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.政治  投稿日:2020/6/20

「大きな塊にしてうねり作る」国民民主党前原誠司元外相


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

編集長が聞く!

【まとめ】

・前原誠司元外相は日本維新の会馬場伸幸幹事長と共に、地方分権の勉強会を立ち上げ。

・参加者は47名、今後もっと増える見込み。

・超党派で安全保障の勉強会も開催している。

 

河井克行前法相とその妻、案里参院議員が公職選挙法違反(買収)容疑で、そろって逮捕されるなど、安倍政権の基盤が大きく揺らいでいる。

6月16日に日本維新の会馬場伸幸幹事長と共に、地方分権に関する勉強会「新しい国のかたち(分権2.0)協議会」を立ち上げたばかりの国民民主党の前原誠司元外相に話を聞いた。

 

安倍: 現政権の気のゆるみが顕著だ。有権者の見る目はどうか?

前原: これまで株価が良かったので、まあいいんじゃないかという雰囲気はあった。従来からずっと言ってるように、アベノミクスは金融緩和1本足だ。金融緩和で資産価値が上がるから、株価は上がる。金利を下げると、円安になる。円安になると株価が上がる。結局この7年余り、岩盤規制にドリルで穴を開けると言っていたが、何やってきたのか。

「桜を見る会」の問題も、誰がどう考えても嘘をついてる。そして森友・加計問題では、財務省の佐川理財局長が完全に嘘ついて総理を庇ってるなと。桜を見る会では、安倍事務所がシュレッダーを内閣府に命じて、ホテルニューオータニにも領収書なかったものにしろと(命じた疑惑がある)。挙句の果てには、その黒川弘務前高検検事長の辞任があった。

成長戦略も、ふわっとしたものだったが、ここに来ていよいよ中身があまりないことが分かってきた。長期政権のおごりここに極まれり、という感じだ。特に女性の支持がなくなってきているのではないか。男性の支持はまだ一定数はあると思うが。

安倍: その勉強会の初会合で41名、立憲民主党からも1名きたそうだが、野党再編の動きとの見方もある。

前原: もともと民主党政権の1丁目1番地は地方主権改革。一括交付金の導入とか、補助金のルールの簡素化、国の紹介事業の見直しとか、様々な取り組みをやった。自民党政権に戻ってから一括交付金もなくなった。

彼らにとって、国から地方へのお金はひも付きでコントロールできるし、業界団体に対しても恩が売れるということで、中央集権+国のコントロールは大事なことだ。

でもそれが今回のコロナで、知事さんが目立った。これの1つの大きなポイントは、休業要請をしたにもかかわらず保証がなかった。しかし地方交付税、地方創生臨時交付金は保証してもいいよと言うことになったが、地域の財政力が違うから、東京はお金出せたが、他のところはちょこっとしか出せなかった。そういった不満も見えたし、やっぱり東京は財政力があったんだ、うちの地域はなかったんんだ、とわかった。いろんな工夫で評価受けた知事もいればそうでない知事もいた。知事の力量次第でいろんなことがやれるんだということが可視化された。

私は地方主権の目的はそこにあると思っている。地域が競いあって様々な知恵を出し、日本全体が活性化していく。こういう状況をさらに推す良いチャンスが来たのではないか。

つまり権限と財源をもっと地域に渡し、国は国家戦略に集中しなきゃいけない。地域の細かな箸の上げ下ろしまで国がとやかく言う仕組みこそがまさに、日本が世界の中で取り残される原因になっている。地域を元気にすることと、国の役割を明確化すること、そして戦略的な国会が出来るような仕組みにしていくことが今回の勉強会の目的だ。我々ももう一度しっかりと連帯していこうということだ。

安倍: 国民民主党に入党届を出した山尾志桜里さんは誘わないのか?

前原: いや、してます。共産党とN国以外の方には全員送ってますから。皆さんお送りしてます無所属の方も。

安倍: 与党からは?

前原: いやこれは野党でしっかりと軸を立てる、ことが大事なので。入会は47人。昨日出席が41人。今後増えていくと思う。

安倍: やはり第三極が気になる。

前原: 結果としてどうなるかはわからないが、国民が求めているのは、理念とか何をやりたいのかで協力する事だ。選挙のために合流、協力しているのが見えたり、それだけで集まっているように見える動きは良くない。

やはり、地方分権とか、憲法とか、あるいは私がこだわってる教育の無償化だとかが大事だ。自分の国は自分で守る事はもっと大事だし、そういう価値観をちゃんと共有しないとやはり大きなうねりにはならない。数は力ですから。権力を取るためには数は必要だが、やはり何をこの国のために政治家としてやろうとしているのか、それは絶対必要だと私は思う。

安倍: 今がある意味チャンスであり、野党再編のうねりに持っていきたいのでは?

前原: そうしないといけない。いずれにせよ国民民主党の支持率は1%ない。それぞれの議員がどういう問題意識を持つかだ。権力の維持とか議員でさえ居ればいいとか思うんだったら、そんなうねりは二度と起きない。何をしたいかを突き詰めていって、仲間と鍛錬して、それを実現したいと思うはず。であれば仲間に声をかけて大きな塊にしていく。そしてうねりを作っていくのは当然のことだ。まずは問題意識を共有できるかどうかが大事で、順番を間違えたら絶対に物事は成就しない。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

安倍: 北朝鮮問題はどう分析しているか?

前原: 1つは金与正をプレーアップ(大きく見せる、の意)する狙いだろう。金正恩は相当体調が良くないんじゃないか。あれだけの体型しているから、心臓なのか内臓なのか、疾患があっても不思議ではない。すぐさま行政執行能力がなくなる事は無いと思うがやはり白頭山の血統の中で、軍の経験がない妹をああいう派手な演出で彼女の存在感を高めるという狙いが1つ。

もう一つは、北朝鮮は困ってると思う。困ってる時は何かやってくる。ミサイル、核開発の中での経済制裁にコロナが追い打ちをかけて、急遽中朝国境を閉鎖せざるを得なくなり、かなり困窮した状況が続いていると思う。言ってみれば炎上商法というか、危機を煽り立ててどこかで話を持つチャンネルを作る。経済的な支援を聞いてくれそうな所はどこかと。今だったら文在寅しかいないという気がする。

ただ暴発的なことも含めて危機が高まっている事は明らかだなので、それはちゃんと対応しなければいけない。イージス・アショアの問題は、結果的には良かったと思っている。イージス・アショアのミサイル、SM3ブロックIIでは、今の北朝鮮のミサイルの軌道では打ち落とせない。巨額の費用がかかるのに、新たな北のミサイルに対応できないのであれば、一旦これを見直して、対応できる新たな仕組みを代わりにしっかりと導入することが大事だ。

1つ言えるのは、給付金300,000円が100,000円になった。昔は、政府与党が決めるものは重いものだった。マスクにしても、返品をしなきゃいけないようなものが来る。イージス・アショアも、国として絶対日本の安全にとって必要なんだと言ってるものが、ブースターが外に飛び出ちゃう。秋田のケースはGoogle マップから取って角度が違った。無茶苦茶な行政の執行能力の劣化に呆れる。もっとちゃんとしたものを出してきてよと言うふうにだんだん強くなってくる。

おそらく、イージスア・ショアもトランプ大統領が安倍首相にこれ買えと(言った)。バイ・アメリカンだということで、わかりましたと(安倍首相は言った)。F35を追加で100何機も買うことにしたのもトランプ大統領から言われて導入しますと言って、そこから後付けでやるからいけない。ワンクッション置いてイージス・アショアを導入する事について検討すればいい。そして技術的なものはどうクリアするかということをブースターの話も含めてちゃんと検証してからやれよと(言いたい)。

安倍: やっぱり拙速にすぎると。

前原: 安倍さんが長く総理やられて、強くなって、トップダウンで物事を決めることが多くなってこういった問題を生んでいる。閣内のハレーションだけだったらいい。例えば安倍さんと菅さんが疎遠になってきたとか。アベノマスクの全国一斉給付も、菅さんは聞かされてなかったとか、それぐらいならまだと言う話だ。

しかし、防衛の話で、中国、ロシアも含めてイージス・アショアを警戒感を持って見てたものが、「断念します」とは、なんだこれって、日本を甘く見ますよね。これが私は1番今回ショッキングなことだ。出生率1.8にしますと言ったが、どんどん下がってきてて、それに対しての責任は取らない。いろんな大臣がやめる。(安倍首相は)「全て私の責任です」とか言うけれども、何の責任も取ってないし、反省があったように見えない。本当に末期的な感覚を受ける。

 

【インタビューを終えて】

前原氏は、自民党の石破茂元幹事長、中谷元元防衛相、長島昭久衆議院議員、公明党の佐藤茂樹衆議院議員らと超党派の勉強会「日本の安全保障を考える議員の会」を立ち上げている。安全保障の問題は当然のことながら憲法改正問題に繋がる。

重要な国家の課題に超党派で取り組むことは大きな意義がある。維新の会と立ち上げた地方分権の勉強会と共に、国家ビジョンの再構築を急がねばならない。

「数は力なり」と明言した前原氏。コロナ禍の裏で、東アジアのパワーバランスは着実に変化している。尖閣諸島周辺の領海外側の接続水域では、連日、中国海警局の船が航行しているのが確認されている。6月19日時点で67日連続だ。朝鮮半島では、北朝鮮が開城市にある南北共同連絡事務所を爆破するなど、緊張が高まっている。

永田町に9月解散説も流布される中、野党に取っては久々のチャンス到来だ。与党だとて安閑とはしていられないはず。東京都知事選は小池百合子候補再選でしかたない、などとのんきに構えている場合ではないだろう。すでに号砲はなっている。

(このインタビュ-は2020年6月17日に行ったものです)

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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