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.国際  投稿日:2021/4/3

バイデン政権下、違法入国者激増


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・米-メキシコ国境の壁から2幼女が投げ込まれる衝撃映像公開。

・バイデン政権の緩和政策で国境に米入国希望者殺到。

・未成年者の入国激増、新型コロナ感染者も。国内で批判の声。

 

アメリカのバイデン政権が移民や難民の入国管理を大幅に緩和した結果、メキシコとの国境に中南米各国からアメリカ入国を求める男女が急増した。とくに18歳未満の子供が単独でアメリカに送りこまれるケースが大幅に増えた。

米国の国境警備当局はトランプ政権時代に築かれた国境の壁を越えて5歳と3歳の少女が密入国斡旋業者により米国側に投げ込まれた瞬間をビデオに記録した資料を公開した。現状の危機を一般に訴えるための公開とみられる。

米税関・国境警備局のツイートより @USBPChiefEPT

いまのアメリカでは南部のメキシコとの国境地帯に中南米諸国からのアメリカ入国希望者が殺到するという異常な現象が起きている。

しかも入国を希望しての入国手続きを待つ間に未成年の男女が違法に密入国する、あるいはさせられるというケースが激増した。そのなかには新型コロナウイルスの感染者が多数、発見され、アメリカ当局の懸念を二重三重に高めている。

アメリカのメキシコとの国境での違法入国者急増の異様な実態は、3月30日、国境警備当局が公表した幼児投げ込みのビデオでも全米に改めての衝撃を広げた。このビデオはアメリカのニューメキシコ州サンタテレサ地方の国境の壁に夜間、メキシコ側から二人の男女がよじのぼり、小さな幼児二人をそれぞれ持ち上げて、アメリカ側にぶらさげ、投げ落とす、という光景をまざまざと撮っていた。

女の幼児たちは後に密入国業者と断じられた成人男女により、それぞれ壁から米側に釣り下ろされ、地上4メートルほどのレベルから地面に落とされた。幼児たちはしばらくして起き上がり、歩き出した。そしてアメリカ側の国境警備当局に保護されたわけだが、3歳と5歳の姉妹で、南米のエクアドル出身と判明した。当局は姉妹の親などが業者に代金を払って依頼してアメリカへの密入国を図ったと断定した。

こうした現象はバイデン大統領がトランプ前大統領の移民政策を逆転させ、まず就任と同時にトランプ政権がそれまで構築してきた国境沿いの壁の建設を停止する、という背景から生まれてきた。この壁は計画の4分の3ほどが終わっていたが、バイデン大統領の1月20日の就任の直後に全面的なストップとなったわけだ。

▲写真 ティファナ 米墨国境に建設された壁 出典:Mario Tama/Getty Images

同時にバイデン大統領は中南米諸国からメキシコ領経由でアメリカへの違法合法の入国を求める人たちへの政策をトランプ政権よりも全面的に緩和した。とくに18歳未満の密入国者に対しては基本的に全面送還というトランプ政権の政策を変えて、アメリカ側に待機させて、入国審査を進めるという対応となった。

バイデン政権のこうした未成年優遇の結果、中南米諸国側では幼い子供を家族と一緒ではなく、単独でアメリカ国内に送りこんだほうが家族全体にとっても得策という認識が広まったという。子供たち自身がまずアメリカ入国を認められれば、それに付帯して保護者としての家族のアメリカ入国も許されるという展望が期待されるわけだ。

▲写真 バイデン米大統領 出典:Drew Angerer/Getty Images

さらには子供たちが違法な手段でもアメリカ国内に入れば、すでにアメリカ側にいる親類などが保護を引き受けるという事例も多いのだという。

アメリカの国境警備局の所属する国土安全保障省の発表によると、3月はじめまでの1ヵ月間にメキシコ国境からの違法入国者の数は約11万人となり、その以前の1ヵ月間からの約30%増となった。このうち未成年者の密入国は合計1万8千人ほどで、前の1ヵ月間からの60%増となったという。

アメリカ議会でもこの異常な状況に深刻な注意が向けられ、3月下旬には共和党のテッド・クルーズ上院議員らが主体となって、上院調査団がテキサス州の国境地帯を視察した。この際に調査団が訪れたテキサス州ドナ市の難民収容所では通常の収容定員250人の施設に約4000人もの子供が収容されていた。さらにそのうちの約10%が新型コロナウイルス感染者という衝撃的な結果が判明したという。

バイデン政権もこの事態に重大な関心を払い、3月下旬にはカマラ・ハリス副大統領を国境地帯の視察と緊急対応策の実施のために送りこんだが、4月1日までにはまだ公式の報告を発表していない。

バイデン大統領はさらにアメリカ国内にすでに滞在している合計1100万人ほどの違法入国の外国人に対しても、基本的にみな永住やアメリカ国籍取得を認めるという寛大な方針を発表した。バイデン政権のこうした姿勢についての情報が中南米諸国に広がり、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルといった国々からメキシコを経由してのアメリカ入国の人の流れが急増したという。

この違法入国者の急増はすでに議会の共和党側だけでなく、ニュースメディアや一般国民の間でも批判を生んでおり、こんごのアメリカ国政の場でバイデン政権にとっての悩みの種ともなっていくことは確実となった。

トップ写真:米国への入国を求める中南米からの移民(2019年2月1日 米テキサス州-メキシコ国境) 出典:John Moore/Getty Images




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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