ゴーンと司法
.国際  投稿日:2019/11/11

フランスでも深刻いじめ問題


Ulala(ライター・ブロガー)

フランス Ulala の視点」

 

 

 

【まとめ】

・日本より多い、フランスでのいじめ件数。

・存在がタブーとされてきた仏いじめに政治家たちが動き出した。

・仏・教育省の撲滅キャンペーンは関わる全ての人に啓発をうながす。

 

 

フランスでは11月7日木曜日に、いじめ撲滅キャンペーンが行われました。2010年頃から時々行われていたキャンペーンですが、2015年からは11月の最初の木曜日に毎年開催されることになり、今年で5年目を迎えます。

 

いじめ問題への対策は、フランスはヨーロッパの中でも遅れており、解決までの道のりはまだまだ遠いのが現状です。2015年の国民教育省の組織の一つ、評価・予測・実績局 (DEPP)の調査結果によると、フランス全体で約700 000人がいじめの被害にあっており、その割合は児童生徒全体の10%であると報告されています。

 

日本では、フランスにはいじめがないという話が一部で流通していますが、実際は、ほかの国と同様にフランスにもいじめは昔から存在していました。いじめがなかったのではなく、いじめは「タブーとされ、存在しないものとみなされていた」ため、その存在が大きく明るみに出なかったと言った方がいいかもしれません。どちらかといえば、いじめの件数は日本では約410 000人で、児童生徒1000人あたりの認知件数は30.9件であり、児童生徒全体の約3%であるのに対し、10%存在するフランスは、日本よりもいじめが多いとも言えます。

 

2012年に、カナダのグザヴィエ・ドラン(Xavier Dolan)が演出したIndochine(アンドシーヌ)のシングル「College Boy」のクリップhttps://youtu.be/Rp5U5mdARgYが、暴力的すぎるとフランスCSA(視聴覚高等評議会)によって放送禁止になり、論争が起こったことがありました。映像の暴力性が問題視された結果、フランスでは日中に放送されることはありませんでしたが、しかし、このクリップが描写している内容は、まさにいじめがタブー化している現実を具体的、抽象的に表したものであり、確かに暴力的な部分はあるものの、いじめを受けている被害者が感じていることを理解するのにわかりやすい映像ではないのかと思える内容でもあります。

 

ドラン監督は、こう述べています。

「スキャンダルをおこしたいわけじゃない、このクリップが昼間のあいだテレビで流されないことはよく理解できる。検閲に反対するつもりもない。しかし不幸なことに若者たちは、このクリップよりもさらにひどい現実を見ていると思うよ。」

 

グループでいじめをする生徒たち、いじめを見て見ぬふりする教師、学生たちの「何も見ていない」と目隠しをしながら携帯で撮影している姿、目隠しをしている警察が介入して、反対に被害者に被害がおよぶ様子、etc。多くのフランス語で書かれたコメントがこの動画のコメント欄にも残されていることからも、この映像が、カナダを含む、フランス語圏の多くの人の心を打ったことを物語っています。

 

その存在自体をタブーとされてきたいじめですが、しかし2011年にようやく人々や政治家たちがいじめについて語りはじめました。その年の2月に、フランス北部の街マルケット・レ・リールに住む、ジョナタン・デタンさん(https://www.imishin.jp/jonathan-destin/)が、いじめを苦にして焼身自殺をはかろうとしたことが、人々に大きな衝撃を与えたことも影響しています。

写真)ジョナタン・デタン氏

出典)twitter : @JonathanDestin

 

いじめを受け続けたジョナタンは、ガソリンを頭からかぶり焼身自殺を試みました。マッチに火をつけた瞬間、炎が全身を包んだのです。「心が深く傷ついていて、それしか解放の方法がないように思えたんだ。」と当時を振り返っています。しかし、生命本能がとっさに働いたのか、火の中でもがき苦しみながらも生きることを選択し、川に飛び込んだことで命を取りとめました。その後、何度も皮膚移植や整形をし、苦しいリハビリに耐え抜き、現在は、機会があるたびにメディアに姿を現し、いじめに苦しんでいる子供たちを励まし続けています。

 

このように、自殺に追いやられるなど、いじめが及ぼす影響について無視できなくなった教育省は、2011年5月にいじめの予防全国会議を開き、法的に被害者を認めることをきめ、教師たちのいじめの放置予防と、いじめの目撃者の証言、被害者とその家族の支援などを呼びかけ始めました。

 

また、いじめの場面をビデオクリップで流すなど働きかけ、タブーからの脱却をうながすと共に、被害者には無料の電話相談窓口(3020)を設けるなど、いろいろな対策を行っています。国が対応手順を定め、それに従い、地方教育委員会のいじめ専門官と学校が連携する仕組みも整えました。

 

その結果、多少はいじめの件数も減少し、教師などがいじめを把握し解決に至るケースも出て来たのも事実です。しかしながら、まだまだいじめをタブーとする人々がいなくなったわけではありません。

 

いじめがあったことに積極的に対応せず、隠そうとする教師はいまだに存在します。

 

リュック(仮名)の母親の証言

 

息子へのいじめは4年前の中学1年生の時に起こりました。息子をバカにし、侮辱する言葉を投げつけられたり、その中の一人に殴られたりもしました。そして、トイレでレイプすると脅されたのです。しかし、私はそのことを何もしりませんでした。トイレでレイプされるという脅しの話は、主任教諭との話し合いの場で初めて知ったのです。教師は、こういいました。「状況を悪化させてはいけないと思いまして、親御さんには電話しなかったのです。」

 

その後、息子は中学に戻りました。でもいじめは続きました。そして最終的に息子は部屋に閉じこもり、マットレスの下に隠してあったナイフで自殺しそうになりました。

写真)引きこもる少女(イメージ)

出典)pxhere

・・・

 

これは戦わなくてはいけないと、アカデミーに手紙を書きました。主任教諭に、このいじめ問題が学校の名前と関連付かないようにしてくださいと言われた時は、かなり頭にきました。

 

息子を保護することを一番に考え、次の学年は違う中学に転校しました。そこでは問題は起きませんでした。現在では、高校に入りましたがまったく問題なく未来に向けて大きな夢をもっています。しかし、一つ後悔していることがあります。なぜあの時、訴えなかったかと言うことです。なぜなら私たち、親たちは、ほとんど私たち(被害者)の話を聞こうとしないからです。

 

数多く流される証言の中には、このように教師やほかの親の無関心さに怒りを募らせる親の証言も多くあります。

 

いじめと戦うためには最初の兆候で被害者を保護し、いやがらせを防ぐために大人は学校と専門家で団結しなければなりません。いじめの目撃した場合は、そのことを見て見ぬふりをすることをやめ、被害者をたすけることが非常に重要です。教師が積極的に行動しないというのはもってのほかですが、その状況を変えることは、なかなか難しいようです。それは、ほかの理解しない親との兼ね合いもあり学校を守ることを優先するのも理由の一つでしょう。また、それと同時に、昔から普通に行われてきたことでもあり、教師を含む大人自身がそのことをして何が悪いのかという認識しかもっていない場合もあるのも事実です。

 

そういった状況を打開すべく、「子供がやっていることをそのまま大人の世界で表現したらどういった印象になるか」と言った大人向けの啓発動画https://youtu.be/EpT9PL8RCw0 も放映されてきました。

 

また、いじめが起きていることに気が付いていない大人に対して、いじめの存在を知らせる努力をしなくてはいけないのは子供自身でもあります。しかしいじめられることは恥ずかしいこととして話さない子供たちも多く、いじめを受けている事実を伝えられるようになるためにも、被害者が自分たちが受けたいじめの状況をテレビなどのメディアで語りオープンにしていく番組が積極的に放送されています。

 

そして今年の教育省が流したキャンペーン映像は、いじめの加害者、周りにいる目撃者たちへの啓発をうながす内容です。https://youtu.be/vP3Bhd8f3e4 いじめる側は明らかにヒーローではなく、いじめから助ける側がヒーローであるという明確なメッセージが込められた動画となっています。

 

いじめは、被害者と加害者だけの問題ではありません。関わる人々、全てが変わらなければ、なくしていくことはできません。フランスのいじめ撲滅キャンペーンは、まだまだ始まったばかりですが、それでも毎年定期的に行うことで、少しずつでも改善していくことが望まれています。いじめによって苦しむ人たちが、今後、もっと減ることを願ってやみません。

 

参考リンク

https://www.lci.fr/famille/video-harcelement-scolaire-a-l-ecole-une-association-detourne-les-codes-des-reseaux-sociaux-facebook-et-instagram-pour-sensibiliser-les-jeunes-2136980.html

https://www.nippon.com/ja/features/h00324/

https://www.lemonde.fr/societe/article/2013/05/02/harcelement-a-l-ecole-la-violence-du-clip-d-indochine-choque_3170257_3224.html?xtmc=indochine&xtcr=2

https://youtu.be/xUb7v80y3LY

https://www.leberry.fr/bourges-18000/actualites/harcelement-scolaire-les-temoignages-de-quatre-mamans_13679194/

https://www.education.gouv.fr/cid122362/non-au-harcelement-le-harcelement-pour-l-arreter-il-faut-en-parler.html

https://www.education.gouv.fr/cid86060/agir-contre-le-harcelement-a-l-ecole.html&xtmc=orientation&xtnp=56&xtcr=276

トップ写真)いじめ(イメージ)

出典)Flickr; Tiomax80


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