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.国際  投稿日:2019/8/9

日韓対立で米紙酷い偏向報道


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視 」

【まとめ】

・ニューヨークタイムズが日韓対立についての長文記事掲載。

・記事は偏りや誤りが目立ち、反トランプ・反安倍の政治的歪め顕著

・ここまでの偏向報道には日本政府として抗議してもよいのでは。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=47301でお読みください。】

 

アメリカの大手紙ニューヨーク・タイムズが8月5日付に現在の日韓対立についての長文の記事を掲載した。その内容は日韓両国のいまの対立が日本の朝鮮半島統治時代の虐待やまだその謝罪をすませていないことが原因だと述べ、韓国側の日韓条約無視の賠償請求という文在寅政権の無法な行動にはほとんど触れていなかった。

▲写真 New York Times 出典:Flickr; Janne Räkköläinen

しかも同記事は慰安婦をなお「性的奴隷」と繰り返し断定し、日本側による韓国人の戦時労働も日本側が責任をとっていないという趣旨を書いている。そのうえでいまの日韓対立はトランプ大統領や安倍晋三首相にそもそもの責任があるとして、日米両政権への批判をにじませていた。

▲写真 慰安婦像 出典:Flickr; YunHo LEE

この記事は「貿易紛争が日韓関係を悪化させるのにアメリカは一歩、引いたままでいる」という見出しだった。記事の執筆にはニューヨーク・タイムズのソウルや東京、ワシントンの記者数人があたったと記されていた。

だがこの長文の記事には明らかな偏向や錯誤があった。その実例の一部を以下に列記しよう。

 

●まずいまの日韓両国の対立の原因について記事の冒頭に近い部分で「今回の争いは第二次大戦の前と最中の日本による朝鮮半島の植民地的占領と、その期間に日本が冒した強制労働や性的奴隷を含む虐待行為への負債をまだ払っていないことを原因として起きている」と書き、その原因が日本の虐待とその未決済にあると断じていた。

●同記事はさらに冒頭部分で日本の韓国への輸出面での優遇措置撤回に韓国側が激しく反発していることを簡単に伝えながらも、その後にすぐ続いて「日韓両国間の現在の離反は貿易についてよりも両国の苦痛に満ちた歴史についてなのだ。1990年代には両国は和解の措置も多々、進めたが、なお植民地時代の傷は癒えず、韓国側は日本が戦時の残虐行為を十分に謝罪していないと主張している」と述べ、これまた現在の対立の原因には触れていない。

●同記事は今回の対立について全体の半分ほどの部分でやっと文在寅政権が両国外相声明で完全に終結したと合意した慰安婦問題の財団を解散したことに簡単に触れて、それに続く形で韓国側最高裁が戦時労働者への賠償請求判決を下したことへの日本側の反発を初めて伝えていた。つまり今回の対立の真の原因をすっかりすりかえ、矮小化しているのだ。また記事は今回の対立の原因の一つとなった韓国軍の日本の自衛隊機への攻撃準備のレーダー照射事件にはまったく言及していなかった

▲写真 レーダーを照射したと言われる韓国海軍「広開土大王」艦 出典:撮影 Republic of Korea Armed Forces (CC BY-SA 2.0)

 

●同記事はさらに慰安婦について繰り返し「政的奴隷」「強制された性的奉仕」と書き、日本軍が組織的に女性たちを連行して、売春を強制していたという意味の記述で一貫していた。アメリカ政府の公式資料や日本側の調査研究によって慰安婦たちが「性的奴隷」でも「強制連行」の対象でもなかったことはすでに証明されており、この記事はその点もこれまた日本側に不利な形で事実を無視していた。

ニューヨーク・タイムズのこの記事は通読しただけでも、以上のような偏りや誤りが目立った。さらに同記事には反トランプ、反安倍と呼べる政治的な歪めも顕著だった。日韓関係がいまのように悪化して、北朝鮮や中国の軍事脅威に備えて団結すべき米日韓の三国の安全保障関係に悪影響が及ぶのも、日米両国指導者の失態だと論ずるのだった。そうした点ではこの記事には以下の趣旨の記述があった。

●同記事は日韓両国がこれほど対立するのは「トランプ大統領が東アジアの同盟諸国の連帯に注意を払わないからだ」「トランプ政権のリーダーシップが欠けたためだ」という趣旨の反トランプ傾向の専門家たちの言葉を繰り返し紹介していた。とくにトランプ政権が日本と韓国の両方に和解の調停をいったんは申し出ながら、また後退したことが大きなミスだと強調していた。

▲写真 トランプ大統領と安倍首相 出典:Flickr; The White House

●同記事は安倍首相についても「保守的なナショナリストとして攻勢的な軍事政策を推進している」とか「安倍首相の率いる自民党は慰安婦が強制連行されなかったというような主張を広げ、日本側の民族主義的な感情をあおった」などと書き、いかにも安倍首相にいまの日韓対立の責任があるかのように論じていた。

ここまでの偏向報道には日本政府として抗議をしてもよいのかもしれない。

トップ写真:河野太郎外務大臣、康京和(カン・ギョンファ)韓国外交部長官(左)、ポンペオ米国務長官(中央)2019年8月2日 出典:外務省


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「危うし!日本の命運」「中・韓『反日ロビー』の実像」「トランプは中国の膨張を許さない!」など多数。

古森義久

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