通称、KK線)」にて、全線2kmを歩いて都心の眺めを楽しむイベント、「GINZA SKY WALK 2024」(5月4日~6日)が開催された。

初日は真夏のような暑さに見舞われ、気温が28度まで急上昇するなか、普段歩行者が立ち入ることのできない高速道路上に、吹奏楽やキッチンカー、遊具が置かれるプレイゾーン等が設置され、約3000人が楽しんだ。

また、ヨガとランニングのモーニングプログラムや夜景を楽しむナイトプログラムなども開催され、高速道路で遊び、出会い、楽しむ、新しい東京の姿を体験できる3日間だ。

▲写真「GINZA SKY WALK 2024」に訪れた人々 ⒸJapan In-depth編集部

このイベントは新たな東京の楽しみを提供するだけでなく、KK線を活気づけるための機会でもある。そもそも首都高日本橋区間は老朽化が激しく、更新事業や地下化が検討されていた。その際、渋滞緩和のため江戸川JCTの都心環状線連結路を廃止し、八重洲線に利用の転換を図ることとなったが、八重洲線に接続するKK線(下図の水色の部分)は大型車の通行に対応していない。ゆえに、新たな都心環状ルートとなる新京橋連絡路を整備することが決定され、その役割が大きく低下するKK線を歩行者中心の賑わいの場として再生することになったのだ。

▲図 東京高速道路(KK線)再生の概要 出典:東京都都市整備局

この取り組みは東京高速道路株式会社と地元の企業、東京都によって推進され、KK線を緑に囲まれた空中回廊「Tokyo Sky Corridor」に再生することを目的とする。今回は、全区間の整備完了目標時期である2030年代〜40年代に先立ち、未来のKK線の姿を体感するためのイベントとの位置付けだ。

今年の「GINZA SKY WALK2024」は、参加者枠1万5000人に対し、2万9000人の応募があった。そうしたなか迎えた5月4日は、KK線上にカフェや企業のブース等が置かれ、路上ライブやお神輿が行われた。

歩行路はモビリティエリア(車両展示や試乗体験等)、プレイエリア(子供向け遊具や東京グリーンビズPRブース等)、エシカルエリア(再利用人工芝、演奏や各種パフォーマンス等)、インタラクションエリア(アートピアノの展示やウェルビーイング体験等)の4つのエリアに分かれ、緑と共生する新たな「まち」のイメージを体現する。

なかでもエシカルエリアのカフェには、高知県の特産品を用いる店、学生が運営する店など、来場者が気軽に楽しみながら地域について知られるものが立ち並んだ。他にも、同エリアで行われたLFJ丸の内エリアコンサート連携ステージでは、ピアノ、ヴァイオリン、リズム楽器による演奏が人々の注目を集め、子供から大人まで多くの人が聞き入った。

▲写真 LFJ丸の内エリアコンサート連携ステージでの演奏(2024年5月4日)ⒸJapan In-depth編集部

京橋三丁目のお神輿は、町会など地元の団体の人が担ぎ、威勢の良い掛け声でKK線上を練り歩いた。

急遽駆けつけた山本泰人中央区区長はお神輿を観た後、「街の人とSky Coridorに来る人、一体となってますます街がよくなることを期待したい」と挨拶した。また東京高速道路会社の加藤浩社長は、「京橋の街とKK線、ともに繁栄させることができたらと願っている」と期待を寄せた。

▲写真 挨拶する山本泰人中央区区長(中央)と東京高速道路会社の加藤浩社長ⒸJapan In-depth編集部

主催者の1主体である東京都は、KK線の再生事業を東京グリーンビズの一環として推し進める。「東京グリーンビズ」とは、緑や自然を100年先に繋げるため、東京の緑を「まもる」「育てる」「活かす」取り組みだ。例えば、里山の保全への協力や緑化活動の支援、近所の緑の維持管理などが挙げられる。今回のTOKYO SKY WALK2024では、各種植物の苗を持参し、参加者に取り組みの内容を伝えながら苗を提供していた。帰宅後に自宅などで苗を育ててもらい、東京の緑化を促進する狙いだ。

千葉県から来たという子連れの夫婦は、「高速道路というとただのコンクリートの建築物だが、(公園にするという)こういう試みはいいと思う。完成したらまた来たい」と話した。完成予定時期は2030年代~40年代だが、整備に伴うKK線の閉鎖時期がまだ決まってないため、来年以降GINZA SKY WALKが開催されるかは未定だという。

なお、KK線は歩行者向けの空間として再生されるため、バス等が走る予定はなく、歩行を補助する乗り物が走る可能性があるのみだ。

▲写真 歩行者をサポートするモビリティの試乗体験コーナー ⒸJapan In-depth編集部

イベントに際し東京高速道路株式会社と地元の方々が協働して作った「エリア街歩きMAP 2024」では、日比谷フェスや烏森神社例大祭といったイベント情報が掲載された。来客にとってKK線の歩行後に気軽に立ち寄れる場所であり、近隣地域の活性化にもつながる。このように、KK線の再生は新たな楽しみの場を作るだけではなく、中央区の活性化も期待されている。

使われなくなった鉄道や道路の跡地を再開発する取り組みは、既に海外で成功例がある。アメリカ、ニューヨークのマンハッタン西端にある「ハイラインパーク」が有名だ。旧高架鉄道の跡地を2009年に遊歩道にしたもので、南はミートパッキング地区から北は34丁目まで、2.33kmに及ぶ。今では年間900万人近くの人が訪れるという。

▲写真 ニューヨークのハイラインパーク(2022年5月31日 アメリカニューヨーク市)出典:Spencer Platt/Getty Images

また、韓国ソウル市でも役割が低下した高速道路を高架遊歩道とする計画が立てられ、2017年に長さ983メートルの「ソウルロ7017スカイガーデン」が生まれた。

▲写真 ソウルロ7017スカイガーデン 出典:GoranQ/GettyImages

おりしも日本は観光立国のかけ声により、また円安効果も相まって、訪日外国人旅行者の数はうなぎ登りだ。「Tokyo Sky Corridor」が完成するのは2030年以降とまだ大分先ではあるが、この場所が新たな観光名所となれるかどうか、運営主体の東京高速道路株式会社と地元の構想力が問われることになりそうだ。

「GINZA SKY WALK 2024」は、5月5日(9:00-18:00)、6日(9:00-17:00)も開催される。

トップ写真:「GINZA SKY WALK 2024]で行われたお神輿の様子(2024年5月4日東京都中央区)ⒸJapan In-depth編集部




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