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.政治  投稿日:2024/12/23

ネット選挙はボーダレスへ【2025年を占う!】国内政治


安積明子(政治ジャーナリスト)

【まとめ】

・2024年はネット選挙の時代が本格化し、SNSやデマの拡散が選挙結果に影響を与えたことが問題視されている。

・兵庫県知事選は有権者のメディアリテラシーが試された「実験」であり、立花孝志氏の影響力が示されたが、結果的には混乱を避けた市民が支持を集めた。

・2025年の選挙ではネット選挙の影響がさらに増し、候補者たちはネット活用を強化していかなければならず、有権者のネットリテラシー向上も重要。

 

 2024年は政治が転換期を迎えた年といってよい。ネットの影響が強くなり、いよいよネット選挙の時代が到来した。

 ネット選挙はボーダレスが特徴だ。衆院東京15区補選では江東区外から、東京都知事選では都外から、そして兵庫県知事選では県外から、大量の「応援団」が流入し、これが投票結果に少なからず影響を与えたことは否定できない。

 さらに問題は、デマの拡散だ。同類原理に基づいて、SNSは繋がっていく。同類原理とは、自分と似ている人に繋がりたいという心理的傾向で、要するに「類とも」といえるだろう。

 また確証バイアスにより、人は自分の都合の良い情報を受け入れたがる傾向がある。こうしたことで、SNSを介して個人が受け取る情報は狭いものになりがちだ。

 そこに好奇心を刺激するような情報を投下したらどうなるか。もしSNSの課金システムを利用した「小銭稼ぎ」が悪意を持って行われたら、その悪影響は計り知れない。しかも選挙期間は限られており、デマの修正はほぼ不可能。仮にデマが大きく影響したと見られたとしても、結果を覆すことはほぼ不可能だ。

 もっともネット上での意見表明は日本国憲法が保障する表現の自由に含まれ、最大限に尊重されなければならない。またネットには、大手メディアで報じられていない真実が存在する可能性もある。

 そういう意味で11月17日に投開票された兵庫県知事選は、「壮大なる実験」であったに違いない。有権者がどれだけメディアリテラシーがあるのかを試されたといえる。

 なお兵庫県知事選での台風の目となった立花孝志氏は、12月15日に投開票された泉大津市長選に出馬したが、4439票しか獲れずに敗退した。一方で現職の南出賢一市長は、前回より約6000票増やして2万1700票を獲得して当選した。期日前投票が1.5倍に伸びたことから、「立花氏が優位か?」と囁かれたが、泉大津市民は兵庫県知事選のような混乱を嫌った結果になったと言えるだろう。

 さて、2025年には夏に東京都議選と参議院選、そして横浜市長選が行われる。2月2日には東京・千代田区長選、3月16日には千葉県知事選も予定されている。こうした大きな選挙では、大々的にネット選挙が展開されるだろう。実際に千葉県知事選について立花氏が出馬意欲を見せている。ただし「本命は参議院比例区」ということなので、また混乱が生じるかもしれない。

 ネット選挙のもうひとつの台風の目である石丸伸二氏は、新党を結成して都議選で一定数の勢力確保を目指しているという。石丸氏の本命は2028年の東京都知事選だと言われており、都議選はその基盤作りという位置づけになる。その計画は次期都知事選には小池百合子知事は引退するだろうという予想に基づくものだが、果たしてその通りになるのかどうか。そもそも石丸氏自身の「賞味期限」が次期都知事選までもつかどうかが問題だ。

 そうした懸念があったせいかもしれない。石丸氏は11月19日に生配信されたYouTubeチャンネル「ReHacQーリハックー」で、国民民主党の玉木雄一郎代表(2025年3月3日まで役職停止)に「もし僕でお役にたてるなら」と参議院比例区での出馬を持ちかけ、国民民主党に秋波を送った。

 これには玉木氏は即答しなかったが、その内心は揺れていたのかもしれない。というのも10月の衆院選では、ネットの活用という点で石丸氏を真似たことが勝因のひとつになったからだ。快進撃を確実にするためには、2025年の参議院選でも躍進する必要があるが、そのためにはネット選挙をいっそう活用することが迫られる。

 2025年にはネット選挙の影響はますます大きくなり、ネットは民主主義の手段としての地位を築いていくだろう。だからこそ、個々人のネットリテラシーを向上させなければならない。判断ミスのツケは結局、有権者が背負わなければならないのだから。

トップ写真)国民民主党玉木雄一郎衆議院議員 2024年11月19日 東京都千代田区

出典)Japan In-depth編集部

 




この記事を書いた人
安積明子政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使

安積明子

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