無料会員募集中
.国際  投稿日:2020/4/3

日本コロナ検査不足で感染爆発か


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・日本で新型コロナウイルス感染の検査数がきわめて少ない。

・感染拡大防止の最善の方法はPCR(核酸増幅法)検査の拡大。

・日本の検査数は人口100万あたりの検査回数では世界第11位。

 

アメリカでの官民あげての新型コロナウイルス感染の防止対策を現地で目撃すればするほど、日本での爆発的な広がりが懸念される。最大の理由は日本で新型コロナウイルス感染の検査数がきわめて少ないことである。

トランプ政権は感染拡大の阻止にはまず新型コロナウイルス感染の検査の範囲を最大限に増すことに全力を注ぎ、つい検査件数は100万を越えたと発表した。だが日本では検査件数の合計は5万強と、アメリカだけでなく他の諸国よりもずっと低い

トランプ大統領は3月30日の記者会見で「ついにアメリカでの新型コロナウイルス感染の検査は合計100万をやっと越した。この数字は全世界でも最多であり、アメリカの防疫対策が効果を発揮していることの証拠だ」と強調した。

アメリカではこの中国発の新型コロナウイルスの拡大を防ぐ最善の方法は感染者の治療ととともに、まだわかっていない感染者を発見するための検査の拡大だとされている。このテストはPCR(核酸増幅法)検査と呼ばれる方法である。

ではなぜ検査が新型コロナウイルス感染の拡大を防ぐには有効なのか。

大統領直轄のホワイトハウスの新型コロナウイルス対策本部の調整官デボラ・バークス医師は3月26日のホワイトハウスでの記者会見で説明した。

写真)米新型コロナウイルス対策本部調整官デボラ・バークス医師

出典)Flickr; US Embassy South Africa

「このウイルスはすぐに症状が出ないため、感染者が活発に動いて、多くの人と接触して感染させてしまうケースが多いのです。とくに若い世代が感染しても症状がほとんど出ない、あるいは軽いという場合が多く、それでも他者に感染させる危険は高く、その結果、重い症状の出る高齢層に移してしまい、死亡などの被害が増えるのです。だから早期の広範な検査で症状がまだ出ていない感染者を発見して隔離することが感染の拡大を止めるうえで効果的かつ不可欠なのです」

ちなみにこのバークス医師はオバマ政権でもエイズの防止対策で活躍した細菌・ウイルス対策専門の著名な女性専門家である。トランプ政権に請われて、新型コロナウイルス対策本部に入り、トランプ大統領の連日のコロナ問題での記者会見には必ず同大統領のすぐ後ろに立って、必要に応じて、解説をする。その優雅な態度と明解な発言はアメリカの幅広い層から注目されている。

確かに感染者のできるだけ多くを症状が出る前の早い時期から探知してしまうことは感染者の全体の広がりを防ぐうえでは重要だろう。だからトランプ政権も検査の増大に力を入れる。同大統領は30日の会見では米国で所要時間わずか5分ですみ、結果の判明も2日ほどですむという新式の検査方法が開発された、と熱をこめて報告していた。

新型コロナウイルスの検査技術ではそれまでに韓国が効率を高めていた。3月下旬までに合計で30万人に対する検査を実施したと言明し、アメリカよりずっと先をいっていると豪語していた。だがアメリカはその韓国を追い抜いたというのだった。

この点、日本は3月末までの時点でも国内で実施した新型コロナウイルス感染の検査は合計約5万6千人に対してだった。韓国よりも、アメリカよりもずっと少ない。日本より総人口の少ないドイツでさえ、16万7千人がすでに検査を受けたという。

世界各国のいまの新型コロナウイルス検査結果を日本経済新聞4月2日朝刊の記事がかなり詳しく報道していた。その報道によると、日本の検査数は人口100万あたりの検査回数では世界第11位とされていた。

日本政府の発表では日本には新型コロナウイルスの検査を一日に計9000件、実施する能力があるという。この数字はアメリカでは一日10万、韓国でも数万とされ、日本をはるかに上回っている。

日本のこうした検査の少なさがすでに存在する多数の感染者を実際にまた探知していないだけの状態においたまま、という危険性がいまや十二分にある。

まして外出禁止令が発せられ、社会での他者との距離の保持(ソーシャル・ディスタンシング)が堅持されるアメリカとは異なり、日本でのまだまだ緩やかな自粛の状態は、これまで表面に出なかった多数の感染者がどっと発覚するという危険を感じさせるのである。

 

トップ写真)オハイオ州ライト・パターソン空軍基地の米国空軍航空宇宙医学学校の疫学研究所 世界中の軍事治療施設から送られたCOVID-19のサンプルをテストしている。

出典)U.S. Air Force photo/J.M. Eddins Jr.


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."