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.国際  投稿日:2015/1/13

[Ulala]【仏国内にも宗教冒涜に抵抗感】~仏週刊誌銃撃テロ事件の見方~


Ulala(ライター・ブロガー)「フランスUlalaの視点」

執筆記事Twitter | Website

1月7日水曜日、フランスでテロリストによる「シャルリー・エブド」襲撃事件が起こり、日曜日には犠牲者の追悼に加え、表現の自由を訴えるデモが行われた。

全国合わせて推定370万人と、第2次世界大戦中の1944年の「パリ解放」時を超える「前例のない規模」。フランスのオランド大統領はもちろんのこと、40を超える国や機関の首脳らも参加し「テロの脅威に必ず打ち勝つ」と一致団結している様子がメディアで映し出され、フランス史上最大規模の抗議活動となり、参加者も、見る側も感動を覚える一日になったのだ。

が、しかし、「なんだか違和感が拭えない。」

日本ではそんな言葉が溢れていた。他人の気分を一方的に害する風刺を「表現の自由」と正義化する流れに対する疑問だ。

風刺と言うのは、権力や社会問題や国際問題に対して、直接的にではなく、間接的にユーモアとウィットを持って揶揄することだ。確かに知的レベルの高い風刺画のユーモアには「クスッ」とくるものもあるし、考えさせられることもある。

がしかし、受け取る側としては、敬意が払われていないとを感じ、腹立たしく感じさせられる物もあり、「世の中をよくすることを目的に書いており、不快にさせる意図はない」と、いくら言われても納得が行かない風刺画も存在するのだ。

それは「権力に対抗する風刺は受け入れられるが、弱い立場の人間をおとしめたり、傷つけたりするような風刺にユーモアを感じない」と言う事ではないだろうか。そう言った理由から、宗教に関する風刺には気分を害される場合が多い。更にそれがフランス社会で貧困を強いられている層が多く信仰しているイスラム教にあっては尚更だ。

「シャルリー・エブド紙」は、政治や宗教などフランス内外問わず攻撃する風刺画を数多く掲載してきてきたが、特にイスラム教ならびに預言者ムハンマドに関する表現にきわどい内容が多く、抗議や脅迫状が数多く寄せられていた。

風刺に対する感情は抗議だけにはとどまらず、すでに事務所に火炎瓶を投げ入れられ全焼する事件などが起こっている。そのため2012年には、フランス当局から警告を受けていたにも関わらず、表現を和らげたり、自粛することはなく、最近では護衛の警備も配置されていたほど危険にさらされていたが、先月号でも「フランスで一月の月末までにテロを起こすように挑発」するような風刺画すら掲載している。

その結果が、「シャルリー・エブド」襲撃であり、一般市民を巻き込んだ事件となったとも言える。が、それを「表現の自由」を貫いただけであり、正義だと言う違和感
自国にとってネガティブな話は持ち出さず、対抗する勢力にとってネガティブな話は大きく伝えるのか?と言う違和感。

そう言ったような違和感を日本人は感じとっていたのではないだろうか。その事に対して、それは日本人独特の考え方だと言う人も居るが、「パリ郊外サン・ドゥニの中学生達すべてが “Je suis Charlie. ” (私はシャルリー)と言うわけではない。

テロ行為は糾弾するが、イスラム教徒だけでなくキリスト教徒も含め、信仰を持つ生徒の多くが宗教を冒涜することに抵抗を感じているのだ。」とフランスの新聞「Le monde」や、フランステレビ「TF1」でも伝えられており、大規模なデモでフランス全員が一致団結したかのように見えたフランスでも、疑問を持つ人が居ることが垣間見れる。

言論に対して、暴力で対抗すること自体は許しがたいことであり、その暴力を助成する組織の存在は脅威であることは確かだ。

テロリストには断固戦っていく必要があると思う。しかしながら「シャルリー・エブド」が襲撃された問題の本質については、目をそらせようとせずに理解を深めて行くべきなのではないだろうか?そうしなければ何も解決しないのではないかと思わずにはいられないのだ。

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