野田朝顔執行部 長命図れるか?
安積明子(政治ジャーナリスト)
「安積明子の永田町通信
【まとめ】
・立憲民主党代表選で野田佳彦が選出され、2度目の党首就任を果たす。
・自民党を「金魚」、自らを「どじょう」と例え、改革に向けて意気込む。
・新執行部は小川淳也を幹事長に任命、共産党との連携を考慮した人事。
立憲民主党の代表選が9月23日に行われ、野田佳彦新代表が選出された。民主党政権時の2011年に代表に選出されて以来、2度目の党首就任となる。
当時は「どじょう演説」で勝利を得た。野田氏は詩人の相田みつを氏の「どじょうがさ 金魚のまねすることねんだよなあ」という作品を引用した。今回も地元の千葉県習志野市で出馬表明した時、記者団に「やたら改革もどきを言っている、世襲の多い『金魚』たちに立ち向かっていく『どじょう』でありたい」と自民党を「金魚」、自分を「どじょう」に例えて語っている。
なお代表選での演説では、野田氏は「朝顔」の花をたとえに出した。野田氏が1996年の衆院選でわずか105票差で落選した時、朝顔が開花するには「日が昇る前の夜の闇、夜の冷たさが大事」と知ったという。
これはもともとは五木寛之氏のベストセラー「大河の一滴」から引用したものだろう。野田氏はまた、当時の自分の境遇に立憲民主党の境遇を重ね合わせて鼓舞した。「どじょう演説」では自分をPRすれば良かったが、今回は野党の党首として仲間を率いて政権を獲りに行かなくてはならない。民主党政権最後の首相として、多数の同志を討ち死にさせた責任もある。
新代表に選出されると、野田氏はさっそく「自公を過半数に追い込む」と意気込んだ。翌24日には新執行部体制を発表。幹事長に小川淳也衆院議員、政調会長に重徳和彦衆院議員、国対委員長に笠浩史衆院議員を任命した。
代表就任直後に野田氏が「今日からノーサイド。挙党体制で政権を獲りに行く」と述べたため、決選を闘った枝野幸男元代表や、代表選に出馬した泉健太前代表、そして吉田晴美衆院議員にもなんらかの役職を与えられると思ったが、違っていた。党内では「報復人事だ」との声も挙がっているが、何より野田氏がやりやすい人事であることが優先されたのだろう。
たとえば維新との連携を模索している野田氏の代表就任に対し、日本共産党はさっそく事実上の遺憾を表明している。そこで共産党と選挙協力を組む小川氏を幹事長に抜擢することで、バランスをとろうとしているのではないか。とりあえず野田氏の「朝顔執行部」は9月24日に発足し、10月1日からの臨時国会に挑むことになる。
なお朝顔の花言葉は「淡い恋」「愛情」「結束」などがあるが、実は花の色によって異なるという。たとえば紫色は「冷静」で、白色は「固い絆」や「あふれる喜び」。ピンク色は「安らぎに満ち足りた気分」だそうだ。
そして立憲カラーである青色の朝顔の花言葉は、「儚い恋」「短い愛」。朝に咲き、昼にはしおれるその様を表しているのだろうが、はたして新たに発足した「野田・朝顔執行部」は、安定した長命を図れるのか。
トップ写真:国際連合総会に出席する野田佳彦元首相(2012年9月26日、ニューヨーク)
出典:Photo by John Moore/Getty Images