渋谷最大級のランドマーク「渋谷サクラステージ」誕生 「広域渋谷圏」とは
Japan In-depth編集部(黒沼瑠子)
【まとめ】
・東急不動産が開発を進める「広域渋谷圏」において、渋谷駅中心地区の最後のパーツとなる「Shibuya Sakura Stage」が竣工・開業予定。
・広域渋谷圏では「働く」「暮らす」「遊ぶ」が融合した渋谷型都市ライフを実現し、国際競争力の強化に資する都市機能が期待される。
・「デジタル」技術をふんだんに使いつつ、ネイチャーポジティブにも注目した「サスティナブル」なまちづくり目指す。
渋谷といえば、国内外に知られた東京の繁華街。渋谷駅は、JR東日本の山手線・埼京線・湘南新宿ライン・成田エキスプレス、東京急行鉄道田園都市線・東横線、京王電鉄京王井の頭線、東京メトロ銀座線、半蔵門線、副都心線などが乗り入れている一大ターミナル駅だ。
スクランブル交差点、ハチ公像、若い女性に人気で「マルキュー」の愛称で親しまれているファッションビル109は、海外にも広く知られており、普段でも訪日外国人旅行客であふれかえっている。最近では、「ハロウィンに来ないで」との区長の呼びかけでも話題となった。
そんな渋谷の再開発が今佳境に入っている。訪れた人ならわかるが、JR東日本の渋谷駅周辺は、高層ビル建築ラッシュで、ホームの移動や、かさ上げなどの大工事が続いており、歩行者は日々変わる動線に戸惑いを隠せない。
写真)Shibuya Sakura Stageの37階から渋谷駅前スクランブル交差点方面を望む。右側の建物がスクランブルスクエア。JR東日本渋谷駅は現在工事中。
ⓒJapan In-depth編集部
渋谷再開発を主導する東急グループは、「Greater SHIBUYA 2.0」戦略を掲げている。これは当グループが定める渋谷駅半径2.5km圏内のエリアを「広域渋谷圏」と位置づけ、渋谷まちづくり戦略で、「働く」「暮らす」「遊ぶ」が融合した「渋谷型都市ライフ」を提案することで持続性のある街を目指すというものだ。
『Greater SHIBUYA 1.0』よりも「暮らす」の要素により着目し、3要素を融合させつつ、その基盤となる「デジタル」、「サステナブル」にも取り組むことで渋谷ならではのまちづくりを推し進めている。
図)『Greater SHIBUYA 2.0』戦略のイメージ図
©︎東急不動産
渋谷駅から半径2.5km圏内にはどのような地域が含まれるかというと、原宿、表参道、青山、代官山、代々木、広尾、恵比寿、中目黒など、一度は耳にしたことがある地名がすっぽり含まれる。現在、①渋谷桜丘②原宿・神宮前③代官山④代々木公園という4つのエリアでプロジェクトが進行している。それぞれの地域が点ではなく面として有機的につながり、人が回遊することで賑わいや発信力を増幅していく狙いがある。
図)Greater Shibuya 出典)東急不動産
まず、原宿・表参道のど真ん中に新たなランドマークが誕生する。
それが、東急プラザ原宿「ハラカド」だ。
■ 東急プラザ原宿「ハラカド」
5月の記事、「東急グループ『広域渋谷圏』を加速」で詳しく紹介しているが、2024年春に開業するのが東急プラザ原宿「ハラカド」だ。JR東日本の原宿駅と東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線の表参道駅から近い神宮前交差点の一角で、”新たな文化発信拠点”として開発が進められている。
写真)東急プラザ原宿「ハラカド」 2023年5月31日撮影 東京・渋谷 ⒸJapan In-depth編集部
同時に、同じく神宮前交差点にて営業中の「東急プラザ表参道原宿」を「東急プラザ表参道「オモカド」」に改称する。(2024年度以降予定)
これらの施設名には「かど」と「かど」が合わさることで人と人の出会いの交差点となり、新しい文化を創造、発信していくという思いが込められている。
「ハラカド」は、クリエイターが集い、新しい文化が生まれる場を目指しており、各分野の第一線で活躍するクリエイターがプロデュースするエリアを設ける。2024年の春に開業予定で現在も建設が進められている。
写真)東急プラザ表参道原宿あらため、東急プラザ表参道「オモカド」ⒸJapan In-depth編集部
■ 代々木公園Park-PFI計画
一方、代々木公園エリアでは「代々木公園Park-PFI計画」が進められている。「都市と公園をつなぐ」をテーマに代々木公園と渋谷や原宿を繋ぎ、回遊性を高める拠点を目標としている。
写真)代々木公園Park-PFI計画完成イメージ
出典)東急不動産株式会社
キーワードにはスポーツとウェルビーイングを挙げ、東京オリンピックで話題となったスケートボードが利用可能なアーバンスポーツパークや緑に囲まれた中で多様な食を楽しむことが出来るフードホールが整備される。2024年春の供用開始を目指している。
表参道から原宿、そして代々木へと、広域渋谷圏の「面」の部分が強化されつつあるのがわかる。
■ 「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」
そして、渋谷区屈指のオシャレな街代官山に、住宅併設の複合施設、「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」が2023年10月19日オープンした。「職・住・遊近接の新しいライフスタイル」を目指す。地下2階、地上10階建てで、地下1階から地上2階までは商業施設、3階はシェアオフィスで、57戸の賃貸住宅が入居する。
写真)「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」外観 ⓒJapan In-depth編集部
特長的なのはなんといってもその立地だ。東急電鉄東横線代官山駅の目の前に建つ。 賃貸住宅や商業施設が入居するMAIN 棟のデザイン設計を手掛けた建築家隈研吾氏は「洞窟」をイメージしたという。どういうことか。
駅の改札を出て目の前のエントランス部はすでに木々に覆われている。そのままMAIN棟にたどり着くと大きなトンネルのような空間に吸い込まれていく。通り抜けると、そこは八幡通りだ。
「学生の時から代官山で遊んでいて、その静けさや緑の影を再生したいと思っていた。建物の中の洞窟に結界を作り、そこを通って別世界に行くという、そんな洞窟性を具現化した」。
写真)MAIN棟のエントランス部。中央奥が隈氏の言う「洞窟」の入り口だ。高さのある木々が訪れる人を迎えてくれる。ⒸJapan In-depth編集部
植栽デザインを担当したのは、植物のプロ集団「SOLSO」代表で造園家の齊藤太一氏。テーマは「森のすみか」。約400種の植物のうち、高木はケヤキやカシなどの在来種、低木は花や葉っぱ、色、香りなどに特徴のある園芸種を使っている。「リジェネラティブランドスケープ(環境再生)」を意識したという。もともと森だったこの地に、新たな森を作り出した。実際、敷地内、建物の中、踊り場。あらゆる所に緑がある。なにしろ、名前が「ForestGate=森の入り口」だ。
写真)MAIN棟の脇の抜け道。八幡通りから奥に進むとエントランス部につながる。ⒸJapan In-depth編集部
MAIN棟の手前にあるのがカフェやイベントスペースが入るTENOHA棟。もちろんこちらも緑豊かな空間だ。循環型フードを使ったカフェ「CIRTY CAFE」が入居。提供するメニューの野菜や果物は、カフェの食品残渣を肥料化した土で育てられたものなど使用。植物工場と屋上農園で育ったハーブを使うなど、サーキュラーエコノミーを強く意識した施設となっている。
図)TENOHA棟 出典)東急不動産
興味深いのは、株式会社イートクリエーターと東急不動産株式会社が開設した次世代に向けた新しい食文化づくりのプラットフォーム「日本食品総合研究所」だ。
写真)日本食品総合研究所 ⒸJapan In-depth編集部
目指すのは、食文化の創造だ。イートクリエーターを中心に、食に関わる人やコミュニティ、企業や自治体をつなげるハブとして、食にまつわるさまざまな企画・開発・製造・提供のサイクルを循環させていくプラットフォームとして機能させるという。これまでに例のない試みだ。
ラボラトリー&ファクトリー「研究所」、テストキッチン「調理室」、グローサリー「食品庫」、カフェ&ワインバー「喫茶室/ Mary Jane」の4つのスペースで構成される。すでに料理人とおぼしき人が「調理室」で料理を作っていた。キッチンというよりちょっとした工場のようだ。自前で場所を借りると賃料などが負担となるが、ここを使って実験的に料理を作り、試食会やテスト販売を行うことも可能だ。新たな食文化とビジネスがここから生まれるかも知れないと思うとわくわくする。
写真)「日本食品総合研究所」のテストキッチンで調理を行う人 ⒸJapan In-depth編集部
■ Shibuya Sakura Stage
そして「100年に一度の渋谷再開発」において、渋谷駅中心地区のラストピース、「Shibuya Sakura Stage」が満を持して11月30日に竣工する。竣工後、商業店舗等は順次オープンし、2024年夏まちびらきイベント実施予定。
写真)Shibuya Sakura Stage外観 (写真左側) 出典)Shibuya Sakura Stage
下図でわかるように桜丘(さくらがおか)地区に誕生するShibuya Sakura Stageは、JR東日本渋谷駅の線路と直角に交差する首都高速3号線をはさんで、渋谷スクランブルスクエアの対面、渋谷ストリームの反対側に位置する。渋谷駅山手線などが走る線路沿いのA街区を「SHIBUYAサイド」、ソメイヨシノ約20本を植え新たに整備した区道「補助線街路第18号線」(名称:SAKURAストリート)を挟んで位置するB街区を「SAKURAサイド」と名付けた。
図)
まちの回遊性を高めること、持続的なにぎわいを創出することで、東急グループが掲げる「渋谷の新たな玄関口の誕生~めぐり歩いて楽しいまちへ~」というコンセプトの実現を目指している。
・まちの回遊性の向上
「JR線や国道246号による分断の解消」
もともと桜丘は賑わいのある地区だったが、東京オリンピック開催時に開通した国道246号(青山通り)で渋谷駅と分断されてしまった。渋谷駅西口歩道橋を使って国道を渡らねばならず、同地区は孤立気味だった。それがShibuya Sakura Stageにより大幅に改善する。
2024年7月に完成予定の、渋谷駅とSHIBUYAサイドを結ぶ北自由通路、JR東日本の新改札口(12月1日に開通)で、駅からのアクセスは格段に向上する。従来、桜丘地区への移動には歩道橋などの高低差がネックとなっていたが、これらの完成によりフラットな移動が可能になり、桜丘地区の人々にとっての悲願であった駅との分断解消が達成される。
上り下りのない移動はバリアフリーの観点からも重要になる。新改札のそばには2027年にJR東日本新駅舎も完成予定であり、更なる活性化が見込まれる。
写真)北自由通路と新駅舎(左)。正面が渋谷ストリーム。下がJR東日本山手線などが走る線路。ⒸJapan In-depth編集部
また、Shibuya Sakura Stage内や周辺施設をつなげる歩行者デッキの拡充により、「めぐり歩いて楽しいまち」を目指している。
写真)SHIBUYAサイドとSAKURAサイドをつなげる歩行者デッキ(奥が恵比寿方面)©Japan In-depth編集部
「アーバンコア整備による縦型動線の創出」
写真)「アーバン・コア」 地下2階から上の階を見上げたところ。©Japan In-depth編集部
渋谷の谷状地形による高低差解消に一役買っているのが、地下2階から地上3階までを繋ぐブロンズカラーのエスカレーターで創出された縦軸動線「アーバンコア」だ。地下2階からは「渋谷フクラス」へと繋がる地下通路も開通予定であり、JR.渋谷駅とも地下で繋がる。まちをめぐり歩き、探索したくなるような構造だ。
・持続的なにぎわい創出
「働く」「暮らす」「遊ぶ」の相互作用
今回のShibuya Sakura Stageは、渋谷駅中心地区で唯一住宅が整備される。
「働く」
写真)37階のオフィス ©Japan In-depth編集部
SHIBUYAサイドの8〜37階は、渋谷駅周辺再開発において最大級の賃貸面積(約100,000㎡)を誇るオフィスとなる。
建物自体が駅や渋谷の他のエリアと多くの動線で結ばれることに加え、地下階・地上階どちらからでもスムーズにオフィスへ向かえるような幅広いアプローチが用意されており、洗練されたオフィスで快適に働くことができるよう工夫されている。
また、低層階の商業エリアが近いことから、働きながらもにぎわいを感じられ、新たなビジネスの創出が期待できる。
「暮らす」
渋谷中心地区で唯一整備される住宅、「ブランズ渋谷桜丘」や首都圏に初進出するホテルブランド”ハイアット ハウス”が提供するサービスアパートメント「ハイアット ハウス東京渋谷」など、「暮らし」にも重きをおいているのが本施設の特色だ。また、就学前の児童の子育てを支援する「CTIS Kindergarten,Shibuya」や内科/デンタルクリニック、処方箋薬局など、ビジネスパーソン・中長期滞在者・周辺居住者、全ての「暮らし」を支えるための施設が充実している。
「遊ぶ」
桜丘の「趣味を楽しむ」カルチャーを継承しつつ最先端のトレンドを取り入れて拡充するため、合計約100店舗のテナントの他、豊富なイベントスペース、ブルワリー、デジタルサイネージ、クリエイション拠点を設置、訪れた人々が集いカルチャーを体験・発信できるような場を提供していく。
「BLOOM GATE」
3階にあるイベントスペース「BLOOM GATE」はA/B/C3つのZONEがあり、豊富な用途でイベントやプロモーションに対応可能である。A/Bには大型LEDビジョンを常設、Cには厨房施設があり、これらを活用することで展示、物販、飲食などの複合型エンゲージメントを創出できる。
写真)BLOOM GATEのモニター ©Japan In-depth編集部
「3つのステージ」
訪れた人と働く人、暮らす人を繋ぐ交流の場を、STAGE(ステージ)と名付けた。最先端のデジタル技術や生い茂る緑で「にぎわい」創出を目指す。3ヵ所に設けられたステージを紹介する。
〇ときめきSTAGE・桜丘広場
アーバンコアで移動している間、大迫力の立体サイネージが訪れる人の目を楽しませてくれる。施設を訪れる人が探索したくなるような構造を意識した。
写真)ときめきSTAGEおよびアーバン・コアなどの吹き抜け ©Japan In-depth編集部
写真)立体サイネージ 映像によるさまざまな表現が可能。ⒸJapan In-depth編集部
〇にぎわいSTAGE
桜丘地区の住民の声で生まれた東京・渋谷・桜丘の新名所「しぶS(エス)」や、人流・気象データの活用によって音響と照明が365日違う景色をみせる空間演出で、人々が集い、にぎわうSTAGEとなる。
写真)街の新名所「しぶS」 SHIBUYA SAKURA STAGEの頭文字「S」をイメージしたオブジェ。ショッキングピンクに彩られ、存在感がすごい。 ©Japan In-depth編集部
写真)365日彩りを変えるイルミネーションの桜の木。ピンクに彩られたら夜間など幻想的な雰囲気になるだろう。 ©Japan In-depth編集部
〇はぐくみSTAGE
シンボルとなるヤマザクラを中央に植えた「はぐくみSTAGE」では、体を動かすリラクゼーションイベントや畑の利用など、緑と触れ合うことができる。この屋外広場を通して人との交流をはぐくみ、未来をはぐくみ、地域の交流をはぐくむことが目的だ。
写真)シンボルであるヤマザクラ。来春、開花したら訪れる人の目を楽しませそう。 ©Japan In-depth編集部
写真)はぐくみSTAGE内の畑 ©Japan In-depth編集部
〇404 NOT FOUND
画像)404 NOT FOUNDのコンセプト 出典)東急不動産株式会社
4Fには本屋や飲食店の他に、「一般社団法人渋谷あそびば制作委員会」などにより、世代や国、ジャンルを超越した多種多様なクリエイターが集まるグローバルクリエーション拠点「404 NOT FOUND」がオープンする。
中心となるカルチャーはインディーゲームで、日本最大級のインディーゲームの祭典”BitSummit”と連携することで国内外でのゲームクリエイターにとっての拠点を構築していく。
ただしあくまでコンセプトは「シブヤの空き地」であり、インディーゲーム以外にも様々なイベントを同時多発的に開催し、クリエイションの実験場としても利用していく。
・都市機能の強化
東急不動産は先に挙げた「渋谷の新たな玄関口の誕生~めぐり歩いて楽しいまちへ~」の他に、渋谷駅周辺で不足する生活環境の課題を解消しグローバルを視野にいれた生活支援施設を整備することによる「国際競争力の強化に資する都市機能の導入」もコンセプトに挙げている。
「暮らし」で紹介したサービスアパートメント、子育て支援施設の他に、渋谷最大級のディープテック・スタートアップ支援施設「Shibuya Deep-tech Accelerator」をマサチューセッツ工科大学の教授と共に開設したり、ビジネスパーソンの健康増進をサポートする国際医療施設を東京大学医科学研究所と連携して設立したりと渋谷の国際的なプレゼンスを高め、日本全体の国際競争力を強化しようとしている。
また東急不動産は「職・住・遊」を融合した環境先進都市を実現するために世界初となるIOWN先行導入をNTTグループと共に行った。これにより広域渋谷圏を消費電力を抑え環境負荷の小さいエリアへと変えるだけでなく、超高速かつ低遅延なIOWNサービスを用いて「職・住・遊」それぞれに次世代的なあり方を提案、世界に向けたモデル化を図っていく。
・食をキーワードにした新たな価値創造
筆者が注目したのは、2024年2月からShibuya Sakura Stage38階で運営される起業支援施設「manoma」だ。食を通じて、広域渋谷圏を舞台に活躍する企業や人、スタートアップの交流促進を活性化させる空間として誕生する。Forestgate Daikanyamaにもある「日本食品総合研究所」によって運営される。
キッチンも完備、カンファレンスやパーティー、トークイベントや新商品の発表、展示会など、さまざまなシーンで利用できるスペースとして活用する。38階からのパノラミックな眺望を楽しみながら、渋谷で活躍する人々の交流を促進するだろう。
写真)株式会社イートクリエーター執行役員栃澤克次氏(右)と松本雄司氏(左) ⓒJapan In-depth編集部
・広域渋谷圏の生物多様性 ネイチャーポジティブ
東急不動産は2014年から再生可能エネルギー事業に乗り出し、全国各地で太陽光発電や風力発電などを開発、サステナブルな社会の実現を目指している。当然、広域渋谷圏でも環境への配慮がなされている。
具体的には、広域渋谷圏の東急不動産グループが展開する39物件合計において、生物多様性の損失から反転し、回復傾向(ネイチャーポジティブ)となっていることが分かったという。
ネイチャーポジティブ(nature positive)とは、生物多様性の減少を食い止め、回復に向かわせることだ。2022年12月に開催された第15回国連生物多様性条約締約国会議にて採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」では、2050年ビジョン「Living in harmony with nature(自然と共生する社会)」のもと、2030年までに「生物多様性の損失を止め反転させ、自然を回復軌道に乗せるための緊急的な行動をとる」ためのミッションや23の具体的なターゲットが定められている。
ネイチャーポジティブの実現には、各企業・団体が事業におけるネイチャーポジティブへの貢献度を把握することが重要になってくる。TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース:注1)が推奨するLEAPアプローチ(注2)による評価により、東急不動産グループの広域渋谷圏のオフィス・商業施設および複合施設の建設前と建設後を比較した。
図)広域渋谷圏における商業地域の緑地面積割合と東急不動産39物件合計の緑地面積割合の比較 出典)TNFDレポート
こうした広域渋谷圏の環境への取り組みに見られるように、今後、再開発事業は、地域との共生を念頭に、緑の量や質の確保と来街者及び施設利用者の快適性を調和させた開発・運営を行うことが必要になってこよう。
図)広域渋谷圏の「エコロジカル・ネットワーク」 出典)東急不動産ホールディングス
注1)TNFD
自然関連財務情報開示タスクフォースのこと。ビジネス活動が生物多様性とどうかかわっているかを見える化し、資金の流れが自然再興に貢献しているかを示すことで、企業・団体が自身の経済活動による生物多様性への影響を評価し情報開示するという枠組みの構築を目指している。
注2)LEAPアプローチ
「Locate:自然と接点の発見」「Evaluate:依存・インパクトの診断」「Assess:リスク・機会の評価」「Prepare:対応・報告の準備」の4つのフェーズから構成されるアプローチ。
■ 広域渋谷圏に対する期待
このように着々と完成形に近づいている「広域渋谷圏」だが、訪れる人々はどのように感じているのだろうか。編集部は街頭インタビューを行った。(東急プラザ原宿「ハラカド」近くにて7月末実施)
①30代男性 サービス業
•ハラカドへの期待
これまでは若い人が客層の中心だったが、それがもっと広がるのではないか。
•急激に変化する広域渋谷圏についてどう思うか
あまり実感がない。
②20代女性 サービス業
•ハラカドへの期待
飲食店が増えるといい。(オモカドは少ない)
•急激に変化する広域渋谷圏についてどう思うか
街並みが入り組んでいるので、分かりやすくなってほしい。
③70代男性 無職
•ハラカドへの期待
15年ぶりにきたのでよく分からないが、古いものをもっと大切にしてほしい。
•急激に変化する広域渋谷圏についてどう思うか
人間の愚かさが現れていると思う。お金が一箇所に集中するようになっている。
④20代女性 サービス業
•ハラカドへの期待
飲食店が増えること。
•急激に変化する広域渋谷圏についてどう思うか
何ができるのかよく分からないし、意味はあまりないと思う。
⑤30代女性 公務員
•ハラカドへの期待
個性的なお店が多く敷居が高いので、入りやすいお店が増えてほしい。
•急激に変化する広域渋谷圏についてどう思うか
良い方に変わる分には良いと思う。まだ実感としてそういった部分を感じたことはない。
⑥20代女性 販売員
•ハラカドへの期待
銭湯ができる。下着屋なので新しい集客を期待。銭湯がこんなところにできるなんてこの辺が活気付けばいいな。
•急激に変化する広域渋谷圏についてどう思うか
東急すごいな。東急だからといって何かを感じたことはない。各々やっている感じ。
⑦20代女性 学生
•ハラカドへの期待
何ができるのかな?できるんだ、くらいの感じ。
•急激に変化する広域渋谷圏についてどう思うか
工事を結構しているなというイメージ。よくわからない。
⑧20代男性 学生
•ハラカドへの期待
何が入るのか知らないけど、銭湯もアパレルも好きなので嬉しい。
•急激に変化する広域渋谷圏についてどう思うか
知らない。特に何も思わず。
⑨10代男性 学生
•ハラカドへの期待
知らなかった。
•急激に変化する広域渋谷圏についてどう思うか
気がつかなかった。この辺にあまり来ないので。
⑩20代女性 会社員
•ハラカドへの期待
知らなかった。
•急激に変化する広域渋谷圏についてどう思うか
知らなかった。工事は来るたびにしているな、変わっているなとは思っていた。お店がいっぱいできると人が分散されていいなと思う。
4カ月前の街の声ではあるが、広域渋谷圏という概念が、社会に広く認知されているようにはまだ見えない。ただ、環境に配慮しつつ、点ではなく面で再開発を進める手法は、他の都市でも参考になると思われる。
広域渋谷圏が新たな価値を創造し、東京の中で独自の立ち位置を確保できるかどうかは、渋谷にかかわるすべての人々の意識にかかっている。
(了)
トップ写真:Shibuya Sakura Stage外観 ⓒJapan In-depth編集部