無料会員募集中
.政治  投稿日:2024/7/3

【都知事選、本当の争点】⑦ 蓮舫さんの公約=本物の行政改革?


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・蓮舫候補の提示した政策は素晴らしい面も多いが、不足面もある。

・本当に必要な「本物の」改革を進める基盤づくりを提言している。

・外苑問題は、なぜ東京の再開発全体をテーマに入れないのか。

 

蓮舫さんの演説を阿佐ヶ谷駅で聞いた。「(困っている都民のことを)どうして想像できないか?」という投げかけ。「婚活アプリはいらない」、「水道事業者が訪問しないで水道を止める・・・それが行革なのか?」と様々な問題提起を行っていた。弱者の立場でのその意見にを感じたが、彼女が提示した細かい政策は素晴らしい面も多いが、不足面もある。見てみよう。

■ 小池都政への強烈なカウンター

▲図 蓮舫7つの約束 トップページ 出典:蓮舫7つの約束

7つのゼロに対して問題提起。「7つの約束」という皮肉でカウンターを浴びせている。

・トップダウンでかつ、理由が不明確な政策決定が見受けられるリーダーシップにたいして「ボトムアップの政治を目指す」、「意思決定プロセスの透明化」を提示。

・「介護離職ゼロ」という過去の7つのゼロの1つにたいして「認知症対策を強化し、介護のために離職をしないで済む社会にします」と提言。

こうした政策に加え、「経済的・社会的な不利益や、「なぜ?」と思う不合理の解消などに向けた取り組みを進めます」といったリベラル色が強いものの明確な理念を提示していて、これこそ既存の政治に対抗軸を打ち立てているようにも思える。

▲図 蓮舫7つの約束 トップページ 出典:蓮舫7つの約束

そのほか、都と契約する企業に働く人の待遇の改善を要請する条例、非正規格差解消、個別トイレ・トレーラー、ペット同伴避難検討、住民税非課税世帯への家賃補助、多摩地域の給食無償化、など恵まれない人への配慮やサポートなど、理念に沿った政策を提示している。そして、その政策の必要性、その根拠を「今の東京」として現状分析結果を示している。

■ さすがの行革

そして、行革について。事業評価の対象を毎年全事業で実施、東京版・行政事業レビューシート」の導入など、都民誰もが 「まっとうに」チェックできるガラス張りの都政を進めるそうだ。契約先は原則として公開、再開発の前提となっている「公園まちづくり制度」の適用プロセスや環境アセスメントを、もう一度厳格に検証などなど。長年筆者が主張して、本当に必要な「本物の」改革を進める基盤づくりを提言している。

■ 今後の課題

しかし、行政経営・政策評価の専門家から言わせてもらうと、全体的に独自性が薄い・弱い。

・リスキリング

・高齢者や子どもの見守りネットワークづくりを応援

・商店街のにぎわい支援や中小企業支援などにこれからも力を入れつつ、 起業やスタートアップ支援などで新しいビジネスチャンスを徹底的に支援

国が経済界とともに進めていているリスキリング政策の現状分析が不十分であること、この都会で実際のコミュニティを作ることの非現実性商店街のこれまでの過剰な支援の公平性・妥当性などとっても残念だ。

まとめると、筆者が提起した以下の「7つの条件」、蓮舫さんなら条件を満たせる政策を推進できる能力がある。

【条件1】東京都の利権構造にメスが入る

【条件2】特定の既得権益の方々が利権をむさぼらない

【条件3】政策立案過程がオープンにされている

【条件4】情報公開が十分されていて政策検証ができる

【条件5】客観的な評価に基づくワイズスペンディング(賢い支出)、適切な予算が執行される

【条件6】都民の満足度や納得度が高い

【条件7】環境や子育てなど先進的な政策を推進する

投資対効果、事務事業評価の基本、ボトムアップの政治、双方向の対話、納得いくまでの説得コミュニケーションなど「新たな都政」のイノベーションを期待できる。

その意味で「都民投票」をぶち上げた外苑問題。外苑前の問題だけに絞るのはどうかと思う。なぜ、東京の再開発全体をテーマに入れないのか。コンプライアンスは問題ないが、裏でいろいろと利権もうごめく「神宮外苑」をはじめとした過剰かつ巨大な都市再開発についてどう考えるか、という点にこそ切り込んでこその蓮舫さんではないかと思うからだ。蓮舫さんに期待したい。

<注>本文は筆者の専門家としての意見であり、公平中立に評価したものです。これら意見は、所属組織には関係ありません。

トップ写真:街頭演説する蓮舫候補 東京都杉並区(筆者撮影)




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."