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.国際  投稿日:2019/9/6

杉田水脈氏パリ講演反対の訳


Ulala(ライター・ブロガー)

フランス Ulala の視点」

【まとめ】

・パリで杉田水脈議員の講演会の反対運動。

・パリの講演会主催者による経緯説明。

・反対者は議員が歴史修正主義者・差別主義者であるとして抗議。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て見ることができません。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=47763でお読み下さい。】

 

フランスである講演会の開催について騒動が起こっている。9月8日、パリ国際大学都市日本館にて行われる予定だった杉田水脈議員の講演会に対して、一部から反対運動が起こり、会場が変更されると言う事態になっているのだ。

杉田水脈議員は、少子化問題に対するフランスでの取り組みなどを現地で学ぶためにフランスを訪れる予定となっていた。その日程の合間に、パリで憲法改正」に関する講演会を予定していたところ、SNSを中心に大きな反響を呼んだのだ。ネット上では杉田議員が講演を行うことに対する反対の意見が次々と飛び交い、「歴史修正主義者・差別主義者の杉田水脈氏のパリ講演に断固として抗議する」ための署名活動(参考1)が行われた。そこでは、8日間で10999人の署名が集まった。

一方、杉田議員のブログによれば、中には現地の主催者に対する中傷が書かれたり、会場に対しての実力行使を示唆するかのような内容の発言等も寄せられたと言う。

その結果、会場変更を余儀なくされた。国際大学都市に位置すると言う事情も踏まえ周辺の安全を第一に考えたのか、日本館での講演が中止になった旨の告知を、パリ国際大学都市日本館のツイッターアカウントが声大きく反対していたアカウントに個別にメッセージを送るなど、事態収拾に奮闘している様子がうかがえる。

しかしながら、こういう騒動によくあることだが、反対者の意見はSNS上にも多く流れるが、肝心の開催者側の意見が見えてこず、講演会自体の意図や、本当に反対者が反対する内容が行われる予定なのかがまったくわからない。

そこで、パリの講演会主催者にコンタクトを取り、講演会が決まった経緯などの話を聞くことにした。以下が、インタビューの全文である。講演会前の忙しい中、突然の申し出にもかかわらず丁寧に対応していただいたことに、ここで感謝を申し上げたい。

▲写真 杉田水脈議員 出典:杉田水脈Facebook

 

■主催者へ行ったインタビュー

1 杉田水脈議員の講演をパリで行うことになった経緯は?

経緯を話すと随分と遡りますが、2015年にパリでフランスに亡命した韓国人利・イエダ氏の呼びかけで、所謂戦争法案反対のデモが行われ、2016年には、明日の自由を守る若手弁護士の会主催の『憲法カフェ』(講師 弁護士太田啓子 法政大学 中野勝郎)と『立憲デモクラシー講座』(山口二郎 法政大学)が開催されました。このように、今までパリで行われた政治イベントは左派のイベントばかりで、護憲派、反政府の人たちによるイベントです。

そのような状況が続きますと、パリの有権者たちは偏った情報のみを得ることになります。そこで所謂保守派のイベントが開催されないだろうか、憲法に関しても、どうして改憲派は改憲が必要なのかの説明を聞いてみたいと思っていた次第です。

しかし、所謂保守の先生方に講演会を問い合わせたことはありましたが、こちらに来て講演を依頼するとなると、渡航費と講演費を合わせると、「ちょっと聞きに行ってみようかしら」と言う金額ではなくなってきますので、なかなか難しいところでした。

杉田議員の場合は、こちらに来るついでにと、講演費は大丈夫ですとのことでしたので、それでは是非に、とお受けさせていただくことになったのです。

 

2 どういった内容の講演であり、どのような流れで行う予定なのでしょうか?

テーマは「憲法改正について〜日本とフランスの今をつなぐ」です。

流れは、講演前に注意事項をアナウンスし、杉田議員に1時間講演してもらい、30分は質疑応答となっています。

講演会は申し込み制で少人数制で行われます。最高でも30人

対象はフランスに住む日本人で、講演も日本語のみで行われます。

ネットで色々な憶測が飛び交っていますが、不特定多数の日本の憲法について知らないフランス人にお話しするとかではないのです。

誤解なきようお伝えしますが、私個人は杉田議員の発言や行動全てに賛同しているわけではありません。恐らく、講演会に参加される多くの方がそうであると思います。

それでいいと思います。いろんな意見を聞いて自分で考える判断していくことが政治だと思うからです。

私達は海外に住んでいても有権者です。有権者が議員の(しかも与党)意見を聞く時間を海外で得られること自体がとても貴重だと思っています。

 

3 講演開催の公示後、どのようなことが起りましたか?

講演会中止を求める抗議活動が署名という形で行われたました。在仏日本による歴史修正主義者・差別主義者の杉田水脈氏のパリ講演に断固として抗議する有志が主催です。そして、杉田議員の事務所などには嫌がらせや抗議のメールがあったそうです。

会場となる予定であった国際大学都市日本館の館長さんにお聞きしたところ、公示した直後から、抗議と嫌がらせのメールと電話が毎日のように多数あり、日常の業務に支障が出ているとのことでした。

当日も抗議に来るという方々もおられ、中には日本館に住んでいる方が当日抗議に参加すると表明されていて建物の構造上、安全は確保できないと判断しました。

しかし、広告に書いてあるお問い合わせ、申し込みメールには講演会の詳細について問い合わせる、もしくは抗議などは一切なく、それが本当に不思議でした。

 

4 その他、伝えたいことはありますか?

フランスと言う日本国外で、日本の国会議員のお話が聞けると言う貴重な機会、しかもまだ始まってもいないのに、ヘイトだと決めつけて中止に追い込むことに甚だ疑問を感じます。

自分と違う考えの方が講演会するのは嫌なのはわかりますし、それをご自分のSNSでいうのも自由です。しかし、会場に嫌がらせをしたりというのはどうなのでしょうか?私たちは一個人でどこの団体にも所属していませんし、これを仕事としてやっているわけでもありません。ただ広い知識を得たいと考えているだけです。すでに出席される方の安全を考えて講演会は別の会場で行うことになりました。ぜひ、ご理解いただければ幸いです。

———-(インタビュー 終)———-

 

これで、反対者側と、講演開催側の両者の意見が出そろったことになる。

両者の主張を踏まえ、今回のパリの講演をめぐっての騒動、みなさまはどうお考えになるだろうか?

 

参考1 杉田水脈氏のパリ講演に断固として抗議する有志の署名サイトの抗議文

署名サイトによる反対理由

杉田水脈氏のパリ講演に断固として抗議する有志

歴史修正主義者・差別主義者の杉田水脈氏のパリ講演に断固として抗議する。

パリ国際大学都市日本館館長様

来る9月8日(日曜)、国際大学都市の日本館で自民党衆議院議員、杉田水脈氏が「憲法改正について」と題する講演を行うと知り、在仏の多くの市民が大きな衝撃を受けています。

杉田氏は過去に何度も問題発言を重ねてきた人物です。以下に挙げるこれまでの彼女の歴史修正主義、性差別・LGBT差別主義、戦前の国家・家族観に根ざした軍国主義、反民主主義的発言に鑑みて、第一次世界大戦後に平和の推進と、若者たちの国際的な相互理解と交流、文化の共栄を目指して設立されたパリ国際大学都市に属する日本館で、この人物の講演を行うことは、大学都市の理念とまったく相容れない行為であり、フランス共和国の理念にも反する催しだと考えます。日本では法制化されていませんが、フランスにおいてはホロコースト否定など歴史修正主義、ヘイトスピーチは軽犯罪の対象になります。また、日本と韓国の関係が急激に悪化している現在、中国や韓国に対するヘイト・スピーチを繰り返すこの議員を、学芸を促進し楽しむ開放的で寛容な場所の象徴である国際大学都市に迎えること自体、理解に苦しみます。アジアの近隣国出身の人々から挑発行為だと受け取られるでしょう。どのような経緯で日本館が、ネトウヨのアイドルとされる杉田水脈氏に講演の場を提供することになったのでしょうか。

この講演の開催について、私たちは断固として抗議し、日本館と国際大学都市に対処を求めます。

納得できる回答が得られなかった場合、当日は有志で会場に赴き、非暴力の抗議行動を行う予定です。また、フランスの様々な分野(学術界、プレス、市民運動)にもこの極右の差別主義者による講演について告知し、二度とこのような事態が公益を認められた機関で起きないよう、訴えていきます。

(引用元:change.org

トップ写真:パリ国際大学都市 出典:Flickr; Vinicius Pinheiro


この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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