人口減少と博物館移転 「高岡発ニッポン再興」その46
出町譲(高岡市議会議員・作家)
【まとめ】
・驚くべき、高岡市の人口減少のスピード。
・公共のハコモノ施設は巨額の費用で建築しても、その後の方が、大きな負担になる。
・議会で急浮上した高岡市立博物館の移転話。
高岡市議になって1年余りたちました。この間、最も驚いたのは、高岡市の人口減少のスピードです。昨年度は、1699人減少しました。5年前は、1078人の減少だったのですが、毎年、つるべ落としのように人口が減っています。人口減少は、社会の隅々までジワリと影響します。
厳しい現状、「不都合な真実」から目をそらすわけにはいきません。我が会派、高岡愛では、人口減少緊急事態宣言を出すべきだという認識をしています。人口減少に対応するため、政策を総動員すべきだと思うのです。結婚、出産、子育て、移住政策だけではありません。都市計画、公共のハコモノ施設も人口減少に合わせ、身の丈に合う政策を打ち出すべきなのです。
新規にハコモノ施設を建設することには、慎重な立場になるべきなのです。財政が豊かで自主財源で建てるなら、まだいいのですが、多くの場合、借金である地方債などに依存します。お金を借りれば、今後長期にわたって将来世代への重荷になるのです。人口が減っている中、一人一人の負担は大きくなるのです。
一般に、公共の箱物施設を建設すると、年間の維持管理費は総事業費の5%かかると言われています。今、市民会館の建設を望む声がありますが、100億円程度かかる可能性があるとの意見も聞いています。
本体工事費、用地費に加え音響・照明施設などにも相当な費用がかかるほか、このところの資材価格の急騰もあるからです。
その場合、維持管理費は年間5億円程度かかるのです。人件費などが発生するからです。さらに借金の返済額も含めると、毎年10億円かかるのです。
こんな金額を言われても、ピンとこないかもしれませんが、高岡市が財政難で、廃止した2つのルートのコミュニティーバス「こみち」は年間、4000万円かかっていました。コミュニティーバスは、費用対効果の低い代名詞のように言われていますが、100億円の市民会館の場合、維持管理費と借金の返済で、その20倍以上の費用がかかるのです。それが将来世代への負担になります。人口減少は避けられません。公共のハコモノ施設は巨額の費用で建築しても、その後の方が、大きな負担になるのです。
そんな中、私が驚いた動きがありました。高岡市立博物館の移転話が去年9月の議会で急浮上したのです。角田悠紀市長が移転の意向を表明したのです。美術館に博物館機能も集約し、一体的に再整備するとのことです。つまり、美術館の増築、もしくは、博物館を新たに建設する方向となったのです。また、新たなハコモノ施設が生まれる可能性があるのです。
博物館は1951年に建設された古い建物です。しかも、古城公園は国の史跡。その場所で新たに造るのは、困難です。しかし、博物館を古城公園の外への移転は、財源のこともあり、長い間、そのままになっていました。急に財政が良くなったわけでもないのに、移転話はなぜ、今急浮上したのでしょうか。私は12月議会で、急浮上した博物館の移転問題について質問しました。
トップ写真:人口減に悩まされる高岡市の中心街(筆者提供)
(つづく)
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この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家
1964年富山県高岡市生まれ。
富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。
90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。
テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。
その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。
21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。
同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。
同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。