[安倍宏行]<AKB48握手会襲撃事件>警備体制の見直しによるコスト増が握手会ビジネスを失速させる
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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事件が起きたのは岩手県滝沢市。AKBは東日本大震災の被災地支援として、2011年5月から被災地訪問や握手会を開いているという。被災地の人たちを元気づける素晴らしい活動を続けていたAKBのイベントだっただけに残念だ。ネット上では、ファンの間でも岩手県で事件が起きたことを嘆く声がみられた。
筆者が真っ先に思ったのは警備体制だ。ファンとアイドルが直接触れあることができる、という親しみやすさがAKBの売りだったわけだが、それが裏目に出た。とはいえ、当日現場には100名の警備員がいたとのことだし、それなりの体制は敷いていたのだろうが、ランダムな荷物検査と、握手前に手のひらを広げさせての目視チェック、「剥がし」と呼ばれる握手時間を管理するスタッフ配置のみでは、こうした事件を防ぐことは難しいだろう。
AKB48劇場の湯浅洋支配人も今後の警備体制の見直しに言及しているが、少なくとも、空港並みの、金属探知機や手荷物X線検査機、身体検査は必要となってくるのではないか。
そうなると、主催者側としては大幅なコスト増になり、興行的に考えれば、握手会などを中止するとの判断に至る可能性もある。しかしそれは同時に、AKBの存在意義でもある、「会いに行けるアイドル」というコンセプトから離れることになり、人気や握手券を特典として販売を伸ばしてきた限定版CDの売れ行きにも影響が出よう。難しい判断を迫られる。
一方、今やアジアにもその人気が拡大し、クールジャパンの象徴でもある日本のアイドル・グループを襲った事件は、安全と水はただ、と思っている日本社会にも警鐘を鳴らしている。 一度日本を出れば、いかに日本が安全な国か容易にわかる。それは素晴らしいことだが、人と人とのつながりが希薄になっている現代社会は、かつての日本ほど平和で安全ではない。
自殺者が依然年間3万人いる国であり、駅構内での刃物による殺傷事件も皆無ではない。サリンによる大規模テロですら起きた国なのだ。オリンピックは6年後、既に海外からの旅行客は前年を上回るスピードで増えている。安全の確保は急務である。
今回の事件を契機に、公的な場所における「安全」の確保について、改めて真剣に検討すべきだろう。特に人が一極集中している東京都は待ったなしだ。また、私達も自らの身をどう守るか、普段から考える癖をつけておきたい。最後に身を守るのは自分なのだから。
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