新型ウイルスで春闘集会中止
八木澤徹(日刊工業新聞 編集委員兼論説委員)
【まとめ】
・コロナウイルスによる春闘集会の中止相次ぐ。
・連合20年春闘方針で全労働者対象に企業内最低賃金「時給1100円以上」要求。
・情報発信はSNSを利用したものに変化。
新型コロナウイルスの影響が人気ミュージシャンのライブや集会など各種イベントを中止に追い込んでいる。この時期の風物詩である労働組合幹部が拳を突き上げて「ガンバロー」とシュプレヒコールを叫ぶ春闘集会も中止が相次ぐ。
連合は3月3日に予定していた集会を、トヨタ自動車労組も毎年3月上旬に開く数千人規模の大集会を中止にした。連合は集会を行わない代わりに初の試みとしてJR新宿駅と新橋駅前で行った街宣行動をSNSで配信した。神津里季生会長は「集会の中止は残念だが、労組がない立場の人に春闘の意味と賃上げ、働き方の改革を訴える好機だととらえたい」とし、新しいツールとして来年以降もSNSを多用する方針だ。
写真)トヨタ自動車労働組合による集会の様子
出典)トヨタ自動車労働組合
連合は20年春闘方針でパート労働者などを含む企業内の全ての労働者を対象にした企業内最低賃金「時給1100円以上」を要求。2月3日の中央総決起集会は都内の主会場に加え、連合内に非正規労働者や外国人労働者など様々な働く人が参加する第2会場を設置。SNSなどで「みんなの春闘」をアピールした。
中小の交渉が本格化する4月上旬には中小組合や非組織労働者などに向け、賃上げ・格差是正を訴える。「すべての働く者の底上げ・底支え・格差是正を」訴え、SNSを使って発信する予定だ。
「♪シュプレヒコールの波 通り過ぎてゆく」。中島みゆきさんが1970年代に作詞作曲した「世情」の歌詞にはシュプレヒコールが日常的な光景として描かれている。学生運動に身を投じた団塊の世代にとっては青春時代の証だろう。やがて若者と労働者の主張の場はSNSに取って代わられるのだろうか。
中島さんはこうも歌う。「♪そんな時代もあったねと いつか話せる日が来るわ」(「時代」)。感染の拡大は東京オリンピック・パラリンピックへの影響も懸念される。「♪あんな時代もあったねと きっと笑って話せるわ」(同)。そんな時代が来ることを願う。
トップ写真)神津里季生連合会長(左)と相原 康伸連合事務局長(右)
出典)facebook: 連合(日本労働組合総連合会)
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この記事を書いた人
八木澤徹日刊工業新聞編集委員兼論説委員
1960年1月、栃木県生まれ。日刊工業新聞社に入社後、記者として鉄鋼、通信、自動車、都庁、商社、総務省、厚生労働省など各分野を担当。編集委員を経て2005年4月から論説委員を兼務。経営学士。厚生労働省「技能検定の職種等の見直しに関する専門調査会」専門委員。
・主な著書
「ジャパンポスト郵政民営化40万組織の攻防」(B&Tブックス)、「ひと目でわかるNTTデータ」(同)、「技能伝承技能五輪への挑戦」(JAVADA選書)、「にっぽん株式会社 戦後50年」(共著、日刊工業新聞社)、「だまされるな郵政民営化」(共著、新風舎)などがある。