「高岡発ニッポン再興」その135「支援金、最大600万円」富山県にも適用を
出町譲(高岡市議会議員・作家)
【まとめ】
・政府、能登半島地震で石川県一部地域で生活再建支援給付金を最大600万円に増額する方針。
・しかし富山県や新潟県などの近隣地域は対象外とした。
・富山県でも住宅被害は深刻であり、公平な支援が求められる。
政府は、能登半島地震で石川県の一部地域で生活再建支援給付金を最大600万円に増額する方針を打ち出していますが、私は、石川県に限らず、対象を広げるべきだと考えています。全国知事会長の村井嘉浩宮城県知事も「石川県に限らず近県にも」とし、富山県や新潟県も対象に入れるべきだとの考えを示しました。
私も村井会長の考えに共鳴しますね。ぜひとも富山県も対象にしてほしいです。
政府は今回、高齢者や障がい者のいる家庭を対象に、最大で600万円に増額する方針を打ち出しました。これまでの最大300万円から倍増です。支給対象の地域は、輪島市、珠洲市、能登町など6市町を中心とする地域です。
どうして高齢者や障がい者なのか。政府は、金融機関などからの融資を受けにくいからと説明しています。しかし、それでは、若者の人口流出が加速すると批判が出ています。被災者が都市部の二次避難先で、そのまま住み続けるのではないかと指摘されています。
その後、岸田文雄首相は2月16日の能登半島地震の復旧・復興支援本部会合で、対象者を増やす方針を示しました。資金の借り入れや返済が困難な若者世帯を追加する方向です。
▲写真 能登半島地震の余波で道路沿いに倒壊した家屋(2024年1月4日 石川・珠洲市)出典:Tomohiro Ohsumi/Getty Images
政府は、富山県や新潟県など対象地域について、拡大する方針は示していません。なぜ、石川県だけと限定するのしょうか。確かに高齢化が深刻な地域です。ただ、富山県や新潟県の被災地でも高齢者が多くいます。その線引きは極めて難しいのです。
富山県でも住宅被害は深刻です。全体で住宅被害は1万棟を超えました。そのうち、高岡市は氷見に続き多く、2300棟を超えています。
新田八朗富山県知事は、富山県を訪れていた公明党の山口那津男代表に富山県を加えるように要望しました。「被害の状況が同じならば、地域や県で対象を限定するのはいかがなものか」としたのです。山口代表は、政府与党の会議の場で石川県以外の地域も対象となるよう申し入れたと説明しました。私も市議会議員として、富山県も対象にしてほしいと訴えます。
そもそも、被災者生活再建支援法というのは、阪神大震災から3年4カ月後の1998年5月に成立しました。その後、法改正されて、住宅が全壊した場合に最大で300万円が支給されるようになりました。2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震などでも適用されました。
当初、国は、後ろ向きでした。住宅は私有財産だからです。あくまで自助努力で再建するのが原則だったのです。
風穴を開けたのは、自宅を失った被災者らの訴えでした。市民運動として広がり、与野党の国会議員が法案を共同提案したのです。
被災者の声が、政府を動かしたのです。「支援法で最大600万円」。石川県だけでなく、富山県や新潟県にも適用してもらいたいです。公平な支援を望みたいですね。
トップ写真:液状化が深刻な高岡市、伏木地区(筆者提供)
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この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家
1964年富山県高岡市生まれ。
富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。
90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。
テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。
その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。
21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。
同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。
同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。