「103万円の壁:タイムリミットにこだわり安易な妥協するつもりない」国民民主党榛葉賀津也幹事長

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(成沢緑恋)
「編集長が聞く!」
【まとめ】
・榛葉幹事長は、国民の目線に立った政策を進めるためならば「汚れ役でも何でもやる」と自身の立場を強調した。
・3党の税制協議について、自民党が「103万円の壁」の引き上げに抵抗する場合は、夏の参院選で民意を問うしかないと強調した。
・予算案は多くの政党が納得できる形での合意が重要だと述べ、3月2日の予算案成立のタイムリミットにこだわる必要はないとの考えを示した。
19日、国民民主党の榛葉幹事長は税制調査会を受けた会見で、「もし現行の中途半端な自民党案で維新が自民と握ることがあれば、103万円の壁を撤廃し178万円を目指すことや、ガソリン減税を邪魔をした責任が維新にもあるということになる」と発言した。
この発言に対し、日本維新の会代表の吉村洋文氏は、20日に府庁での囲み会見で、「交渉が思い通りにいかないことを他党のせいにするのはやめたほうがいいと思います」と猛反発し、「去年くらいから、本気で腹くくってやるんだったら一緒にやりますか、という話は私は持ちかけてますけれども、国民の榛葉さん、玉木さんも『維新は維新でやればいい』とをずっと言われてきた」と訴えた。また、先の幹事長の発言に対しては、吉村代表だけでなく日本維新の会に所属する議員らも自身のX上で一斉に反論している。
Japan In-depthは、榛葉幹事長の発言は、元国民民主党所属議員であり、現日本維新の会共同代表である前原誠司氏が与党と本年度予算案で合意にむけ突っ走っている状況に歯止めをかける狙いがあったのではないか、と問うた。
榛葉幹事長は発言の狙いについては明言を避けたが、「私はじっと耐えて、なめくじに塩をかけるようなツイートもご褒美だと思って喜んで受けたいと思います」と述べ、自身に対する批判を甘受する考えを示した。
そのうえで、「私のやりたいのはただ一つ。国民の生活を豊かにするために今は手取りを増やす(ことだ)。そのためには会社や組合が頑張って労使で賃上げするのも限界があるし、組合のない中小零細企業、フリーランス農家の皆さんが全国で歯を食いしばって頑張っています。その方のためにガソリン減税をする、103万円の壁を引き上げて手取りを増やす。そして消費を喚起する。日本の経済を大きくする日本の国を強くする。」と、国民の目線に立った政策を進めることを改めて強調した。
その上で、「そのために、汚れ役でも何でもやりますよ。国民民主党の番犬ですから」と、普段から公言している自身の立場を強調した。
写真)榛葉賀津也幹事長
ⓒJapan In-depth編集部
一方、肝心の3党の税制協議だが、自民党の宮沢洋一税調会長は、新たに所得制限を設けた自民党案が国民民主党や公明党に受け入れられなかったことに対し、「これまでの協議で出てきた考え方に基づいて案を提示したつもりだったがあまり評価されなかった」と不満を漏らしたことについて、自民党が国民民主党の主張を理解していないのではないか、と聞いた。
それに対し榛葉幹事長は、「遅々として議論が相変わらず進まないとなると、選挙で結果を出すしかなくなるんじゃないですか」と述べ、仮に自民党が「103万円の壁」の引き上げに抵抗するなら、夏の参院選で国民に信を問うしかない、との考えを示した。
一方、「宮沢先生は聡明な方ですから、政策の中身や税制は熟知されている。この案がわかってないのではなくて、全国に住んでいる国民の皆さんの苦しい気持ちが分かってないんじゃないでしょうか」と述べるとともに、「自民党さんは参議院では過半数持ってると思っているかもしれませんが、衆議院では逆さまになったって過半数ないという現実を早く認識するべきです。この議会での構成を作ったのは野党ではなくて国民が作ったんですよ。その国民の声に素直に耳を傾けて何をやるべきかということを考えれば、おのずと結論が出ると思いますね」と述べ、重ねて「103万円の壁」引き上げに同意するよう強く求めた。
また、予算案の年度内成立を確実にする3月2日のタイムリミットが取りざたされているが、「30日ルールを考えて参議院で抵抗できないようにする牙を抜くには、今言った3月頭には予算案を通さないと。30日ルールをフルに使ったとしても、そこまでで通せば年度内成立だねと。しかし、多くの他党政党からご理解を得て、しっかりした形で衆議院を通せば、仮に30日を切った参議院の審議時間であっても、野党を含めた多くがこれでいいじゃないかといえば、十分に年度内成立、政治的にする可能性はあります」と述べ、3月2日のタイムリミットにこだわる必要はないとの考えを示した。
「衆議院の出口の期日を焦って中途半端な案で妥協して予算を通すのではなくて、多くの政党が納得して衆議院を通せば、参議院では、予算委員長も議運の委員長も議長も自民党だから、衆議院のように野党が予算委員長を持っているわけではないから、衆議院の出口で野党関係なく賛成だという政治環境を自民党が作れるかどうかに掛かっているんじゃないか。私は今度の予算は審議日程ありきではないと思います」と重ねて自身の考えを強調した。
トップ写真:榛葉賀津也幹事長ⓒJapan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。
