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.政治  投稿日:2022/10/20

「地区ごとの公共交通」乗り継ぎの課題は 「高岡発ニッポン再興」その29


出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・市の財政が改善し、住民から「コミュニティバス復活」を求める声。

・市は財政負担が軽い、乗り合いタクシーなど地区ごとの公共交通システムを導入へ。

・増加する免許返納者に対応するため、住民がもっと乗りやすいシステムで市全域への拡大を目指すべき。

 

私は最近、複数の市民からこんな厳しい声を聞きました。

「財政が良くなったのだろう。だから、コミュニティバスは復活するんだろうな」。

高岡市では2017年秋に、40億円もの財源不足が発覚しました。そのため、「財政健全化緊急プログラム」を策定。歳出と歳入がトントンになるよう目指すプログラムで、補助金のカットなどを打ち出しました。その際、コミュニティバスも廃止しました。

「財政健全化緊急プログラム」の期間は5年だったのですが、この春、1年前倒しで、実現されました。国からのコロナ交付金もあり、高岡市の財政状況は急速に改善したのです。

市民の目からすれば、次はコミュニティバスの復活を期待してもおかしくありません。しかし、高岡市が取り組んでいるのは、かつてのコミュニティバスではありません。

写真)高岡市内を走る路線バス

出典)筆者提供

地区ごとの公共交通です。つまり、乗り合いタクシーなどです。こちらは市民協働型地域交通システムと呼ばれています。対象となっているのは、守山地区、野村地区、中田地区です。まずは地域内での移動です。そして、地域の外に行きたいなら、従来からある路面電車である万葉線や、民間の事業者の路線バス、加越能バスに乗り継ぐようにというのです。「高岡型コミュニティ交通」です。

今回の交通システムは、基本的には「実証実験をやりたい」と手を上げた地域で、実施する仕組みになっています。市当局も出前講座などで働きかけた結果、3つの地区が手を上げたと胸を張ります。

こうした乗り合いタクシーなどは、高岡市の大動脈である万葉線や加越能バスへの乗り継ぎを想定しています。しかし、利用者の利便性から考えると、さまざまな課題が想定できます。乗り継ぎや待ち時間。さらには初乗り運賃が何度も発生します。利用者の増加につながるかどうか疑問です。

市民への課題が浮き彫りになる一方で、市の財政負担は軽いシステムになっています。野村や守山の場合、乗り合いクシーの運行および運行管理をすべて地元タクシー会社に委託します。その場合は、運行経費の3分の1、上限100万円になっています。一方、中田の場合は、運行は、地域の方々の自家用車です。運行管理だけ地元タクシー会社になっています。その場合は運行経費の2分の1、上限200万円まで出ます。

住民が主体的にかかわればかかわるほど、補助金が大きくなるのです。汗を流す住民にはメリットが大きいというのです。一方、市の財政負担は最小限に抑えています。補助金を単純に足すと、3つの地域でわずか合計400万円です。

こうした市のスタンスの背景は、先にご紹介した、2018年に廃止となったコミュニティバス「こみち」のトラウマがあるという指摘があります。

こみちは、オレンジルートとブルールートの2つありましたが、結局、乗客数は少なく、廃止となりました。とりわけ深刻だったのは、ブルールートです。地元からの要求で運行が始まったにもかかわらず、乗車数は低迷しました。

「住民は要求しても、実際には乗らない」。そんな考えが市当局にあるような気がします。それでも、私は、市が率先して、住民がもっと乗りやすいシステムにしなければならないと考えます。そして市全域への拡大を目指すべきだと思っています。

その理由は、免許返納者です。運転免許を返上した人は、平成29年は619人でしたが、令和元年には800人を超え、令和3年も795人と高止まりしています。令和2年、3年は減少していますが、コロナが落ち着けば、免許返納の人は再び増える可能性があります。免許返納者に対処しなければならないのです。

それでは、高岡市はコミュニティバスを復活する可能性はあるのでしょうか。次回はそれをお伝えします。

写真)高岡市内を走る万葉線

出典)筆者提供

 

トップ写真:2018年に廃止された高岡市のコミュニティバス「こみち」ブルールート車両

出典:国土交通省ホームページ

 

 




この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家

1964年富山県高岡市生まれ。

富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。


90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。


テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。


その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。


21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。

同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。

同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。

出町譲

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