無料会員募集中
.政治  投稿日:2014/4/5

[清谷信一]<200億円の海自P-1哨戒機>性能も怪しい高コスト機の開発ではなく現有機の近代化を


◆P-1の調達単価は1機約200億円で維持コストも高い

P-1の調達単価は現状1機約200億円だ。既存のP-3Cの近代化は機体、システムどの程度のものを行うかによって異なるが、100億円を超えることはないと思われ、恐らくはP-1調達価格の数分の1だろう。仮に1機の改修費用が50億円であればP-1を1機調達する予算で4機の近代化が可能である。換言するならばP-1の調達期間が20年とすれば、5年で近代化は可能になる。

P-1の問題は調達コストが高いだけではない。機体、エンジン、搭載システムのすべてを専用に国内開発しており、維持運営コストが極めて高い。通常哨戒機は既存の旅客機や輸送機などを流用して調達・運用コストを下げている。P-1のように贅沢な専用の機体を作れる例は極めて少なく、現代ではP-1以外は皆無だといってよい。

米海軍が採用したボーイングの哨戒機P-8にしても、ボーイング社のベストセラー旅客機である737を流用しているぐらいだ。専用機体の開発が如何に贅沢か分かるだろう。

防衛省はP-1と空自の新型輸送機C-2を共同開発することにより、開発費・調達・運用コストを劇的に下げるとしていたが、これも画餅となっている。両機ともに開発費は当初の目論見から大幅に高騰、調達単価は約二倍である。

しかも両機のコンポーネントを共用化することによってコストを下げるはずだったが、P-1とC-2は全く別の機体であり、共用されるはずのコンポーネントは少なからず別個に開発、生産されており、共用コンポーネントのパーセンテージは下がっている。これまた調達・運用コストの増大の一因になっている。

◆P-1はエンジンの調達・運用コストも高い

エンジンも問題だ。P-1はIHIが専用に開発したターボファンエンジン、F7を4基搭載する、いわゆる4発機である。海自は生存性のために必要不可欠だったとしているが、ほぼ同じサイズのP-8は双発である。海自よりも遥かに実戦の経験があり、遥かに潤沢な予算を持っている米海軍が双発機を選択しているのだ。

当然専用エンジンの4発機は汎用エンジンの双発機に較べて、エンジンの調達・運用コストは高い。それが世界的なベストセラー旅客機で使用されているものと、専用に開発されたものであれば尚更だ。かつて海幕は当時P-1開発に難色を示した石破茂防衛庁長官に対して「4発でないと安全ではない。現場の気持ちがわからないのですか」と詰め寄って、P-1の開発を決定させた。

だが後に石破氏は筆者に現場のパイロットは「信頼性の低いエンジンの4発機よりも信頼性の高い双発機の方がいい」と言っていたと語った。

F7の試験時間は約3千時間程度だが、外国製のエンジンは万単位の試験時間をかかる。試験時間を減らすのは「現場のパイロット」の為なのだろうか。単に国産エンジンを作ってみたかっただけではないのか。そんな信頼性の低いエンジンを押し付けられた現場の搭乗員こそいい面の皮だ。

タグ清谷信一

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."