「自民党のガバナンス、緩くなってる」国民民主党榛葉賀津也幹事長会見
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(成沢緑恋、浜島和希、梶谷友花)
「編集長が聞く!」
【まとめ】
・国民民主党の提案が与党に受け入れられ、所得税非課税枠引き上げとガソリン税廃止が合意。
・幹事長会談に対する自民党宮沢税調会長の発言を批判。自民党のガバナンスに苦言が呈された。
・税の協議は透明性が求められ、議論はオープンにしていく、と言明した。
国民民主党の攻勢が止まらない。12月11日、自民党、公明党、国民民主党の3党の幹事長会談が開かれ、次の2点について合意書が交わされた。第一に、『所得税の非課税枠「103万円の壁」を国民民主党の主張する178万円を目指して2025年から引き上げること』、第二に、『ガソリンの暫定税率の廃止』である。つまり、与党は国民民主党の案を丸呑みした格好だ。予想されていたことではあるが、もう少し粘ると思った与党側は意外と簡単に土俵を割った。
しかし、自民党の宮沢洋一税調会長は悔しさを隠し切れなかったようだ。曰く、「一歩一歩前進をしてきた所でこういう話が出てくることについて言えば、釈然としない感じは正直ございます」。頭越しに幹事長間での合意がなされたことに我慢ならなかったのだろう。
これに対し、榛葉幹事長は「幹事長が決めたことに対して「釈然としない」と言われると、これは党のガバナンスとしてどうなのか」と述べるとともに、「幹事長の決めたことに対する様々な発言を見てみると、自民党も少しガバナンスが緩くなっているのかなと思います」と述べ、自民党の党運営に対し苦言を呈した。
また、公明党の西田実仁幹事長が合意について、「いきなり来年178万円になるという文脈ではなかった」と発言し、来年度に178万円まで引き上げることに否定的な立場を示した。この発言に対し、榛葉幹事長は、「仮に来年ちょっと引き上げて、いつか分からないけど178万円に近づけるなどという方便が通じるなら、国民が許さないと思う」と述べ、来年178万円に極めて近い水準まで引き上げるべきだとの考えを改めて強調した。
ところで、「釈然としない」のは国民の側ではないか?税調会長会談やら、政調会長会談、幹事長会談など同時並行で行なわれているが、そうした会談の議事録は公開されておらず、ブラックボックスだ。一方で予算委員会はNHKなどが生中継しており、すべての議論がオープンだ。
一部の政治家間で行なわれるクローズドな会談は、議論の中身がわからず、まさしく「密室政治」だ。合意文書があったとしても、結論しか書かれていない。立場によっていくらでも都合良く解釈できる玉虫色の紙切れなぞ、民間では何の役にも立たない。国民にとって不誠実極まりない。
そこで、今の各党間の税の協議は不透明であり、本来国会でしっかり議論すべきなのではないか?と問うた。
それに対し榛葉幹事長は、「その通りだと思う」と同意し、税の協議については、「しっかりとぶら下がり会見をその会議の都度我々でやって、どんな議論があったのかオープンにしていきたい」と決意を述べた。
自民党税制調査会はいまだに「インナー」と呼ばれる幹部の非公式会合をおこなっているが、国民の生活にとって極めて重要な税の議論は、すべてオープンになされるべきであり、各党、そう努力すべきだ。そうした流れに竿を差すような行動を取る党は、国民から見放され、政界から退場することになるだろう。
写真)榛葉賀津也国民民主党幹事長
ⒸJapan In-depth編集部
以下、安倍編集長との一問一答。
安倍:幹事長会見で合意に至ったわけだが、国民にとって税の問題はとても重要で、みんなが注視している。その真っただ中で、ごく一部の議員の間で議論がなされている。もともと与党には「インナー」というものがあったが、情報開示が不十分だ。国会の場できちんと議論することが大事だし、今後はそういう方向にもっていかなければならないと思うが、どう考えるか。
榛葉:全くその通りだと思いますね。もともとインナーという呼び方自体がインサイドの人なので、外から見えないからインナーというわけでしょう。それはダメです。私がちょっとびっくりしたのは、宮沢税調会長は本当に逸材で税に関してこの方の右に出る者はいないですし、ミスター税調というかミスター財務省といってもいいかもしれません。ただ、党のナンバー2の幹事長が合意をしたのに対して、そのもとでそれぞれ税の専門家として仕事をしている方々が、幹事長が決めたことに対して「釈然としない」と言われると、これは党のガバナンスとしてどうなのかなと。
私は自民党が強い理由は確固としたガバナンス、これがあるからだと思ってまいりましたが、ここのところの幹事長の決めたことに対する様々な発言を見てみると、自民党も少しガバナンスが緩くなっているのかなと思います。私が決めたことを、古川税調会長や浜口政調会長が釈然としないなどということは決してないです。古川さんは政治経験も私より上ですし、人生経験も先輩ですし、そして税の専門家ですけれども、幹事長が決めたことに従ってそれぞれ司司で議論していく、それが小さくてもわが党のガバナンスです。引き続きしっかり、幹事長会談がピン止めされましたから、それに沿って党運営をしていただきたい、議論をしていただきたいと思います。
安倍:今後は議論の中身を詳しく今以上にお願いしたいと思います。
榛葉:しっかりとぶら下がり会見をその会議の都度我々でやって、どんな議論があったのかオープンにしていきたい。これ程、税の問題や年末の税制改正を学生やパートさんを含めた多くの国民が注目した年はないと思いますから、これは日本の政治が変わる大きなチャンスだと思います。しっかりやってほしいと思うし、私自身も期待しています。
記者:公明党の西田幹事長が本日の記者会見で、自民党、公明党、国民民主党の3党幹事長が行った「103万円の壁を178万円を目指して来年から引き上げる」という合意に関して、「いきなり来年178万円になるという文脈ではなかった」と述べ、2025年度に178万円まで引き上げることに否定的な見解を示しました。先日の合意内容に関して、国民民主党としても同様の理解なのかどうかも含めて西田幹事長の発言への受け止めをお聞かせください。
榛葉:来年178万円ぴったりではないかもしれませんが、極めて178万円に近い形に来年持っていくという約束ですので、西田先生も恐らくそういう意味で言っていると思います。交渉の過程のことは、お互い交渉過程なので、アウトプットが全てですから。過程の経緯について詳らかにすることは相手の立場もありますので避けますけども、最初の文案は「来年引き上げて、いつか分からないけども178万円に近づける」というようなニュアンスの文章だったので私は駄目だと言ったんです。
つまり、来年178万円に近づけるという意味合いの文章に変えてこうなっているので。これはもう森山先生とやってきた話ですけども、公明党の西田先生もそれには是非ご理解いただきたいですし、仮に来年ちょっと引き上げて、いつか分からないけど178万円に近づけるなどという方便が通じるなら、国民が許さないと思うね。来年の通常国会もそういうことされるんだったら、我々も態度がどうなるか分からないし、そもそもそんなことやったら、この国の経済は持ちますかね。国民が今こそ手取りを増やしてほしいと言っているんですから、そういうご飯論法のことを言うとやはり来年の参議院選挙で結果が出るんじゃないですか。
西田先生もなるべく手取りを増やしたいと。西田先生が私たちと同じ立場ということは、私はよく承知していますので、西田幹事長がご飯論法を言ったというつもりは私は毛頭ありません。ただ一部そういうことを言うとなると、私たちは、それはやはり選挙で結果が出るんだろうと思います。公明党の西田先生は我々と極めて近い認識で、なるべく学生やパートさんの働く時間を増やし、働いてほしい人もいるわけですから労働力の供給をマッチングさせると、同時に手取りを増やすということをどうするかと。ただ、与党ですから当然様々な税のことも考えるでしょう。しかし、今やらなければならないのは、この国の景気をもう一度回復させる、手取りを増やす、個人消費を活発化させることです。そのためには、来年178万円に近づけさせなければ駄目だというふうに思います。
以上
トップ写真)榛葉賀津也国民民主党幹事長
ⒸJapan In-depth編集部